KUMAMOTO KURASU(多文化共生/外国人材定着支援)
インタビュー
2026.08.17
「地域に飛び出す市民国際プラザ」 団体活動インタビュー
◆KUMAMOTO KURASU (2026年7月24日) 熊本県熊本市
多様なステークホルダーをつなぐ架け橋へ -多文化共生をともに紡ぐ「KUMAMOTO KURASU」の挑戦
KUMAMOTO KURASUは、外国人材に「選ばれる熊本」を目指して2023年に設立された、企業を中心とする任意団体です。初代事務局長で現在は理事の木下俊和さんと、木下さんから事務局長を引き継いだヨハネス・ヴィルヘルムさんにお話を伺いました。
設立経緯と背景
KUMAMOTO KURASU設立の礎には、JICA九州が2022年度に実施した「熊本県における外国人材受入・多文化共生のための調査」があります。この調査から、実習・留学生の半数近くが、その終了後も熊本での就労を希望していること、そして、「日本人の友達」「日本語力に関する自信」「コミュニケーション」「防災の知見・経験」がキーワードになることが明らかになりました。その対応として6件のパイロット事業が立ち上げられました。KUMAMOTO KURASUはその一つとして、受入企業のコミュニケーション促進、コンサルテーションを目的に、発足したのです。
全国初となるこのような県単位でのマルチステークホルダーの連携構造が実現した背景には、2016年の熊本地震があるとのことでした。発災後、復興に向けて行政・企業・NPO・地域社会など多様なセクターの垣根を越えた連携が加速し、そうした土壌がベースにあったとのことです。
調査の一環で熊本県内の企業と議論を重ねて、外国人が安心・安全に働ける環境づくりを目指す方向性を確立し、熊本経済同友会や熊本商工会議所とも連携して、組織の基盤が構築されました。「熊本で働く外国籍の皆さんの受入企業・監理団体・登録支援機関・その他支援団体や個人のグループ。熊本を働きやすく住みやすい場所とするため、充実した仕事と生活ができるよう支援する」ことなどを謳う「KUMAMOTO KURASU熊本宣言」を発出し、これをもとに規約を作成して、2023年10月1日に、15企業・団体を会員とする任意団体の正式な設立に至ったのです。

くまもとSDGsアワード2025 SDGs未来づくり部門に入賞
組織構成と会員、地域連携
これに先立つ2023年3月のキックオフシンポジウムや、2024年11月の第1回シンポジウムをきっかけに、新聞報道などの効果も相俟って、県内での認知度が向上し、会員数が徐々に増加しました。企業は、外国人労働者について考えていく上で重要なプレイヤーです。現在の会員は約100の団体・個人ですが、約半数を企業が占めます。加えて、管理団体・登録支援機関、外国人コミュニティ、熊本市国際交流振興事業団等の支援団体、熊本県災害ボランティア団体ネットワーク等の防災関連団体、さらに、司法書士、行政書士、弁護士、研究者等の個人会員と、多様なステークホルダーが活動に参加しています。年会費は無料で、役員は全てボランティアで活動しています。JICAの外国人材・共生を担当する国際協力推進員らが支援的立場で事務局業務を担っています。熊本県は知事直轄で外国人との共生推進本部会議を設置していますが、KUMAMOTO KURASUは民間団体として会議にオブザーバー参加するなど、県の多文化共生政策について民間の声を届け、また、定期的に活動報告を行って、良好な連携関係を保っています。

熊本県庁外国人との共生推進本部会議にはオブザーバー参加

熊本大学での講義の様子
主要な活動
KUMAMOTO KURASUは、4つの機能を掲げて活動を展開しています。一つ目は、「情報共有・交換の場」です。定例会やオンラインセミナーを開催して、定期的に会員向けの情報提供を行っています。二つ目は、「コラボレーション促進」です。会員間の連携事業創出を支援し、マッチング機会を提供しています。三つ目は「次世代育成・教育」です。高校生向けの啓発活動や、大学での講義のほか、サッカー、バスケットなど、スポーツチームとの連携も図っています。そして四つ目は「国内外ネットワーク活用」です。JICAの海外ネットワークを活用するなどして、情報提供や企業の海外展開の支援を行っています。
いくつかの会員企業とは、事業面で強力なパートナーシップを組んでいます。たとえば、桜十字グループと、外国人材の健康管理や労働環境改善に関するセミナー等を共同で開催しています。以前はオンラインセミナーを開き動画を公開していましたが、昨今はポッドキャスト形式に移行して、より多くの人がアクセスしやすい情報発信が整いました。
防災分野ではとくに、10年前の熊本地震の経験を踏まえ、外国人の防災意識向上と災害時支援体制の構築に取り組んでいます。顔の見える関係が大事だということで、多くの関係組織や企業がKUMAMOTO KURASUにアクセスしてくれます。「ぼうさいこくたい(防災推進国民大会)2024」に出展するなど、啓発活動も積極的に展開しています。
会員間、あるいはKUMAMOTO KURASUを母体として自治体、大学、その他官民組織等との共同活動体をつくることができます。これが、KUMAMOTO KURASUの大きな存在価値となっているのです。
多文化フェス 2026 in 熊本の様子

多文化フェス 2026 in 熊本の様子
課題と展望
今年で活動3年となります。代表、事務局長とも2代目となり、組織は第2ステージに移行しつつあります。初期は、設立の経緯もあってJICAに依存する部分が大きくありましたが、適切な関係性を維持しつつ、徐々に独立性を強化していこうとしています。初期メンバーの強い思いを着実に引き継ぎつつ、役員による分担体制を構築して、民間主導の運営体制を整えていきたいと考えています。
人口減少が進む中で持続可能な地域社会を築くため、外国人材は熊本の発展を支える大切なパートナーとなっています。地域への定着を促し、長期的に働き続けてもらえることがきわめて重要なのです。冒頭で触れた調査結果にも示されたように、日本人の友達がいて、地域の人々と良好なコミュニケーションがとれる環境が、その基盤となることは確かだと実感しています。KUMAMOTO KURASUは、外国人材と受入企業の双方に向けて、より実践的な支援活動を展開し、「選ばれる熊本」の実現を果たす存在として期待が高まっています。
(インタビューは2026年7月24日に行われました。数日後に発生した令和8年熊本県地震で被害を受けられた皆様に、心よりお見舞い申し上げます。 )
KUMAMOTO KURASUウェブサイト https://kumamotokurasu23.wixsite.com/kumamotokurasu