令和5年度多文化共生の担い手連携促進研修会第一部を開催しました(オンライン)

令和5年度多文化共生の担い手連携促進研修会第一部を開催しました(オンライン)


令和5年度 「多文化共生の担い手連携促進研修会」第一部 報告書
外国人向けの相談体制の強化 ~各地の事例から考える~


◆報告書PDFファイルはこちら

◆参考資料 アンケート調査結果PDFファイルはこちら


主 催:一般財団法人自治体国際化協会 市民国際プラザ

日 時:令和5年10月16日(月)午前 13:3016:00

形 式:ZOOMウェビナー

参加者:277名(自治体、地域国際化協会、NGONPO、企業等)
 
参加申込者:345名

<プログラム>

13:30-13:33 開会
13:33-13:39 アンケート調査結果 概要報告
一般財団法人自治体国際化協会 
プログラムコーディネーター サラ チュウ
13:39-13:45 主旨説明
特定非営利活動法人多文化共生マネージャー全国協議会 
代表理事 土井 佳彦氏
13:45-14:35 導入講義
出入国在留管理庁 在留管理支援部 在留支援課 
補佐官 齋藤 拓郎氏
休憩
14:40-15:10 事例紹介1
(公財)兵庫県国際交流協会 外国人県民インフォメーションセンター 
センター長 河知 秀晃氏
15:10-15:23 事例紹介2
浜松市 国際課  課長補佐 古橋 広樹氏
15:23-15:50 事例紹介3
小山市 国際政策課  係長 葛原 誠氏
15:50-15:55 総括 土井佳彦氏
15:55-16:00 閉会

アンケート調査結果 概要報告

一般財団法人自治体国際化協会 プログラムコーディネーター サラ チュウ

多文化共生施策における外国人向けの相談体制の強化に関して本年全国の自治体および地域国際化協会を対象に実施したアンケート結果の概要を報告した。

主旨説明

特定非営利活動法人多文化共生マネージャー全国協議会 代表理事 土井 佳彦氏

土井佳彦氏

(一財)自治体国際化協会(以下クレア)では、多文化共生の担い手連携促進のための検討会が開催されている。委員はクレアの認定する多文化共生マネージャーを中心に全国6ブロックから10名程度選出され、検討会においては多様な担い手の連携による優良事例および課題等の情報交換、そしてクレアへの提言を行っている。検討会からの提言をクレア事業策定の参考としてもらうこと、また本日のような研修会の企画策定に活かしてもらっている。検討会は先ほど報告のあったようにアンケート調査を実施した上で行っており、過去に取り上げたテーマは子育て支援、日本語教育、やさしい日本語等である。今回は、近年全国各地で設置が進みつつある外国人向けの相談窓口について取り上げた。アンケートの結果や検討会においても窓口設置の促進が望ましいという声が多く聞かれる一方で、設置に踏み切れないケースや、設置を決めたものの具体的な方法が分からないという声があることが分かった。そこで、このような地域の参考となるように出入国在留管理庁からの講義と規模の異なる3つの自治体の事例を紹介する。

導入講義

出入国在留管理庁 在留管理支援部 在留支援課  補佐官 齋藤 拓郎氏

齋藤拓郎氏

齋藤氏からは、日本における在留外国人の状況と、国の取り組みについて講義が行われた。

日本における在留外国人の状況
我が国では昭和6012月末から令和412月末までに在留外国人が約200万人増加した。令和412月末時点で在留資格別人数は上位から永住者、技能実習、技能・人文知識・国際業務、留学生、特別永住者、家族滞在等となっており、国籍別人数では上位から中国、ベトナム、韓国、ブラジル、フィリピン、ネパールとなっている。現在、在留資格は29あり就労が認められる資格が19、身分・地位に基づく資格が4、就労の可否は指定される活動による「特定活動」、就労の認められない資格が5である。平成20年時点では身分に基づく在留資格が5割弱だったところ、在留資格別の内訳は多様化傾向にある。

