(一財)あしなが育英会 アフリカ事業部
インタビュー
2025.05.08
「地域に飛び出す市民国際プラザ」 団体活動インタビュー
◆(一財)あしなが育英会 アフリカ事業部 (2024年12月4日) 東京都千代田区
「恩送り」の理念から広がる国際支援 ~日本とアフリカの架け橋~
あしなが育英会は、病気や災害、自死などで親を亡くした子どもたちや、障がいにより親が十分に働けない家庭の子どもたちを、奨学金や教育支援、心のケアを通じて支える団体として広く知られています。その活動は日本国内にとどまらず、海外、特にアフリカにも広がっていることをご存じでしょうか。
今回は、アフリカ事業部で「100年構想第一・二課」の課長を務める沼志帆子さんに、国際支援の取り組みについて伺いました。
海外支援への道 阪神淡路大震災の経験から
あしなが運動の原点は、交通事故で親を亡くした子どもたちを支援するために設立された「財団法人交通遺児育英会」にあります。あしなが運動をスタートした岡嶋信治氏と玉井義臣氏、そして支援を受けた遺児たちの思いにより、活動は交通遺児から災害遺児、病気遺児へと広がっていきました。1995年、阪神淡路大震災が発生した際には、世界中から多くの支援が寄せられました。この経験を受け、「今度は日本から世界へ恩を送ろう」と、海外遺児支援に取り組むことが決まりました。当時、アフリカではエイズの流行によって多くの子どもたちが親を失っていたこともあり、支援対象をアフリカに定め、2001年に心のケアを行う拠点を設置。さらに教育支援にも広げ、寺子屋教室などを開設していきました。
「アフリカ遺児高等教育支援100年構想」未来を担うリーダーを育成する
2014年、あしなが育英会は「100年構想」をスタートさせました。これは、サブサハラ・アフリカ地域(サハラ砂漠以南のアフリカ49か国)から親を失った若者を選抜し、欧米、日本、ブラジルなどの大学に留学する機会を通して、将来様々な分野で活躍し、母国の発展を担うリーダーを育成しようというプロジェクトです。人材育成を通じて、サブサハラ・アフリカ地域の発展に貢献することをミッションとしています。これまでに373人の学生が留学し、日本には115人が渡航。現在も45人が日本の大学で学んでいます。すでに158人が卒業しており、起業家や、自身が育った孤児院のディレクターとして活躍する卒業生もいます。
今春、大学を卒業したウガンダ出身の100年構想生と共に(中央 沼さん)
公正な選抜と現地連携
留学生は現地の教育機関や日本の政府機関にも協力を仰ぎながら候補者を募っています。選考の際、従来は現地の日本国大使館で筆記試験と面接を行っていましたが、現在は現地パートナー団体との連携によりオンライン選抜も取り入れています。さらに、優秀な現地高校からの推薦制度も導入しました。選ばれた学生には、留学前に1年ほどかけて日本文化理解や生活準備をサポートし、留学後もアフリカで2か月間のインターンシップを経験するプログラムを用意。この際、学生自身が考えた「自国への貢献計画(あしながプロポーザル)」の作成も求められます。
継続的な支援と仲間づくり
留学生たちは、春と秋には募金活動にも参加します。また、年に一度「留学生のつどい」や、あしなが育英会の高校・大学奨学生向けの「つどい」が開催され、互いに刺激し合いながら学び合う環境が整えられています。こうした交流の場は、仲間同士の絆を深めるとともに、将来のネットワークづくりにもつながっています。留学生のつどいの様子
未来に向けて 支援と理解の輪をさらに広げる
あしなが育英会アフリカ事業部の次の目標は、さらに多くの支援者を募り、プロジェクトの持続可能性を高めることです。また、卒業生たちが帰国後、地元社会でリーダーシップを発揮し、より多くの社会課題の解決に取り組めるよう後押ししていきます。すでに、NGO設立や地域リーダーとして活躍する卒業生も増えています。あしなが育英会の取り組みは、経済的支援にとどまらず、未来を担うリーダーを育てることを目指しています。
「恩送り」という理念のもと、今後も日本と世界をつなぐ活動を広げていきます。
あしなが育英会 https://www.ashinaga.org/