令和7年度多文化共生の担い手連携促進研修会/オンラインを開催しました
連携推進セミナー
2026.01.07
令和7年度多文化共生の担い手連携促進研修会/オンライン 報告書
「無関心層」へのアプローチ ~伝わらない壁を超えるためにできること~
◆報告書PDFファイルはこちら
◆登壇者資料
導入説明 土井佳彦氏
事例紹介1 藤分治紀氏
事例紹介2 宮城潤氏
事例紹介3 ハッカライネン ニーナ氏
◆参考資料
外国人女性の会パルヨン作成資料
となりの外国人とのおつきあい
せいかつガイドブックコトナinKamigyo ←こちらよりダウンロードください
主 催:一般財団法人自治体国際化協会
<プログラム>
| 14:00-14:02 | 開会 |
| 14:03-14:08 | 導入説明 特定非営利活動法人多文化共生マネージャー全国協議会 代表理事 土井 佳彦氏 |
| 14:08-14:28 | 事例紹介1 「公的機関職員の意識啓発 ~多文化対応力向上講座~」 公益財団法人かながわ国際交流財団 事務局次長兼 多文化共生グループ・リーダー 藤分 治紀氏 |
| 14:29-14:50 | 事例紹介2 「多様な人々の社会参加〜誰一人取り残さない地域づくり〜」 那覇市若狭公民館 館長 宮城 潤氏 |
| 14:50-15:15 | 事例紹介3 「住民への意識啓発〜となりの外国人とのおつきあい〜」 特定非営利活動法人外国人女性の会パルヨン代表理事 ハッカライネン ニーナ氏 |
| 休憩 | |
| 15:20-15:58 | パネルディスカッション モデレーター 土井佳彦氏 パネリスト 藤分治紀氏、宮城潤氏、ハッカライネン ニーナ氏 |
| 15:58-16:00 | 閉会 |
導入説明
特定非営利活動法人多文化共生マネージャー全国協議会 代表理事 土井 佳彦氏
(一財)自治体国際化協会(以下クレア)では、全国6ブロックからの多文化共生マネージャーなどの実践者で構成される「多文化共生の担い手の連携に向けた検討会」を設けており、クレア事業企画立案に協力しています。本研修会も、検討会の委員から寄せられた課題意識を踏まえて企画されたものです。今回は多文化共生に関心の無い人々にどのようにアプローチするかをテーマとしました。ただし、「無関心層」とされる人々を一括りに定義することへの疑問も共有されました。関心が無いように見えても、立場の変化、業務の忙しさなどにより関わる機会が減っているだけの場合もあり、単純に「無関心」と決めつけることは適切ではないのではないか、という認識です。そこで本セミナーでは、「無関心層」を「わたし(たち)が、もっと関心を持ってもらいたい!と思っている人(たち)」と捉え直しました。そのうえで、新たな層にどのように関心を広げ、参加につなげていくのかについて、各地の具体的な実践事例から学ぶことを目的としています。立場や地域の異なる3名の実践者から取組事例を紹介いただき、成功例だけでなく試行錯誤や課題も含めて共有することで、今後の多文化共生施策や事業展開の参考としていただくことを目指しました。
事例紹介1
「公的機関職員の意識啓発 ~多文化対応力向上講座~」
公益財団法人かながわ国際交流財団 事務局次長兼 多文化共生グループ・リーダー 藤分 治紀氏
かながわ国際交流財団では、公的機関職員を主な対象として「多文化対応力向上講座」を実施しています。本講座は、外国人住民の文化的背景や生活課題への理解を深め、やさしい日本語をはじめとした実践的な対応力を身につけることを目的としています。知識や情報の提供だけではなく、外国人当事者の声や動画、グループディスカッション、ロールプレイなどを通じて、参加者が自分事として考えられるよう工夫しています。対象は市町村・県職員をはじめ、医療・福祉・教育・警察など幅広く、近年は警察学校の生徒向け講座も展開しています。オンラインと対面を併用し、可能な場合には現場訪問も取り入れています。参加者からは、多文化対応は語学力だけでなく姿勢や考え方が重要であると気づいたという声が多く寄せられています。本取組では、教員研修や警察学校、薬剤師会の認定研修など、既存の研修体系への組み込みを進めてきました。そのことは今回の催しのテーマとなっている「無関心層」へのアプローチということにつながっている面があるかもしれません。また、県市町村振興協会や教育委員会、薬剤師会、行政書士会など、多様な関係機関と連携しながら実施しています。講座の背景には、2016年頃から外国人向け情報提供窓口を運営し、多様な国・地域出身のスタッフと協働する中で、自分たち自身も変わる必要性を実感した経験があります。行政関係者や外国人住民の協力への感謝が、取組を継続する原動力となっており、今後も「頭と心、足で学ぶ」姿勢を大切にしながら、現場に根ざした多文化共生の推進に取り組んでいきたいとしています。
事例紹介2
「多様な人々の社会参加〜誰一人取り残さない地域づくり〜」那覇市若狭公民館 館長 宮城 潤氏