外国人との共生社会の実現に向けた取り組み

令和46月に「外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ」を策定した。我が国が目指すべき外国人との共生社会のビジョン、その実現のために取り組むべき中長期的な課題及び具体的施策で構成されている。計画期間は令和8年度までとし、有識者の意見を聴きつつ毎年の点検による施策の見直しを行う。平成3012月には「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」を策定した。外国人労働者の増加に伴い、政府による外国人の受入れ調整の取り組みを強力かつ包括的に行うための施策で、各省庁における外国人支援施策を取りまとめたものである。施策としては、「円滑なコミュニケーションと社会参加のための日本語教育等の取組」、「外国人に対する情報発信・外国人向けの相談体制の強化」、「ライフステージ・ライフサイクルに応じた支援」、「外国人材の円滑かつ適正な受入れ」、「共生社会の基盤整備に向けた取組」に分類している。

外国人在留支援センター(FRESC)の取り組み

令和24月新宿区四谷に外国人在留支援センター(FRESC)を設置した。4省庁8機関がワンフロア―で相談対応を行うのが特徴。入居機関は、出入国在留管理庁(在留支援課・開示請求窓口)、東京出入国在留管理局、東京法務局人権擁護部、日本司法支援センター(法テラス)、東京労働局外国人特別相談・支援室、東京外国人雇用サービスセンター(ハローワーク)、外務省ビザ・インフォメーション、日本貿易振興機構(ジェトロ)である。対象者は外国人のみならず、日本人、そして外国人を受け入れる企業等であり、是非活用いただきたい。

地域における支援機能の強化

出入国在留管理庁在留支援課では以下のような取り組みを行っている。

1.合同相談会

東京近郊以外の居住者はFRESCを利用することが困難であることから、各地の地方出入国在留管理局と地方公共団体、国の地方機関、外国人支援関係団体等との合同相談会を実施している。FRESCにおける連携を全国展開し、各地の関係機関の有機的な連携による外国人等支援の促進につなげている。

2.受入環境調整担当官の役割

外国人の受入れ環境整備を目的として、全国の主な地方出入国在留管理官署に担当者を配置している。受入環境調整担当官の役割は、地方公共団体との窓口役として、外国人の受入れ環境整備に係る地方公共団体をはじめとした関係機関からの意見聴取すること、在留外国人向けの相談窓口の設置・運営に関する地方公共団体からの相談への対応、情報提供、研修の実施等である。

3.地域内の連携体制の強化

外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策に基づいて、受入環境調整担当官を中心に各地で外国人支援者のネットワーク構築に取り組んでいる。令和5年3月末時点で名古屋局、東京局及び横浜支局、神戸支局、福岡局、大阪局管内においてネットワークが構築されている。本日の受講者の皆様も受入環境調整担当官から声がけがあった場合は協力をお願いしたい。

4.地方公共団体の相談機能の強化

・外国人受入環境整備交付金

外国人への情報提供・相談を多言語で行う一元的相談窓口の設置・運営に取り組む地方公共団体を支援し、多文化共生社会の実現に資することを目的とし、交付対象は全ての都道府県、市区町村となっている。新たな一元的相談窓口体制の構築又は体制の拡充に必要な経費必要経費の10分の10、一元的相談窓口体制の維持・運営に必要な経費必要経費の2分の1を交付する。事業スキームとしては、地方自治体から申請を受け、当庁から交付し、自治体で直接運営、または民間事業者への委託を行う。窓口では多様な相談を受け付け、きめ細やかな対応を行うことを想定しており、参考として『一元的相談窓口設置・運営ハンドブック』を作成しているので参考にしていただきたい。

・通訳支援事業

在留外国人の増加に伴い、地方公共団体等の行政窓口において外国語での相談対応等のニーズが高まっているところ、通訳者が十分に確保できず、対応に支障をきたしている地方公共団体を支援することを目的とした事業で、令和5年度から本格実施を開始している。地方公共団体向けに説明動画も限定公開しているので視聴ください。

5.情報提供機能の強化

・外国人生活支援ポータルサイトについて

「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」に基づき、各省庁が多言語化された情報を発信しているが、掲載場所が日本語のHP内にあることが多く多言語化された情報にたどり着けないという課題を受けて、外国人や支援者にとって有用な情報をポータルサイト内に次のように集約して掲載している。入管庁ウェブサイトの自動翻訳導入に伴い、さらに分かりやすく改修された。

