中央区文化・国際交流振興協会(東京都中央区)(多文化共生 / 全般)

「地域に飛び出す市民国際プラザ」 団体活動インタビュー

中央区文化・国際交流振興協会(東京都中央区/2020731ZOOMオンライン)

 今回ご紹介する中央区文化・国際交流振興協会(以下「協会」と略す)は中央区内の多文化共生や国際化の推進に向けて日々活動している団体です。本日は協会事務局次長の町田一雅(まちだかずまさ)さんと国際交流担当の岡奈央子(おかなおこ)さんのお2人から、中央区の外国人住民の状況や協会活動について新型コロナ感染症の影響を含めつつお話を伺いました。

27回中央国国際交流のつどい墨絵コーナーの様子
 (20191116日(土)実施)

1. 中央区の外国人住民について

 はじめに町田次長に伺いました。

 中央区は江戸以来、日本の商業・文化の中心地の一つとして発展してきた地域です。近年は定住人口の増加傾向が続いています。202071日現在の人口は170,193人でうち外国人は8,244人と約4.9%です。中国、韓国・朝鮮、アメリカ、インド、ベトナムが上位5カ国。特に中国の方が約4,000人、韓国・朝鮮の方が約1,500人と半分以上を占めます。

 経緯を見ると、1996年(1月1日現在。以下同じ)の外国人数が1,222人であったのが、そこから10年後の2006年には3,597人と3倍近くまで増え、20年後の2016年には5,547人(約4.5倍)に達しました。現在は8,000人を超えています。ここ10年だけ見ても、日本人の増加率が40%に対して外国人は約70%を超えており、外国人の増加率の方が高い傾向にあります。その理由については「近隣の外資系企業などで働く方や自営業の方などが職住近接で区内に住まいを構えるケースが多いからではないか。また区内に建設されている最新のタワーマンションに住みたいと思う方がいらっしゃることも理由の1つではないか」と話されました。

 今後も東京2020オリンピック・パラリンピック選手村や築地市場跡地再開発などにより、外国人居住者の増加が見込まれています。このことについては「2025年頃には『20万都市』が見込まれている。選手村の住宅転用だけでも12,000人程度の人口増加が想定されている。協会としても区と連携を図りながら、多文化共生社会の推進に向けて外国人住民への支援に取り組んでいきたい」と将来に向けた話をされました。


2. 協会事業とボランティアについて

 2020年度の協会予算をみると、事業予算のうち約9割が文化振興事業に、1割弱が国際交流振興事業に支出されています。国際交流振興事業では日本語教室をはじめ日本語指導者養成講座、日本語ステップアップ講座のほか国際交流サロンやボランティア講習会、姉妹都市写真展等も行っています。その他にも毎年11月に150人を超えるボランティアと協働して開催する「中央区国際交流のつどい」では日本と外国の伝統文化の紹介や体験、踊り、料理等を通して世界各国の老若男女が国際色豊かなひと時を楽しんでいるとのことです。職員は7人ですが、何よりもボランティアの方のご協力が力強く、まさにボランティアなくして協会事業は成り立たないとのことです。協会の設立は19915月。30年の歩みを経て、現在(2020年3月31日現在)では通訳翻訳、イベントスタッフ、交流サロン、日本語及び防災語学の5種類のボランティアに344名が登録されています。

【ご参考】

※中央区文化・国際交流振興協会ウェブサイトはコチラから

※第27回中央国国際交流のつどい(20191116日(土)実施)はコチラから

 

 「さまざまな事業のうち、協会として特徴あるものをあげるなら・・・」とお話を振ると、「強いて言えば日本の文化等を体験できるイベントを通じて外国人と日本人が交流を楽しめる場である『国際交流サロン』でしょう。特に多種多様な地元企業の協力で和菓子づくりやもんじゃ焼き、凧づくり、歌舞伎の紹介、お香など日本の伝統文化に触れられるサロン事業ができている。もちろん区をはじめ消防や警察、国民生活センターなどの行政機関の協力により、防災や防犯、交通安全など安全・安心な生活のための情報の提供や注意喚起も行えている」とのことでした。

 さらに「ボランティアの方々のご活躍を特に強調したい」とのお言葉がありました。町田次長も岡さんも口を揃えて「意識の高いボランティアが非常に多く大変熱心に活動いただいている」と言います。

