越前市国際交流協会(多文化共生/日本語教育/企業との連携)

「地域に飛び出す市民国際プラザ」 団体活動インタビュー

◆越前市国際交流協会 (2026年4月28日) 福井県越前市

越前市国際交流協会の歩みと未来への展望
~地域日本語教室の進化と、市民・企業が共に創る多文化共生の現場から~

今回は、越前市国際交流協会事務局長の中須賀美幸さんにお話を伺いました。

越前市について
 越前市は製造業が極めて盛んであり、製造品出荷額は福井県内で第1位を誇ります 。現在の外国人人口は6,347人で、全人口の7.95%を占めています(202651日現在) 。出身国別ではブラジルが4,500人と全体の約7割を占め、次いでベトナム、フィリピン、中国と続きますが、近年は特に東南アジア出身者の存在感が増しています。

越前市国際交流協会
 越前市国際交流協会は1991年に設立され、これまでに35年の確かな歩みがあります 。設立当初は市の地域振興課内に事務局が置かれていましたが、民営化の流れに伴い2000年に独立を果たしました 。現在は正職員1人、外国人スタッフを含むパート職員5人の、計6人体制で運営を行っています 。 会員は個人と団体に分かれており、団体会員は令和7年度時点で48件にのぼります 。その中でも特に、外国人を雇用する関係企業との連携を図っています。

 「多文化共生サポート事業(①地域交流・連携強化 外国につながる子どもサポート・やさしい日本語 ③共生推進)」と「日本語学習支援事業」の2つを柱に事業を展開していますが、特に日本語学習支援(の)活動は、外国人と地域社会をつなぐ取り組みの核心に位置づけられています 。

子どもセンター
個別日本語教室の様子

主要事業は日本語教室
 設立当初から30年以上にわたり、主要事業として日本語教室を運営してきました 。昨年度の教室開催数は個別・グループを合わせて3,087回に及び、参加者の延べ人数は 3,592人を記録しました 。定期的な学習者数は全体で約250人程度です 。新規申込者数は179人で、その9割をブラジル出身者が占めています 。こうした学習を支える日本語サポーターは前年より5人増加し、現在は44人が登録しています 。この地域日本語教室を起点として、子どもの日本語支援や、やさしい日本語の普及、外国人との交流、さらには各種イベントや防災活動、ボランティアへの参加など、外国人の地域社会への参画へとつながっています。 現在の大きな課題は、申し込みの増加に伴い常に30人以上の待機者が生じている点です 。より多くの人に学習機会を提供できるよう、現在は学習ゴールをあらかじめ設定した「有期型」の教室やゼロ初級者がグループでひらがなとカタカナを学ぶグループ教室を試行しています 。

ブラジル・パステウ作り(料理交流)

特徴的な活動
 「夏休み宿題サポート教室」を、市の教育委員会や小学校、高校生・大学生ボランティア、地元企業などと連携して実施しています 。令和7年度には子ども78人、支援者34人が参加し、延べ372人を動員する大規模な事業となりました 。また、スポーツを通じた交流イベントとして昨年度には国際交流運動会「One World Sports Day」(特別事業)を初開催しました 。実行委員会を組織し、外国人雇用企業などからの協賛金によって運営費のすべて を賄うとともに、ボランティアを公募することで、非常に活気あるイベントを実現できました 。こうした活動を通じ、協会の組織強化と規模拡大を図っています 。

夏休みこどもサポート事業夏休み宿題サポート教室の様子

市や県との連携
 越前市役所のダイバーシティ推進室とは、会議の開催や委託業務、特別事業などを通じて緊密に連携しています 。福井県庁に対しては多文化共生推進ネットワークに加入し、オンラインミーティングに参加しています 。さらに、県内の他の国際交流協会とも年2回ほどオンラインでの情報交換会を開催しています 。

外国人コミュニティの状況
 地域における外国人コミュニティの活動は非常に盛んであると感じられます 。特にブラジル人の間ではSNSコミュニティが拡大しており、生活上の困りごとへの対応や人材紹介など、ニーズのビジネス化が進んでいます 。医療や運転免許更新時の同行通訳・サポートをはじめ、ブラジル料理の提供やキッチンカー、美容・フィットネス、中古車販売、母語教室、翻訳、日本語教育、保険、金融・投資にいたるまで、多角的なビジネスへと発展しています 。また、コミュニティ内で影響力を持つインフルエンサーも登場しています 。

こいこい松本One world sports day 国際交流運動会(特別事業)

課題
 日本語学習支援を中心とする市民活動は、これまでボランティアの献身的な活動によって支えられてきましたが、現在は学習者ニーズの多様化やサポーターの高齢化、深刻な人手不足という厳しい直面課題にあります 。希望者全員に学習機会を提供するための新たな工夫が不可欠となっています 。また、外国人支援が福祉やビジネスの枠組みに組み込まれる場面も増えてきました 。制度化や予算の安定は安心感をもたらす一方で、市民活動が大切にしてきた柔軟性や、人と人との有機的なつながりが少しずつ変質しているのも事実です 。とりわけ現場では、生活支援として寄り添いたいというサポーターの思いと、在留資格の更新や就労継続を目的とする学習者の切実なニーズとの間に、意識のギャップが広がっています 。市民活動が培ってきた交流の取り組みも徐々にビジネスの色彩を帯びる中で、これまでの価値をいかに維持し、地域日本語教室を時代に合わせてどう進化させていくか、今まさに模索を続けています 。

今後の展望
 国の方針が「多文化共生」から「統合政策」へと転換しつつあると感じていますが、越前市国際交流協会としては、これまで通り住民一人ひとりと対等に向き合う姿勢を大切にしていきたい考えです 。地域には、国籍や立場を超えて「つながりたい」「支え合いたい」と願う人たちが確実に存在しています 。そのため日本語教室についても、単なる言語習得の場にとどまらず、人と人が出会い、地域との絆を育む場として、これからも大きな可能性を秘めていると同協会は確信しています 。今後、制度や社会情勢が変化を遂げても、市民活動ならではの温かさや柔軟性を重んじながら、誰もが安心して暮らせる地域社会の実現につなげていきたいとしています 。

越前市国際交流協会ウェブサイト https://www.e-i-a.jp/