・生活・就労ガイドブック

在留支援課の主要施策の一つとして、在留外国人の安全・安心な生活・就労のために必要な基礎的情報を集約した「生活・就労ガイドブック」を政府横断的に作成している。入国・在留手続、市町村での手続、雇用・労働、出産・子育て、教育、医療、年金・福祉、税金、交通、緊急・災害、住居、日常生活におけるルール・習慣について記載されている。期待される効果としては、外国人が日本のルールや制度の概要を網羅的に把握できるようになること、地方公共団体をはじめとする外国人を支援する方が必要な情報に容易にアクセスできるようになることで、多文化共生社会の実現に寄与するというコンセプトである。入管庁ホームページ内の「外国人生活支援ポータルサイト」において15言語及びやさしい日本語で発信している。

・「やさしい日本語」の普及

時間の関係で今回は割愛するが、やさしい日本語の普及啓発活動も行っている。

・アウトリーチ支援事業

言語能力やインターネット環境等の問題から、国や地方公共団体がホームページ等で提供する情報に容易にたどり着くことができない在留外国人が存在し、情報発信を強化の必要性と在留外国人を対象とする支援に関する情報に接してもなお、自力で支援にたどり着くことができない在留外国人に手を差し伸べ、適切な行政窓口を案内するほか、必要に応じて窓口まで同行するなどのアウトリーチ支援を提供する必要性が指摘されている。そのため、在留外国人に対する必要な情報発信の強化及び生活上の困難を抱えた外国人等へ、令和4年度から民間支援団体に委託して、地域に根差したネットワークを利用した情報発信と、実際に困難に陥っている在留外国人を掘り起こし、抱えている問題を解決する行政窓口に適切につなげるアウトリーチ支援の実証的事業を実施中である。今後は実証的事業に係る実施状況の分析・検証、複数地域での事業実施を検討している。

【質疑応答】
質問:FRESCのような仕組みは現在東京のみだが、地方に設置する可能性はあるか?
回答:現在は具体的な計画は無く、まずは先ほど説明した合同相談会を継続予定。

質問:各自治体で問合せを希望する場合は、FRESCに直接でよいのか、最寄りの地方入管に連絡するのかどちらか?
回答:各地域で状況が異なることもありまずは各地方入管の受入環境調整担当官に相談いただきたい。

質問:入管庁として、相談対応する職員に必要とされる資格やスキルについての意見はあるか?
回答:現場の方が最もよく理解されていることもあると思う。入管庁としての資格や基準の提示などはしていない。

質問:アウトリーチ支援について今後ウェブサイト等で情報が公開されるか?
回答:愛伝舎で活動紹介を予定していない。

質問:関心があれば、直接入管庁に問い合わせれば情報を貰える可能性はあるか?
回答:何かあれば連絡をいただければと思う。

・後日回答を行った質疑応答

質問:先程の資料にあった「出入国在留管理庁通訳支援事業(3者間通訳サービス)」については、令和6年度以降も国において継続的に実施する予定か?
回答:その予定

事例紹介1

(公財)兵庫県国際交流協会 外国人県民インフォメーションセンター  センター長 河知 秀晃氏

齋藤拓郎氏

兵庫県では月~金まで兵庫県国際交流協会外国人県民インフォメーションセンターにて、土日はNGO神戸外国人救援ネットがいずれも午前9時~午後5時まで電話及び対面で相談を受け付けている。祝日と年末年始は休みである。対応言語は、日本語含め22言語。英語、中国語、ポルトガル語、スペイン語。NGO神戸外国人救援ネットは加えてタガログ語も含む相談員がいる。その他の言語は外部通訳言語としてタガログ語、ベトナム語、韓国語、インドネシア語、タイ語、ネパール語、ミャンマー語、クメール語、マレー語、モンゴル語、シンハラ語、ヒンディー語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、ロシア語、ウクライナ語に対応している。専門相談として外国人県民インフォメーションセンターにて法律相談を毎週月曜日、在留資格について第3木曜日に行っている。

