特定非営利活動法人immi lab(多文化共生/若者支援/教育)

「地域に飛び出す市民国際プラザ」 団体活動インタビュー

◆特定非営利活動法人 immi lab (2025年5月27日) 京都府京都市

「ともに生きる力を育む」―移民ルーツの若者と地域をつなぐイミラボの挑戦―

 今回は、滋賀県を中心に外国につながりのある青少年の伴走と育成を通じて、彼らの声が尊重される社会づくりに挑戦している特定非営利活動法人immi lab(以下イミラボ)代表理事の北川ペドロソ実萌さんにお話しを伺いました。

※イミラボでは、外国につながりのある若者を「移民ルーツをもつ若者」と呼んでいます。

移民ルーツの若者が直面する現実 
 イミラボが対象とするのは、自らの意思に関わらず、家族の事情等で日本に定住することになった2世以降の若者たちです。彼らは日本社会の中で見過ごされがちな課題を抱えています。親が日本語を話せず、「通訳」として家族を支えるヤングケアラーとなることが少なくありません。また、家族や同じルーツを持つ人々など、限られたコミュニティの中で過ごすことが多く、進学や就職に関する情報が届きにくい現状もあります。選択肢があることを理解していても、自らの意思で選択肢の中から希望する進路を選び取り、実現することが難しい環境におかれがちです。さらに、日常的に差別や偏見を経験することもあり、自らのルーツに葛藤を抱く若者もいます。こうした経験は、自己肯定感の形成や、特に日本社会で生きていく自分の将来像の決定に大きな影響を及ぼしています。

 イミラボは、こうした日系ブラジル人が多く暮らす滋賀県を拠点に、ブラジル人学校などと連携し、移民ルーツの若者たちの「生きづらさ」に向き合い、中長期的な伴走支援を行っています。単なる支援や制度的サポートではなく、「ともだちがひとりいること」から始まる関係づくりを大切にし、孤立を防ぎ、対話とつながりを通して希望を育む実践を重ねています。

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移民ミュージアム訪問の様子

プロジェクトポンテとは:レジリエンス(困難を乗り越える力)を育てる
 イミラボの代表的な取り組み「プロジェクトポンテ(Projeto Ponte)」は、移民ルーツの若者のレジリエンスを育てるプログラムです。レジリエンスには内面要素の成長と、環境要素の構築が必要です。そのため、若者がさまざまなキッカケを通して社会とのつながりを作り、そこで経験したことをリフレクションすることを1年間くりかえします。「ポンテ」はポルトガル語で"橋"を意味し、人と人、文化と文化、世代と世代をつなぐ象徴でもあります。

 このプロジェクトでは、若者と「メンター」と呼ばれる市民ボランティアが1年間継続して関わり合いながら、信頼関係を築いていきます。メンターは年上の友人として若者の話に耳を傾け、共に過ごし、必要に応じてキャリアや生活の相談にも応じます。支援者と被支援者という非対称な関係ではなく、「対話のパートナー」として互いに成長していくことを目指しています。

 また、メンター制度に加えて、地域との接点を広げるためのさまざまな企画も展開しています。たとえば、神戸の移住ミュージアムを訪ねて日系ブラジル人の歴史に触れたり、日本の家庭でホームステイを体験したり、進学・就労に関するワークショップを開催したりと、多様な経験の機会を設けています。こうした体験を通して、「私はここにいていい」という意識が育まれて初めて将来のキャリアを前向きに考えることができます。

ともに育つ:若者とメンター、そして地域の変化
 プロジェクトポンテに参加した若者の中には、高校卒業後は親と同じように工場で働く以外に選択肢はないと思っていた人もいました。しかし、メンターとの継続的な関わりやイベントを通じて、多様な価値観に触れる中で、進学や新たなキャリアへの意欲が芽生えていきます。実際に、大学進学を目指し、奨学金制度やポンテ基金(クラウドファンディングで実現した入学金支援制度)を活用して、自らの力で新たな道を切り拓いた若者もいます。その姿に感動した保護者が、「見ず知らずの人が我が子の入学金を支援してくれるとは思わなかった」と語るなど、変化の輪は家庭や地域へと広がっています。兄弟姉妹が学びへの意欲を高めたり、周囲の大人たちが若者の可能性を見直すきっかけになったりと、小さな一歩が大きな変化へとつながっています。一方で、メンター側からも「思っていた以上に楽しかった」「新たな日本社会の一面を知った」との声が寄せられ、メンターにとっても貴重な経験となっています。

スピーチコンテスト2.png若者や保護者、メンター、ボランティアが交流し、若者たちの言葉に耳を傾けたスピーチコンテスト

地域とともに:連携による共生社会モデルの模索

 イミラボの活動は、助成金・寄付・クラウドファンディングなどに支えられており、有給スタッフを中心に様々な形でのボランティアが共同で運営しています。ボランティアやメンターの多くは、イベントやSNSをきっかけに活動に参加し、人と人との出会いを通じてコミュニティが広がっています。地域との連携も着実に進んでいます。滋賀県や京都府の国際交流協会との協働や、地元自治体が主催する若者議会への参加を通じて、移民ルーツを持つ若者の声を行政に届ける機会にも参画しています。さらに、企業の協賛によるイベント開催など、民間セクターとの連携も拡大中です。

 今後は、「一人ひとりに寄り添う丁寧な支援」に加え、AIを活用したアウトリーチ「広く 浅い接点づくり」にも取り組んでいく予定です。また、将来的には、活動を通して見えてきた課題や若者たちの『生の声』を国や自治体に届けます。彼らが実際に経験したことをもとに、行政と協力して今の仕組みをより良く変え、誰もが自分らしく生きられる社会を目指したいと考えています。

 イミラボの実践は、異なる背景を持つ人々が対話を通じて、共に未来を築いていく「共創 の場」そのものです。移民ルーツの若者たちが自らの可能性に気づき、地域社会の一員として活躍できる環境を整えることは、彼らの人生の選択肢を広げるだけでなく、地域の多様性と活力を高め、日本社会全体の未来を豊かにしていく力になるのではないでしょうか。

immi lab ウェブサイト https://www.immilab.org/