特定非営利活動法人 IWC国際市民の会(東京都品川区/多文化共生/日本語教育)

「地域に飛び出す市民国際プラザ」 団体活動インタビュー

◆(特活)IWC国際市民の会(東京都品川区/2020年8月21日)@ZOOMオンライン

東京都品川区を中心に、日本語を必要としている方々を対象として、日本語学習と生活支援、または国際交流などに尽力される(特活)IWC国際市民の会。今回は、同団体の広報担当仁村議子さんを通じて、現在の諸活動や新型コロナの影響などに関し、オンラインでお話を伺いました。

土曜クラスの様子

1. IWC国際市民の会について

元々は、1982年にIWC国際婦人クラブとして港区でスタートした団体。当初は、各国大使館・公使館の駐在員のご夫人方などを対象に日本学習支援、文化交流などに従事していました。1986年から品川区へと活動の中心が移ります。その後、ある学校の学習の現場を見学した際に「日本語も英語も分からない子どもが在籍していることを知る」ことに。そして品川区教育委員会と相談し、そうした児童や生徒たちに、日本語を教える取り組みを行うようになりました。日本語が話せない小中学生を対象にする、いわゆる「取り出し授業」や日本語学習支援事業は、品川区から委託された大切な事業の1つです。2005年からは現在の団体名-IWC国際市民の会-へと名称を変更し、いまに至ります。

東京都国際交流委員会の管理する "Life in Tokyo" (ウェブサイト)には、同団体の紹介文として「国籍・性別・年齢・職業・人種・宗教に関係なく、世界の現状に深い関心を持っている人たちの集まり」と記載されています。またIWC国際市民の会のウェブサイトのトップページには、創設者である伊藤美里氏のお言葉として以下の記述があります。

「成人対象の日本語教育や、高校入試支援も行っていますが、言葉だけではなく日本で生活するうえで、不都合の無いように文化、習慣、規則は勿論のこと、特にマナーは言葉以上に重点を置いています。又、生徒さんからは各国の文化を学び、文化の壁を乗り越える努力をしています」

いずれも多文化共生を考えるさいに大切な視点です。世界の現状に関心を持てば、その分、地域に住む外国籍の方々に対する見方も変わります。言語の重要性を疑うわけではありませんが、コミュニケーションには言語以上のなにかが求められます。そして両者がともに学ぶこと。「教える/教えられる」だけの関係が全てではありません。それだけでは勿体ない気がしてしまうのは私だけでしょうか。一方通行よりも相互通行。完璧な意味での実現は難しいかもしれませんが、それでも少しずつ可能な範囲で試みることはできます。IWC国際市民の会の皆様は「多文化共生」という表現が登場する以前から、その言葉の意味に含まれる考え方を大切にして様々な諸活動を行っているように思えます。

【ご参考】
◆ IWC国際市民の会ウェブサイトはこちらから
◆ Life in Tokyo (東京都国際交流委員会)はこちらから
◆ Life in Tokyo 内部におけるIWC国際市民の会の紹介ページはこちらから

2. IWC国際市民の会の活動について

お話を伺った仁村さんからは「自分たちの活動内容の中心は日本語学習支援」とのお言葉がありました。IWC国際市民の会は、品川区を中心に様々な日本語教育支援事業に取り組まれています。主な事業は以下の通りです。

  • 日本語指導短期集中教室(JSLⅠ及びJSLⅡ)(品川区委託事業):
    品川区内小中学校に在籍する日本語が話せない児童生徒対象(JSLⅠ)、学校の教科書を使った勉強支援(JSLⅡ)
  • 高校入試支援教室:
    日本の高校入試受験を希望する満15歳以上の外国人を対象
  • 東京都立六郷工科高等学校への日本語教師の派遣(東京都立六郷工科高等学校との協定書締結事業)
    同校に所属する在京外国人選抜入学生を主な対象に、放課後、授業科目「日本語理解」として日本語を指導
  • 東京都立六郷工科高等学校への「多文化共生スクールコーディネーター」派遣(東京都教育委員会との協定書締結事業)
  • 成人日本語教室
    日本で生活する人、働く人が多く参加