県内における外国人相談は、19904月に兵庫県国際交流協会設立された際に英語、中国語の外国人相談コーナーを設置し、少しずつに拡充を行ってきた。20194月には兵庫県が外国人受入環境整備交付金の交付を受け、「ひょうご多文化共生総合相談センター」を開設した。その際土日の相談をNGO神戸外国人救援ネットへ委託し、通訳会社11言語の外部通訳を委託した。20214月には通訳会社で対応できる21言語とし、20223月から22言語に拡大した。また、平日のみLINE電話による電話受付を開始した。

相談件数は1998年度が最も多く約5900件、以降減少したが2020年度以降増加に転じ、2022年度は約4300件である。言語別には当時スペイン語で相談できる窓口が少なく、その後もリピーターも多いという要因で現在もスペイン語の相談が約半数を占め、相談員も2名配置している。相談内容は生活全般、在留資格、医療、社会保障、教育、労働問題、教育、住居、婚姻等多岐に渡る。

相談窓口運営における工夫としては以下の通り

1.相談員間の情報共有と集計。業務スペースで相談員が協議、意見交換、情報共有、雑談を行うようにしている。事務所内に少なくとも2名、最大5名の相談員が居る。データベースソフトFileMakerに相談個票を入力し、他の相談員のデータを閲覧、検索することができるようにしている。月ごとに言語別、国籍別、相談分野別等で件数集計ができる。情報セキュリティのためパスワード設定を行い、データはパソコンではなくサーバーに保存している。年間のライセンス使用料21,120/台となっている。もともとITが得意な相談員が同ソフトで組み上げたシステムだったが、国の交付金を受けることになった際に報告様式等が変わるため、外部委託により作り直しそのシステム開発費として約200万円をかけた。

2.2021年度からLINEによる無料通話を利用できるよう、LINE電話をデスクの電話へ転送している。費用はLINEのビジネスアカウント使用料5,500/月。留学生や技能実習生は、日本の電話番号を持っていないことが多く、LINEであれば通話ができることがあるため。

3.テレビ会議システムを利用した遠隔地居住者の法律相談に対応している。入管相談と法律相談については電話相談を受け付けず対面のみとなっているが、兵庫県が比較的広域で、例えば日本海側の豊岡からは神戸まで移動に3時間かかる。日本人の相談にも利用している県内各地の県民局とのテレビ会議システムを外国人の法律相談にも利用。

4.相談スペースが誰でも入れる場所であるため、防犯ブザーを置いている。実際に使用したケースは無い。

. 子ども連れの相談者がいるので、子ども用のおもちゃも置いている。

相談員の募集方法

一般公募を行っている。職務内容は○○語による生活相談の実施、相談者と関係機関等との通訳
応募資格は、○○語及び日本語による筆記・会話能力が堪能であること、相談内容の問題解決への手助けに強い熱意を有すること、パソコン操作ができ及び一般事務処理能力を有すること、雇用条件は勤務時間が17時間15分、週4日勤務、非常勤嘱託員、1年更新最長5年。

相談窓口の役割と連携

相談窓口には権限が無いため、相談者の悩みを解決できる機関へつなぐのが重要な役割である。そのため、実施専門機関との連携(例:入管、労働基準監督署、役所窓口、病院等)が必要である。非正規滞在者などの場合公的機関による対応が難しく単独での対応ができない場合NGO等と連携して対応している。重要であるができていないこととして、相談事例を元に在住外国人の困り事を解決できる対策の行政施策化につなげることも必要な役割と考える。

県内関係機関との連携について

1.外国人県民相談ネットワーク推進会議

1回開催している。1994年度は10機関から開始し、2022年度には47機関。47の内訳は官公庁(規制関連)6、官公庁(専門支援)4、県関係機関3、生活相談機関34(自治体12、国際交流協会16NGO6)および、県内市町相談窓口(県内41市町中22市町設置)。会議趣旨は、外国人県民の生活に密接な関係のある機関相互の連携強化を目的として設置し、生活相談等を円滑に実施するため、情報・意見交換を行い、協力関係を確保することである。

