(特活)フィリピノナガイサ (静岡県浜松市)(多文化共生/全般、教育、日本語教育、外国人コミュニティ支援)

「地域に飛び出す市民国際プラザ」 団体活動インタビュー

◆(特活)フィリピノナガイサ(静岡県浜松市 2022年06月30日)オンライン

インターカルチュラル・シティ浜松市で外国人コミュニティのハブとして重要な機能を担う

フィリピノナガイサ代表理事の松本義一さん、事務局長の半場和美さんにお話を伺いました。

フィリピノナガイサ(以下ナガイサ)は1994年、日本人配偶者を持つフィリピン人女性が仲間と共に、日本語、日本文化、日本の習慣やルールを学んだり、生活全般、子育てなどの悩みを相談し合う場として始まりました。2000年後半から日本への子どもの呼び寄せが増加し、子どもの就学、教育、学齢超過、キャリア形成支援など課題が変遷して行きました。
 
始まりはフィリピン人の自助的コミュニティでしたが徐々に運営メンバーに日本人も加わり、2012年にはNPO法人化。来日背景の変化に伴い、男性や子どもの参加も増えています。現在の活動の柱は4つで、日本語教育、こども支援、キャリアップ支援、そして国際交流です。「Nagkaisa」はタガログ語で「一つになる」という意味。「今、設立時のメンバーは誰も残っていませんが、ナガイサに象徴される設立時の『思い』が継承されている点が素晴らしい」と半場さんは言います。

ハロハロ教室で子どもたちが学習している様子
ハロハロ教室で子ども達が学習している様子

ダンスフェスティバルの様子
ダンスフェスティバルに参加
 
浜松市は「インターカルチュラル・シティ(ICC)・ネットワーク」に加盟して、都市政策として多様性を尊重する地域づくりを推進しています。ナガイサも浜松市のICCの枠組みの中で明確な役割を持ち、市と連携しながらコミュニティのハブ的な重要な機能を担っています。市の事業受託の開始に伴い、フィリピンのみならず支援対象者の国籍も多様化しています。通常、行政の委託事業は固定的枠組みが前提のケースが多いですが、浜松市では新たな課題の発生や、状況の変化に応じた対応が考慮されるそうで、本質的な課題解決につながるということです。ICCの枠組みの中で浜松市内では様々なセクター、アクター間の連携が進んでおり、市内の全ての大学とも連携しています。労働力不足に悩む企業からも多くの相談が寄せられるそうです。

松本さんは「日本人の代替という意識を取り払い、外国にルーツのある子どもたちの強みを活かせる事業展開を考えている。携帯電話等では既に変化が見られるように、外国にルーツのある子どもたちが消費者のマス層に転換するような可能性を見据えた雇用の創出や、採用基準の見直しも期待したい。また、ICCは都市政策であるが、子どもたちの多くは県立高校に進学するので、その教育は県の管轄に変わる。浜松で多様性を育んでも高校に進学すると従来の価値観に戻ってしまい、その意識の延長で就労となるので企業の意識変化も起きにくいと感じる。県や国の変化を期待する」と話していました。

浜松市地域日本語教育の体制づくり推進事業 週末浜北区コース
浜松市地域日本語教育の体制づくり推進事業
週末浜北区コースの学習者


高校進学支援
高校進学支援

職業訓練の様子
職業訓練の様子

今後、ナガイサは 国が移民政策を積極的に進めるのであれば、移民の教育センター、キャリア支援センター的な機能を目指したいと考えているそうです。公共サービスでは対応できないこと、不足することが多々あるはずで、既存のシステムでは対応しきれない部分をきめ細かく対応し、「ナガイサに行けば解決できる、今後につながる学びの機会を得られる、そんな場でありたい」と構想を聞かせてくださいました。非常にスケールの大きな展望を伺い、そもそも浜松という地域が前提としていること、意識の次元が異なることも強く感じるお話でした。浜松モデルの今後、フィリピノナガイサの今後を引き続きウォッチして行きたいと思います。

クリスマス会の様子
2019年クリマス会の様子

フィリピノナガイサ ウェブサイト:https://filipinonagkaisa.org/