那覇市若狭公民館のある若狭地区は、人口密度が高く自治会加入率が低いことに加え、生活困窮世帯や単身世帯の多さ、外国人住民の急増など、複合的な課題を抱える地域です。宮城氏は、こうした課題に対して「特効薬はない」と述べ、住民一人ひとりが主体的かつ継続的に関われる関係づくりの重要性を強調しました。そのため、公民館事業ではイベントの規模や参加人数ではなく、活動を通じてどのような関係性が生まれたか、どのようなプロセスで人がつながったかを重視しています。多文化共生の取組では、ネパール人留学生との交流をきっかけに、地域住民と留学生が実行委員会形式でイベントを企画・運営し、顔の見える関係づくりを進めてきました。交流を重ねる中で、地域行事への参加や新たな活動へと広がりが生まれています。コロナ禍では、外国人住民の困窮が深刻化する中、公民館が関係団体や行政と連携し、食料支援や情報提供の拠点として機能しました。また、外国人住民、地域住民、行政、支援団体が意見を交わす場を設けることで、課題の共有やネットワーク形成にもつながりました。宮城氏は、公民館は主役になるのではなく、多様な人々をつなぐ「場」として機能することが強みであると述べています。地域に点在する小さなコミュニティを可視化し、関わりを生み出すことで活動が広がり、それが地域全体を支えるセーフティネットにつながると考えています。公民館は、属性や社会的立場を問わず人々が集い、学び合える場であり、多様な主体と協働することで、いわゆる「無関心層」に対しても地域の人や課題、取組の魅力を示し、想像力を刺激する役割を果たしています。私たち自身に専門性はありませんが、専門性を持つ関係者と連携しながら取組を進めている点に特徴があります。
事例紹介3
「住民への意識啓発〜となりの外国人とのおつきあい〜」
特定非営利活動法人外国人女性の会パルヨン代表理事 ハッカライネン ニーナ氏
NPO法人外国人女性の会パルヨンは、2007年に設立された在住外国人女性の支援団体で、生活相談やピアサポート、定期的な居場所づくりなどを通じて、年間1,000人以上の外国人女性を支援しています。京都と東京を拠点に、大阪、東京、神奈川、さらにオンラインでも活動を展開し、多様な出身国や背景を持つ女性が安心してつながれる場を提供してきました。ハッカライネン氏は、外国人当事者への支援に加え、日本人住民への働きかけの重要性を強調しました。多文化共生を進めるためには、支援者や関心層だけでなく、いわゆる無関心層へのアプローチが不可欠であり、関心がない人は決して悪い人ではないという視点を持つことが重要だと述べています。その上で、相手にとってのメリットや身近な関心事を入口とする工夫が有効であると指摘しました。具体的な取組として、「隣の外国人とのおつきあい」をテーマにした冊子の作成や、やさしい日本語講座、防災を切り口とした啓発活動を紹介しました。飲食店向けのやさしい日本語講座では、外国人客への対応力向上がサービス改善や集客につながる点を示すことで、関心を引き出すことができたといいます。また、防災訓練や地域イベントにクイズや景品を取り入れるなど、参加のハードルを下げる工夫も行ってきました。さらに、地域のキーパーソンや行政職員、警察関係者など、異動によって影響力が広がる立場の人との関係づくりの重要性にも触れました。外国人と日本人が「違い」からではなく「共通点」から関係を築くこと、外国人を支援の対象にとどめず、地域活動の担い手として運営側に巻き込むことが、多文化共生を進める鍵であるとしています。無関心層や否定的な意見を持つ人々も敵と捉えず、対話を重ねる姿勢を大切にし、行政や国際交流協会、支援団体には外国人と日本人をつなぐ「橋渡し役」を担ってほしいと述べました。丁寧な関係づくりの積み重ねこそが、無関心層へのアプローチにつながるとまとめました。
パネルディスカッション
参加者から寄せられた多数の事前質問をもとに、現場で直面する課題や実践的な対応について、登壇者がそれぞれの経験等を共有しました。
・職場や日常で排他的な発言を耳にした場合、どのように対応しているか
強く否定や反論をするのではなく、まず相手の背景や状況を受け止める姿勢が大切だという意見が示されました。同調はしないものの、「そういう考え方もあるのですね」と受け止めつつ、相手の立場に立って問いかけたり、自分自身に置き換えた視点を示したりすることで、対立を避けながら気づきを促す対応が紹介されました。また、「頑張りすぎず、諦めない」姿勢で、楽しそうな実践を続けることが、長期的な理解につながると述べられました。
・無関心層へのアプローチはどのように行うべきか
無関心層に対しては、最初から理解や共感を求めるのではなく、興味や関心の入り口をつくることが重要だと共有されました。公民館では、楽しさや魅力を「旗を立てて」示し、まずは知ってもらうことを重視しています。料理やダンスなど体験型の取組や、言葉に頼らない交流を通じて、自然な関わりを生み出す工夫が有効であるとされました。また、専門性のある団体と連携し、それぞれの役割を分担することの大切さも語られました。
・対象者や地域が異なる場合の配慮点
藤分氏は、地域によって外国人住民の構成や課題は大きく異なるため、画一的な方法ではなく、地域性に応じた工夫が必要だと述べられました。一方で、オンライン開催では地域差をあまり意識せずに実施できる利点もあるとされました。また、対象者の関心や専門分野を明確にし、テーマを絞ることで、より共感を得やすい取組になるという実践例が共有されました。
・外国人住民に地域活動へ参加してもらうための工夫
ニーナ氏は、外国人住民に対して参加を呼びかける際には、「地域活動に参加するメリット」を明確に伝えることが重要だとしました。また、外国人側だけでなく、日本人側の関わり方も課題であり、初対面の人と気軽に話すコツを学ぶような取組の必要性が提起されました。さらに、多文化共生に限らず、他分野の市民団体とも交流を広げることで、地域活動全体が活性化するとの提案がありました。
全体を通して、対話を重ね、発信を続け、人と人とのつながりを大切にする姿勢こそが、多文化共生を前に進める基盤であることが確認されたディスカッションでした。
以上