2.NGO/NPOへの外国人相談の委託

2019年にNGO神戸外国人救援ネットと連携し、週末の相談を開始した。救援ネット独自でも金曜日(13:0020:00)の生活相談や出張相談を行っていたが、土日の活動を追加してもらった。外国人県民生活サポートとして、外国人コミュニティ3団体(ベトナム夢KOBE、ひょうごラテンコミュニティ、関西ブラジル人コミュニティCBK)に対して母語教室、生活相談を委託している。また、夜間相談のニーズもあるため、NGO神戸外国人救援ネットおよび篠山国際理解センターに夜間の生活相談を委託している。

相談員の研修について

1.GONGO相談員会議

GO(行政)NGOの連絡会議で年4回行っている。阪神淡路大震災を契機に1996年度発足し現在に至る。神戸国際コミュニティセンターと共同幹事で実施しており、内容は情報交換や専門家による講演等で勉強会を行っている。参加団体は2023年度26組織。国2、県2、市6、国際交流協会3、社会福祉協議会3NGO10となっている。

2.外国人相談対応者意見交換会(2023年度開始)

GONGOでは多くが神戸、阪神の団体のため、それ以外の県域の外国人相談窓口や日本語教室等で相談対応をしている方々を対象に、2023年度から開始した。日本語教室に参加する学習者は日本語の先生に相談を行うことも多いが、日本語の先生方は必ずしも相談対応には慣れていないため、研修機会になればとの思いで実施している。各団体が相談事例を発表し、参加者がコメントする形式で3ブロックにて開催、19団体33名が参加した。内訳市5、国際交流協会6、NGO3、日本語教室5。

相談窓口の運営における課題

外国人相談窓口の存在の周知広報。特に留学生、技能実習生等に対して窓口の存在をいかに伝えるかが課題である。また、相談者の自立を促すことを目指し、寄り添う対応をしているが、相談者によっては無料の通訳者のような扱いで利用するケースも見られ、どのレベルまで対応するかの判断が難しい。相談員の研修・相談員のメンタルケアも課題である。そして、難しい相談の一つである医療通訳やアウトリートを伴う同行通訳も課題である。

最後に、クレアのような全国組織においては、相談事例のデータベース化、相談員研修の共同実施、研修情報のデータベース化、相談員の人材バンク化を検討してもらいたい。

【質疑応答】

質問:30年間運営してきた中で直近のことでもよいのでどのような観点で相談体制を強化してきたのか? 新たに始めたことなどもあれば教えて欲しい。
回答:一番大きいのは2019年度から土日の相談体制を組んだことである。祝日と年末年始以外には毎日対応できるようになった。就労している外国人が多く昼休みの相談も多い。言語的にも多言語化が進んでいる。相談はスペイン語、タガログ語が多いが、ベトナムの方の相談が在留人口の増加の割に少ないため広報が必要と考えている。

質問:相談窓口運営で民間団体との連携をしていたり、ネットワークの中にNGOや日本語教室が入っているが、どのように連携団体を探し、会議等への参加等声がけをしているのか?
回答:兵庫県国際交流協会としての様々な事業活動において、在住外国人コミュニティや外国人支援NGOとの繋がりを構築してきたので、それを活かしている。日本語教室を当協会でも行っているため、県内各地の日本語教室との連携も進んでいる。

事例紹介2

浜松市 国際課  課長補佐 古橋 広樹氏

古橋氏

浜松市は製造業のまちということもあり外国人が多く、現在は約28,000人が暮らしている。従来は南米系の方が多かったが近年アジア系の方も増えている。技能実習生もいるが、永住者や定住者など長期滞在が可能な身分系在留資格の割合が全体の7~8割で圧倒的に多く、定住化が顕著であることが特徴である。2008年のリーマンショック後減少したがその後また増加している。外国人相談窓口は浜松市が多文化共生施策の指針として策定している多文化共生都市ビジョンの重点施策の一つ「日常生活やライフステージに応じた支援体制の構築」という施策に位置づけている。