 例えば日本語教室。協会主催の日本語教室は初級レベルを対象としている一方、協会が支援する日本語教室では様々なレベルの学習者を受け入れています。いずれも全てボランティアが担っています。マンツーマン学習が中心なので学習者とボランティアとの間に信頼関係が自然と構築され、時には外国人学習者が自分の悩みをボランティアに相談することもあるそうです。「そうした声を11つ拾い上げていくことが非常に大切」と協会では考えています。「困りごとが分かれば、内容に応じて協会での対応もできるし、行政の関係部署に繋ぐこともできる」とお2人とも述べられます。

 なお同協会に来庁する外国人は全般的に企業勤務や家族帯同のケースが多い印象とのこと。協会主催の日本語教室では国別では中国が一番多く、韓国、インド、台湾、アメリカと続きます。また会社員や主婦、小中学生など多様な参加者に加え、最近ではオリンピック・パラリンピックに関係してブラジルやアルゼンチンの方も受講されることがあります。国際交流事業ではベトナムの方が多いそうです。

 また協会では毎年日本語指導者養成講座を開催しています。講座では技術的指導法に加え「ボランティアとはなにか?」といった「心構え」を考える場所でもあります。さらに町田次長はボランティアを目指す方々に向けては「同じ釜の飯を食う関係、あるいは同期の絆という言葉のとおり、3か月におよぶ講座の中で横の関係を構築して欲しい。また講座修了後には指導力向上を図る『日本語指導者のためのステップアップ講座』で先輩・後輩といった縦に連なる関係も作ってほしい。縦横に仲間を増やすことで情報交換だけでなく指導者ならではの悩みや喜びも共有できるし、活動のエネルギーを絶やさないことが可能となる。ボランティア活動を続けていくためにもぜひこうした機会を活用してもらいたい」と話されました。

 思いは岡さんも同様です。日本語教室以外の伝統文化のお茶や盆踊りなどの指導で活躍されているボランティアもいらっしゃいます。お2人とも「協会は黒子」だと言います。裏方としてボランティアの皆さまを支え、外国人や日本人に「楽しんで参加してもらう」橋渡しを行う。そのためには「ボランティア同士のコミュニケーションが進むよう環境整備に努めていきたい。コミュニケーションがもたらす確かな信頼関係の中でこそ誰もが参加しやすい事業の雰囲気が生まれるのではないか。さらに興味をもった外国人の方が運営に協力してくれればボランティアの意欲向上と活動の充実といった相乗効果が期待できる」と話されます。中央区の人口増加を原動力に将来の夢はふくらみます。


3. 新型コロナの感染拡大とその影響について

 最後に伺ったのは、新型コロナの感染拡大の感染拡大についてです。今年の諸団体を巡る取材において、この問題を避けて通ることはできません。

 「協会も例外ではない。芸術・文化の普及活動をはじめ日本語教室や日本語指導者養成講座、国際交流サロンなどほとんどの協会事業が中止になった。そこで、急遽、日本語ボランティアを対象に『やさしい日本語』などをテーマとしたオンライン講座を6~7月にはじめて開催した。しかしながら協会主催の日本語教室は現在(7月31日時点)も休止中。9月以降は感染状況などを考慮したうえで日本語ボランティアの方とも相談しながら再開していきたい。日本語教室は単なる学習機会の場所だけではない。その場に集うということが大切なので(3密回避からすると)非常に悩ましい」と町田次長は言います。

 感染状況を見極めつつも、感染防止対策にしっかりと取り組みながら、再開に向けて協会職員の皆さんは努力し続けています。

【ご参考】

9月に入り、同協会が実施する日本語教室や国際交流サロンは、感染対策などの実施を踏まえ随時再開する運びとなりました。詳細については下記をご確認下さい。また同協会のスケジュールは上記で掲載したURLを通じて、トップページにある「カレンダー」にアクセス下さい(先にご紹介した今年度の「中央区国際交流のつどい」は開催中止となりました)。

お知らせ・最近の動き(中央区文化・国際交流振興協会ウェブサイト)はコチラから

20209月より再開した協会主催の日本語教室の様子