(一社)やさしいコミュニケーション協会(東京都豊島区)(多文化共生/全般、その他)

「地域に飛び出す市民国際プラザ」 団体活動インタビュー

◆(一社)やさしいコミュニケーション協会(東京都豊島区 2022年08月03日)オンライン

本当にやさしいコミュニケーションとは何か?を追求する

やさしいコミュニケーションの普及に取り組む(一社)やさしいコミュニケーション協会 代表理事の黒田 友子さんにお話を伺いました。同団体の設立は、20195月です。

黒田さんは中学生の時のオーストラリア交換留学をきっかけに、日本語教師を目指すことにしました。日本語を学びたい外国人がいることを知り、英語も生かせる職であることに魅力を感じたからです。企業勤務などを経て2017年からフリーランスの日本語教師として活動を開始し、「やさしい日本語」に出会います。

「日本人に日本語で話しかけても英語で返ってくる、日本語を話す機会がない、日本人の友達ができないと悩む学習者がいる」という話を複数のフリーランス日本語教師の仲間から聞きました。ある時は、黒田さんがお子さんと来院した小児科で外国人のお母さんが問診票記入に困っている場に遭遇し、日本語でサポートしたこともありました。「外国人=英語」の固定観念が根強く、日本に暮らす外国人が日本語を話せる可能性を伝える日本語教師が多くないことに気づき、「やさしい日本語」の普及を目指すことにしました。

前職で医療関連の企業に勤務してから、医療情報を中心に、優先度が高いと思われる情報をやさしい日本語へ翻訳し、発信者に送るなど草の根活動から始めました。受け入れられないこともありましたが、麻疹の流行の際、国立感染症研究所が発信する英語の注意喚起をやさしい日本語に翻訳して送ったところ、ウェブサイトに掲載されるなど徐々に変化が見えてきました。ある日SNSを通じて感染症対策コンサルタントの堀 成美さんから「医療従事者へのやさしい日本語研修プログラムを一緒につくってもらえないか」との依頼が舞い込みます。研修会を無事終えた後も「是非法人化して活動を継続した方がよい」との助言を受け今に繋がっています。

外国にルーツをもつ子どものためのやさしい日本語講座 千葉県松戸市にて(2022年9月)
外国にルーツをもつ子どものためのやさしい日本語講座
千葉県松戸市にて(2022年9月)


英語が話せない患者とのコミュニケーションをスムーズにするやさしい日本語講座 成田赤十字病院にて(2023年1月)
英語が話せない患者とのコミュニケーションをスムーズにする
やさしい日本語講座 成田赤十字病院にて(2023年1月)

現在はオンデマンドのやさしい日本語研修プログラムなどを開発する他、医療関係者対象の講座や研修を行っています。また、大学への研究協力や、
KONICA MINOLTA社の多言語通訳サービス「KOTOBAL」のやさしい日本語の語彙登録に協力し、やさしい日本語機能が搭載されました。今後は、医療職対象のやさしい日本語普及に加えて、やさしい日本語普及活動を積極的に行う人材育成や、やさしい日本語の基準づくりも目指しています。

KOTOBALを導入した豊橋市役所にて やさしい日本語講座を開催(2022年)
KOTOBALを導入した豊橋市役所にて 
やさしい日本語講座を開催(2022年)

団体の理念は、「ことばとデザインでコミュニケーションをもっとスムーズに」。耳と目両方の情報を分かりやすくする「やさしいコミュニケーション」を目指しています。やさしい日本語だけでなく、やさしい英語、更に、文字情報以外の在り方、わかりやすさも大切と考えています。海外のeasy readなどは1枚に情報を詰め込むのではなく、ページ当たりの情報量を減らし、イラストを有効活用しながら伝わりやすさが優先されているとして例示くださいました。

言語としてのやさしい日本語の普及のみならず、やさしいコミュニケーションを普及するという黒田さんの視点はこれからもますます重要になるのではないでしょうか?

(一社)やさしいコミュニケーション協会ウェブサイト: https://yasacommu.or.jp/