外国人相談窓口として、「浜松市多文化共生総合相談ワンストップセンター」を設置し、運営を浜松国際交流協会に委託している。月~日の午前9時から17時まで14言語に対応している。相談員を配置しているのは英語、ポルトガル語、フィリピノ語、ベトナム語、スペイン語、中国語、インドネシア語の7言語、テレビ電話通訳として14言語に対応している。2022年度の相談件数は約7000件、電話やメールでの相談が年々増加しているのが特徴である。相談者の多い国籍はブラジル、フィリピン、ベトナムの順。言語別ではポルトガル語での相談が3割であるが、最も多いのは日本語による相談で約4割であり、定住者が多く、日本人からの相談も受けるためである。相談内容は雇用、労働環境関連が最も多い。

19924月に浜松市国際交流センター(現多文化共生センター)を開設し、同センター内に多言語相談窓口を設置したのが取組の始まり。その後、リーマンショックの影響もあり、労働相談なども増えたため、200812月からはそれまでの日常的な相談から職業相談、労働条件相談、雇用保険相談などに対応するワンストップ型相談コーナーへ拡充した。20094月には入国在留手続き等の相談を開始、20107月にはメンタルヘルス相談を開始、法律相談等その他の専門相談も順次開始した。20197月に国が創設した外国人受入環境整備交付金を活用して、現在の多文化共生総合相談ワンストップセンターとしてリニューアルし、20204月には外国人雇用サポートデスクをセンター内に併設した。

相談員の研修については、2022年度では年間7回様々なジャンルの講師を招き研修会を行った。相談員は臨時職員であるため勤務日数が少ない方もおり、また、少数言語においては相談機会が少ないため、研修等を通じて知識やスキルを習得いただくことを目指している。相談員の採用は一般公募することもあるが、言語のみならず日本の制度や文化を熟知した方が必要なため外国人コミュニティを通じて探すことが多い。

庁内他部署との連携についてはメンタルヘルス相談は健康福祉部精神保健福祉センターの所管事業として、心理士2名を配置し、ポルトガル語での相談及び病院等への同行通訳(478)、雇用相談は、産業部産業振興課の所管事業として、キャリアコンサルタント等を複数名配置し、就労・雇用相談2,866件(企業相談1,158件、求職者相談1,708件)を行っている。また、中国在留邦人支援については、健康福祉部福祉総務課から相談支援員を区役所へ配置(146)している。

他機関との連携については、静岡県弁護士会浜松支部、関東弁護士連合会、静岡県行政書士会西遠支部、名古屋出入国在留管理局、東海税理士会浜松西支部、浜松東年金事務所、浜松西年金事務所、静岡県社会保険労務士会浜松支部と連携し、それぞれ法律相談、行政書士相談、入管相談、在留支援相談、税務相談、年金相談、社会保険労務士相談を行っている。幸運なことに先方から協力いただける旨の申し出を受けることが多く、多機関との連携に至っている。

課題としては、相談員は公的機関の相談対応者であるが、外国人コミュニティからの信頼も高いため、プライベートの相談との境目が難しい点があげられる。また、定住化が顕著なことから日本人と同じように相談内容が多岐に渡っているため、ソーシャルワーク機能の充実が今後ますます必要になると感じており、そうした専門性を有する人材を的確に配置をしていく必要性を感じる。

【質疑応答】

質問:他機関の方から連携の申し出があったのは、浜松市からワンストップセンターを開設していることを広報した上でのことなのか、あるいは何も知らない状態で先方から申し出があったのかどちらか?

回答:両方である。浜松市の多言語相談の業務委託先である浜松国際交流協会のネームバリューがあり何か連携できないかと申し出をいただいたケース、既に市がワンストップセンターを開設し、多言語相談を行っているという情報を知り、協力したいという申し出をいただいたケースがある。

質問:受けた相談の管理方法はどうしているか?

回答:業務委託先である浜松国際交流協会でデータベース化している。

質問:受けた相談内容は市が随時把握できる状態なのか、市の対応が必要な場合は行っているのか?