また日本語を教えたい方々向けに「日本語教師養成入門講座(30時間)」も行っています。こちらの講座の対象は職業としての日本語教師を目指す方ではありません。ボランティアで活動する人々―いいかえれば、もっとも身近に日本で生活し、言葉の習得を必要とする人の支援に携わる方々―に向けた講座です。日本語学習の支援者は、全員が全員、プロである必要はありませんが、いくらボランティアだからといっても最低限の知識として国語文法と外国人のための日本語文法の違いだけは身に付けてもらうこと、そして多国籍の教室で教えるために日本語で日本語を教える技術を習得してもらうこと、この2つに焦点をあわせています。活動の裾野を広げるためにも、1人でも多くの方が自分なりのペースとできる形でやりがいをもって携わっていただくことが大切です。

加えて文化交流事業として、品川区内の高等学校や大学などと連携し、諸外国の文化の紹介や、支援活動や民間ボランティア団体等との交流などにもかかわっています。他にも情報提供事業として、外国人の方々からの生活相談、外国から来た児童・生徒の就学相談、日本の学校への入学手続きにも。なおIWC国際市民の会の対応言語は英語と中国語とのことです。最後に会報として『IWC国際市民の会だより』を年に3回発行しています。

【ご参考】
◆詳細な活動内容については、同団体ウェブサイトに記載された「IWCの活動」を通じてご確認下さい。

上記の通り、日本語学習支援活動を中心に、様々な活動に取り組まれているIWC国際市民の会。こうした諸活動のなか、特に自治体(品川区)との連携の経緯についてお話を伺うと、仁村さんから同会創設者の伊藤美里氏が品川区の教育委員であったことを教えてくれました。上記1. で記させて頂いた内容-ある学校の学習の現場の見学を通じて日本語がわからない児童生徒の実情を知ったこと-は伊藤さんが直接体験した出来事だったようです。

また続けて仁村さんは「東京都大田区で活動する(一社) OCNet や(一社)レガートおおたと一緒に主催する『日本語を母語としない親子のための東京南部多言語高校進学ガイダンス』もまた『多言語高校進学ガイダンス東京実行委員会((特活)多文化共生センター東京)』に参画する他団体や自治体との協働の上に成り立っている」と述べました。

【ご参考】
◆多言語高校進学ガイダンス((特活)多文化共生センター東京ウェブサイト)
URL: https://tabunka.or.jp/project/guidance/

3. 新型コロナウイルスの影響について

最後に、今回のインタビューでも伺ったのは新型コロナの感染拡大がIWC国際市民の会の諸活動に与えた影響について。仁村さんは、率直「新型コロナが団体活動に影響を与えた。例えば一時期、事務所の家賃の支払いに不安を感じた」と述べます。その際に一助となったのが経済産業省による「持続化給付金」。IWC国際市民の会は給付を受けて「なんとか危機を脱することができた」そうです。続けて仁村さんは「会としての事務所を維持するのは資金面では確かに負担が大きい。ただ新型コロナによって公共施設が閉鎖されたことでその場所を活用できなくなる団体もあった。その意味でいえば独自の活動場所を有していれば、その間でもある程度の活動継続が可能となる。そういう気づきもあった」と述べてくれました。

成人日本語教室については3月・4月分の実施を取り止めたとのこと。その後、活動再開に向けて日本語ボランティアの方々とオンラインによる学習支援の練習を行い、6月からオンライン授業、一部対面で教室を再開しとのこと。また品川区の児童・生徒向けの日本語指導短期集中教室については実施回数を減らしながらも、オンラインと併用する形で支援を継続しているそうです。

最後となりますが、IWC国際市民の会としての今後の課題について仁村さんに伺ったところ「やはり課題は人材の確保」というお答えが。やはり「働き盛りの方々は、どうしても仕事や家庭が多忙で参加が難しい」とのこと。どこの組織も悩みは一緒です。こちら側が少し曇った表情を見せると、仁村さんは「そのため60歳以上の方々を人材のターゲット層とする。そして理事は80歳を定年とする方向で調整中」だと、笑みを浮かべながら答えてくれました。その自然な笑顔を拝見していると、仁村さんから「困難であっても考え方次第。解決策は必ず見つかる」というメッセージを頂いているようで、なんだか安心感を覚えました。