(公財)福井県国際交流協会(多文化共生/相談/外国人コミュニティ)
インタビュー
2026.03.17
「地域に飛び出す市民国際プラザ」 団体活動インタビュー
◆(公財) 福井県国際交流協会 (2025年12月10日) 福井県福井市
「多文化共生」は地域のインフラへ―福井県国際交流協会が描く、共生社会の最前線―
福井県内で暮らす外国人数が、令和7年12月末時点で20,772人となり、過去最多を更新し続けています。彼らはもはや「一時的な来訪者」ではなく、地域経済や福祉を支える「生活者」となりました。その暮らしの根幹を支えているのが、1989年の設立以来、現場の最前線に立ち続ける「公益財団法人 福井県国際交流協会(以下、FIA)」です。今回は主査の飯田 隼人さん、山下 依里佳さんにお話を伺いました。
単なるイベント実施や語学学習の場を超え、今まさに「多文化共生」を地域に不可欠なインフラとして機能させていくために取り組んでいるFIAの歩みについて、県との連携、人材育成、そして外国人コミュニティリーダーの活躍という三つの視点から、その現在地を紐解いていきます。
「行政」と「現場」を繋ぐNPOとして、また、NPOの中間支援の役割として
FIAの最大の特徴は、県の外郭団体としての安定性と、地域に根差したNPOのような機動力の双方を持ちながら活動している点にあります。旅券発給事業や福井県国際交流会館の管理運営業務を担いながら、実際の外国人住民が抱える生活トラブルやコミュニティ支援といった「生きた現場」のサポートを担っています。同時に、福井県においては、NPO支援センターのような専門組織が不在という背景もあり、FIAがその「中間支援機能」を実質的に担っている点も重要です。県内17市町および約100団体・個人が参加する「多文化共生推進ネットワーク」の中核として、知見の蓄積とネットワークの継続性を図ろうとしています。いわば、地域の共生力を枯渇させないための「要」として、多文化共生を社会構造の一部へと組み込む専門的な中間支援の役割を果たしているのです。
「相談」から「伴走」へ―FIAが描く支援の設計
「どこに相談すればいいか分からない」という外国人住民の声に対し、FIAでは相談対応のあり方について見直しを進めています。その一つとして、ふくい外国人相談センターに社会福祉士の資格を持つ専門性の高いコーディネーターを配置しています。
これまでの相談業務は、窓口で適切な機関を紹介する「案内」が主でした。しかし現在は、相談者の背景にある複雑な生活課題を整理し、解決までの道筋を一緒に考えていくケースマネジメントを実践し、支援の質を一段深くシフトさせ、相談者に伴走する取り組みを強化しています。
「相談件数ではなく、一人ひとりの相談者と向き合うことが大切。」と飯田さんは語ります。外国人の相談者が抱える課題は様々な分野が複合的に絡みあっています。例えば、一人の相談者の就労トラブルの背後には家庭内暴力や子どもの学校生活などの課題が隠れ、ある相談者の婚姻関係のトラブルには外国人妻と子の在留資格や経済面での自立の課題が隠れています。FIAでは、必要に応じて福祉部門や教育部門など関係機関を交えてケース会議を開催し、相談者の課題解決をサポートしています。最近では社会福祉士の国家試験にも外国人対応の問題が導入されるなど、視野が広がりつつあり、現場の意識も変わってきています。こうした流れの中でFIAは、福祉と多文化共生の架け橋となる「専門人材の育成拠点」としての役割も、今後さらに果たしていくことになるのではないでしょうか。
ふくい外国人相談センターの様子
「共に地域を創る仲間」として―105人のコミュニティリーダー
福井県の多文化共生施策において、活気に満ちているのが「ふくい外国人コミュニティリーダー」の存在です。令和7年12月14日時点では、20か国・地域にルーツのある方(日本人を含む)で、計105名という非常に心強いネットワークへと成長しました。これまで、外国人住民は「行政支援の対象」として捉えられることもありましたが、現在は、コミュニティリーダーとして、情報発信や地域とのつながりづくりを担う存在となっています。
リーダーたちは、SNSを駆使した母国語での情報発信や、災害時の避難支援など、行政の「橋渡し役」として期待されています。あるコミュニティリーダーは、「同じ国の出身者の役に少しでも立てたらうれしいですし、他の国の人と交流できることで、福井での生活がより楽しく、豊かになっていると感じています」と話します。また、特筆すべきは、能登半島地震などの災害時における活躍です。言語の壁や文化の違いから、公的な避難情報が届きにくい場面でも、リーダーたちがコミュニティ内で情報を拡散することで、迅速な初動が可能となりました。一方で、課題も明確です。活動は金銭的な報酬に基づくものではなく、あくまで「自分たちの地域を良くしたい」という自主性に支えられています。FIAは、彼らのモチベーションを維持するために「顔の見える関係性」を重視し、定期的な交流会や研修を通じて、横のつながりを強化しています。

2025年6月22日 ふくい外国人コミュニティリーダー認定研修
立場の垣根を越えて、地域全体の「インフラ」へ
FIAがこれから形にしようとしているのは、多文化共生を「外国人だけの問題」や「どこか特定の団体の仕事」とせず、地域全体の「インフラ」として捉え直す視点です。
現在、介護現場や製造業などにおいて外国人は欠かせない存在となっています。一部の企業では、日本語教室への参加を後押ししたり、日本人従業員がボランティアとして学習を支えたりする温かな動きがあるほか、ブラジル人コミュニティが高い情報収集能力を持っており、地域活動を支えているケースもあります。
FIAは、こうした企業や民間団体、あるいはコミュニティといった多様な「地域の担い手」の動きをバックアップしています。誰もが安心して暮らし続けられる環境を整えることは、もはや地域存続のための不可欠な備えといえます。「支援体系をより深く、小中高の教育現場や医療・保健・福祉部門とも連動させていきたい」という展望からは、すでに福井で共に暮らす生活者として、その絆をより確かなものにし、福井の未来を共に紡いでいこうとする確かな意思が感じられます。
福井県国際交流協会が紡いできたネットワークは、単なる組織の集合体ではありません。それは、言葉や文化の壁を超えて、誰もが尊厳を持って暮らせる社会を作るための、血の通った「インフラ」そのものです。このインフラ構築へのたゆまぬ歩みが続く限り、福井県は多様性に満ちた、より強靱で豊かな地域へと進化していくに違いありません
(公財)福井県国際交流協会 ウェブサイト https://www.f-i-a.or.jp/ja/