回答:システム自体は切り離されており、定期的に市に報告を受けている。市の関係課による対応が必要であればその都度連絡を受け、連携している。

質問:既に充実した相談体制を構築しているが、更に充実したいことがあれば教えて欲しい。

回答:今後、ソーシャルワーク機能を強化するため社会福祉士等の資格をもった人材を登用していきたい。また、法律相談のニーズが増えており、現行の月2回でよいのか、回数の拡充の検討も必要と考える。

土井氏:最後に、今後相談窓口を開設しようという方々にアドバイスやメッセージをお願いしたい。

古橋氏:多くが自治体は国際交流協会のような専門機関に委託して体制づくりを進めていると思う。そのためには、行政と国際交流協会の信頼関係の構築、担当者間だけでなく組織としての信頼関係構築が最も重要だと考える。行政は予算を確保し、相談員の処遇改善を図り、国際交流協会ではよりよい相談体制とするため人員を確保・育成するなど、双方の担う役割を分けて共に同じ目標に向けて取り組みを進めることが重要だと考える。

土井氏:愛知県国際交流協会が過去の相談事例を公開しているので、参考にしていただきたい。

https://www2.aia.pref.aichi.jp/sodan/j/sodanjirei/index.html
https://www2.aia.pref.aichi.jp/sodan/j/sodancorner.html

事例紹介3

小山市 国際政策課  係長 葛原 誠氏
葛原誠氏

私からは、相談窓口を設置する上での体制面での整備を中心に紹介する。当市では平成4年に相談窓口を開設した。背景としては、当時日系人の定住者が急増し行政窓口の様々な分野で課題が顕在化し、市民からも外国人住民からの相談体制整備の要望があり、「外国人相談室」を開設した。その後、国の一元的相談窓口、外国人受入環境整備交付金などの制度創設を受け、機械翻訳などを導入し「多文化共生総合支援センター」と名称を改めて相談室の運営をしている。直接実施方式で平日毎日9時から17時まで対応し、英語スペイン語ポルトガル語の相談員3名が毎日常駐している。ビデオ通訳は14言語、機械翻訳は30言語に対応している。

当市では、先ほど事例紹介のあった大きな自治体のように国際交流協会に委託することが難しいため、直接実施方式を取っている。行政書士による相談も実施していたが件数が伸びず、行政書士会への謝礼が高額であることもあり、費用対効果を考え年度の途中で終了した。その他情報発信等を行っているが、詳細はサイトをご覧いただきたい。
https://www.city.oyama.tochigi.jp/kurashi/jinken-dannjyo-gaikokujin/foreigner/

小山市は相談員をパートタイム会計年度任用職員として直接任用している。待遇面は市の会計年度任用職員と同様だが、通訳や相談対応など高度な能力が必要となるため、通常の事務補佐に比べるとやや高い1,6781,701円の時給となっている。相談員の育成については、庁内で外国人対応に関する研修をしている。小山市では独自に人材確保を行っているが、参考としてJICAの無料職業紹介事業や国際キャリア総合情報サイト、PARTNERなどがあるのでご紹介する。

https://partner.jica.go.jp/
https://www.jica.go.jp/volunteer/relevant/company/recruit/info/
https://www.jica.go.jp/volunteer/obog/job_support/index.html

相談員の採用に留まらず、地域課題解決という視点でも貴重な人材を獲得できると思うため、活用を検討いただきたい。

これから相談事業を始めたいという自治体の参考にしていただければと思い、小山市における課題も紹介する。相談員が休暇取得する場合相談体制が手薄となってしまうこと、週1~2日間程度の配置で十分な言語の相談員を配置することが困難であること、時間外窓口や休日窓口への人員配置が難しいことが挙げられる。より柔軟な体制を整備するために、業務委託契約についても検討を行っている。また、契約しているビデオ通訳の利用時間の不足が見込まれる。今年度は8,400分の利用契約であるが、9月末日時点で既に約5,700分利用している。予算要求段階で適切な時間を算出することが難しいため、今後は従量課金制への切り替えも視野に対応を検討している。

多文化共生総合支援センターについては以上であるが、最後に当市が運営している「小山市外国人ふれあい子育てサロン」について紹介する。小山市国際交流協会への委託によって平成24年から実施している事業である。母国と異なる環境での子育てに不安をもつ住民の増加に伴い、当初は緊急雇用創出事業の一環として開始した。平日8時30分から1715分まで英語、スペイン語、ポルトガル語の相談員2人を配置している。財源は子ども子育て支援交付金を活用し、当市では市の財政負担が事業費の6分の1となっている。外国人の子育て支援が必要な自治体では、対応策の一つとして検討に値すると思う。

【質疑応答】

質問:人材確保におけるJICAの求人情報や、子育て支援事業などの取り組みはどのように情報収集しているのか?

