長野県箕輪町と「多文化LIFE」(多文化共生/災害支援/日本語教育)
インタビュー
2026.02.09
「地域に飛び出す市民国際プラザ」 団体活動インタビュー
◆長野県箕輪町と多文化LIFE (2025年9月11日) 長野県箕輪町
~地域から広がる多文化共生 長野県箕輪町と「多文化LIFE」がつくる、官民協働と広域連携のモデル~
生活に寄り添う箕輪町の姿勢
長野県上伊那地域に位置する箕輪町は、人口24,194人の町です。そのうち3.6%にあたる860人が外国人住民として暮らしています(令和8年1月1日現在)。製造業を中心に外国人住民が地域社会の一員として定着する中、町では早くから通訳相談員を配置し、生活相談体制の整備に取り組んできました。現在、多文化共生は町役場のくらしの安全安心課長 小田切正憲さんと、多文化共生・男女共同参画推進係の榎並美穂子さんが担い、外国人生活相談窓口の相談員2名と共に対応しています。特徴的なのは町役場が民間との連携に極めて前向きである点です。箕輪町では多文化LIFEとの協働を通じて、町内にとどまらず近隣自治体からの参加も受け入れる研修を町主催で実施するなど、地域を越えた連携づくりを進めています。

多文化防災ワークショップの様子
一人の働きかけが町の流れを変えた
箕輪町の多文化共生の取組が大きく動き出したのは、2020年にポルトガル語通訳者としてUターンした入倉眞佐子さんの働きかけがきっかけでした。外国籍住民支援の現場に立つ中で、制度を整えるだけではなく、地域に根ざしたボトムアップ型の取組が必要だと提案し、庁内外の意識変化を促していきました。現在は高校教員として教育現場に携わりながら、行政と地域、教育現場をつなぐ立場から、多文化共生の実践を継続的に支えています。

災害時外国人支援サポーター養成講座(入門編)の様子 右/入倉さん
「多文化LIFE」と官民協働
入倉さんの思いを具体的な形にしたのが、2023年立ち上げた民間団体「多文化LIFE」です。行政の取組を補完するだけでなく、現場に近い立場だからこそできる柔軟な活動を展開しています。多文化LIFEは、日本語教室の運営支援、多言語進学ガイダンス、外国ルーツの子どもへの学習支援、保護者への学校文書記入サポートなど、教育現場と密接に連携した実践を積み重ねてきました。また、箕輪町からの委託を受け、日本語教室や多文化防災ワークショップの企画・運営も担っています。町外からの参加も積極的に呼びかけることで、地域を越えた学びと交流の場を生み出しています。

日本語教室の様子
広域で支え合う仕組みへ―災害支援と人材育成
箕輪町は、民間との協働を基盤に、広域連携にも力を入れています。文化庁の事業を活用した地域日本語教室を令和4年度から3年間実施し、令和7年度以降は自走体制での継続を目指しています。さらに、災害時の外国人支援体制を強化するため、「災害時外国人支援サポーター養成講座」を、箕輪町・辰野町・南箕輪村の3町村で実施しています。この事業は、昨年度から箕輪町が主体となって取り組んできたもので、事務局を各町村が持ち回りで担当する仕組みです。昨年度は箕輪町、今年度は南箕輪村、来年度は辰野町が担う予定で、地域を越えて人材と責任を分かち合う体制が整えられています。

災害時外国人支援サポーター養成講座(実践編)の様子
多文化共生を地域づくりとして捉える
多文化共生の取組は、外国人住民を単に「支援の対象」として捉えるものではなく、地域社会を共に担う存在として迎え入れる視点が重要です。箕輪町の施策には、その姿勢が随所に表れています。行政窓口での相談対応や制度整備にとどまらず、地域行事や防災、教育といった日常生活のさまざまな場面に多文化の視点を取り入れることで、外国人住民と日本人住民が自然に関わり合う土壌が育みつつあります。
また、製造業を中心とした地域経済を支える人材として、外国人住民が果たす役割も年々大きくなっています。安心して働き、学び、暮らし続けられる環境を整えることは、人口減少が進む地方にとって重要な地域戦略でもあります。箕輪町では、企業、学校、行政、民間団体がそれぞれの立場を超えて連携し、外国ルーツの子どもたちの進学や将来の選択肢を広げる取組が進められている点も特徴です。
さらに、国や関係機関が示す多文化共生施策の方向性を踏まえながらも、箕輪町は地域の実情に即した柔軟な運用を行ってきました。全国一律のモデルを当てはめるのではなく、現場の声を起点に試行錯誤を重ねてきたことが、官民協働の信頼関係につながっています。こうした積み重ねが、近隣自治体からの注目を集め、広域連携へと発展していきました。

災害時外国人支援サポーター養成講座(実践編)の様子
官民協働と地域連携が生み出す、多文化共生の可能性
箕輪町では、官民協働と広域連携を通じて、多文化共生を地域づくりの柱として位置づけています。来年度には「多文化共生のまちづくり推進計画」の策定も予定されており、町と町民、多文化LIFEをはじめとする民間団体が一体となった取組は、今後さらに発展していくことが期待されます。箕輪町だからこそ実現した、顔の見える関係性と、熱意ある人材による連携の積み重ねは、他地域にとっても多くの示唆を与える事例です。箕輪町の実践は、多文化共生が特別な施策ではなく、日々の暮らしと地域づくりの延長線上にあることを示しています。一人ひとりの生活に寄り添い、小さな実践を重ねていく姿勢こそが、持続可能な多文化共生社会への確かな一歩となっています。
箕輪町:https://www.town.minowa.lg.jp/
多文化LIFE:https://www.facebook.com/profile.php?id=61555829145902

日本語教室の様子