回答:多文化共生だけを見ていると気づけない情報も多いと思うが、他の分野の情報収集は、現場の職員だけでは限界があると思う。小山市でもまだまだ課題を感じているが、敢えて行っていることとしては地道にインターネットでの検索。入管庁のページやクレアのツール集などを見ながら他の自治体や国の動きをチェックし、小山市のニーズに合ったものがあれば導入を検討するという流れである。

質問:日頃県内の他の市町村、気になる他県の市町村と相談事業や多文化共生事業に関して情報共有や連携は図っているか?

回答:特定の自治体と協議体等を持っているわけではないが、個別にいくつかの自治体と対話している。先日もある自治体を訪問した。小山市に来てもらうこともある。ツール集などで気になる事業があれば直接連絡し積極的に情報を取りに行っている。

質問:他の自治体の取り組みでよかったものがあれば教えて欲しい

回答:災害時の対応については、小山市では施策の実現に至っていないので、今後の検討にあたり他の自治体の例を見ながら小山市に適した体制を敷いていきたい。

質問:子育てサロンは就学前の子ども対象なのか、学齢期の子どもの対応もしているか?

回答:妊娠時から、お子さんが独り立ちするまでなので高校生でも対応可能。相談が多いのは子どもが幼稚園・保育園、小中学校に通う年齢層である。

土井氏:今後の展開に向けて、このような団体と連携が取れるとより相談対応がスムーズにいくということがあるか?

葛原氏:基礎自治体は相談内容や件数が限られる。当市は年間4000件を超えるので基礎自治体としては多いと思うが、都道府県単位に比べると特異ケースも多く無いため知見の蓄積が難しい。基礎自治体だけでなく大きな自治体とつながり、相談事例、特異ケース案件について、情報を得られると、もしもの時の対応がスムーズになると思っている。

土井氏:これから相談窓口を開設する方々にメッセージをお願いしたい。

葛原氏:相談窓口を開設する上で、自治体によってニーズや置かれている状況が違う。既に国際交流協会やNPO法人が相談を行っているところもあれば、無いところもあるだろう。一つの正解は無いと思う。直接実施方式の課題を説明したが、間接実施方式の方がよいという意味ではなく、委託先によっても課題やメリットが異なると思うので、色々なパターンを比較検討いただき、自分の自治体に適した体制を予算面も含めて考えることが重要だと思う。

総括 土井佳彦氏

入管庁の齋藤氏のお話では、各地の地方入管との連携を深めて欲しいという話が印象的だった。兵庫県国際交流協会については30年以上のノウハウの蓄積がある一方で、現在も広報周知が課題という点に驚いた。それだけ相談窓口の周知が容易では無いことと認識し地道に取り組むしかない。防犯ブザーや子どものおもちゃなどの細かな配慮は非常に重要であるし、多くの窓口でも真似できることではないか。浜松市は相談員に向けた充実した研修を提供されている。他部署や他機関とも密に連携されているが30年の取り組みがあってこそであり、また、日頃の取り組みが市内で様々な方に認知されているからこそと感じた。小山市はJICAの求人のツールの紹介があったが、地域おこし協力隊など外部人材を地元の多文化共生事業に登用するケースもある。子育て支援事業など様々なリソースを活用して取り組むことは、財政やマンパワーが限られる中で自治体規模に関わらず参考になるのではないか。社会も大きく変化し、昨年度は外国人が30万人増加したが、今年上半期で15万人増加したという報道もあり、今後ますます相談体制を充実させることが必要になる。本日のセミナーはきっかけの一つに過ぎないかもしれないが、今後の参考にしてもらえればと思う。