特定非営利活動法人CHARM②(大阪府大阪市)(多文化共生 / 保健・医療)

「地域に飛び出す市民国際プラザ」 団体活動インタビュー

◆特定非営利活動法人CHARM(大阪府大阪市/2020年5月27日)

 大阪で活動する特定非営利活動法人CHARMCenter for Health and Rights of Migrants)。市民国際プラザでは、20193月にも、事務局長の青木理恵子さんにお話を伺いました(その時のインタビュー記事は コチラ からご確認下さい)。それから約1年。新型コロナの感染拡大が進行するなか、CHARMはどのように活動されているのか。そして、青木さんはどのように現状を受け止め、NPOとして「次の一歩」を歩もうとしているのか。オンラインでお話を伺いました。


※CHARM事務局の皆様方の集合写真(2020年9月時点)

◆新型コロナ禍での活動状況:HIV患者の「再発見」

 CHARMの重要な支援内容の1つはHIV患者への支援。新型コロナの感染拡大が始まっても病気は待ってくれません。病院への同行支援などにおいて、コロナ前と比べてCHARMの活動内容に大きな変化はありません。むしろ、今回のコロナ禍において、HIVに感染した外国の方々からの「新規相談」が多くなったと、青木さんは述べます。
 
 理由は、新型コロナの感染拡大によって外国から日本への物流が滞り、本国からHIV関係の薬を受け取れなくなった外国の方々が、支援を求めてCHARMまで連絡してきたため。

 今回、CHARMに連絡してきた外国の方々のなかには、年に一度帰国した際に、自国の病院に赴き、血液検査を受けた上で薬を処方してもらっている人や、母国の病院から発行された処方箋を使って、インターネット薬局で購入している人などが含まれます。しかし、いずれにしても、生活を営んでいる日本の医療機関で診療を受けていませんでした。

 緊急事態宣言が始まってから、ここ2か月程度、CHARMは、この問題にかかりきりです。青木さんは、この「再発見」された支援対象者と接して、日本の医療機関に繋がることの大切さを、改めて認識することになった、と述べます。なかには、日本で社会保障を申請できるにも関わらず、その手続きを知らずに、これまで日本の医療を使っていない方もいらっしゃいました。そのためCHARMでは、この方たちに社会保障の申請の手続きを支援し、日本の医療機関につなげました。

◆オンライン活動の可能性とその意義

 CHARMHIV患者への支援には、患者が集まりお互いに支えあう交流会も重要な活動の1つとして含まれます。しかし、その交流会も新型コロナの感染拡大によって、集まるわけにはいかなくなりました。もちろん「集まれない」という状況でも、CHARMは、様々なツールを用いて、積極的に支援対象者に連絡し、何かしらの形で接点を持つべく努力しています。そのような話のなかで、青木さんから伺ったのが、CHARMの活動における「オンラインでの繋がり」の可能性です。

 青木さんは、今回の新型コロナの感染拡大とその対応によって、オンラインの環境が整っていれば、地理的な意味での国内と国外の区分は関係ない、と述べます。青木さんは、外国人向けの日本語の練習機会や、日本人と外国人とのコミュニケーションに関する30分程度の小さなフォーラムを開催しようとしています。計画の立案にあたって、外国の方々は前向きです。一方で、日本の方々が、それ程乗り気ではないように見えることが青木さんの悩みの種。青木さんは、なにかしらの催し物の実現に向けて努力したい、と述べます。

 青木さんは、オンラインの利便性を活かしながら、様々な経験や文化的背景を有する方々を集めて、コロナの経験をネットで共有するという活動を皮切りに、様々な形で人々を繋げる活動も行っていきたい、と言います。そうした活動を通じて、国籍や「〇〇人」という区切りを超えた、人としての連帯の可能性を追求していく。青木さんは、経験の差異こそが、社会の豊かさの現れだと、力を込めます。

◆今後の活動に向けて

 加えて青木さんは、母子保健の問題に取り組んでいくために自治体や医療機関との連携も模索中です。当初は、今年度に実施しようと計画していました。しかし、新型コロナの感染拡大によって、いまはHIV患者の支援などに全力を尽くしています。現在、青木さんが準備しているCHARMの活動内容は、外国人への母子手帳の手交時や、家庭訪問の際に生じる保健師と外国人との間のコミュニケーション・ギャップを埋めるもの。CHARMがこれまで経験を有する通訳面での支援などに尽力します。

 青木さんは、計画立案にあたり、日本で出産し子育てを経験した外国人親に出産と子育てに関する聞き取り調査を行いました。また地域で支援する保健師には、アンケート調査を行いました。その結果、両者は、同じ場面でコミュニケーションの問題を感じていることが明らかになりました。

 青木さんは以下の通り述べます。

 「保健師の方々が、外国人の家庭を訪問しても、日本人家族と同居していない場合は、言葉が分からないことが多い。その結果、家庭の実態が分からず支援が難しい。一方、外国人親も、言語が通じないので母子手帳の受け取りに代理の方に取りにいってもらう、という事態が生じている」

 青木さんは、母子手帳の手交や家庭訪問の際に通訳が同席し、保健師と外国人親との間でのコミュニケーションを支援することで、両者の相互理解の向上に努めることができると考えています。青木さんによると、関西圏では、家庭訪問などの際に通訳を派遣している自治体もありますが、大阪府下では外国人母子支援に取り組んでいる自治体はまだ少ないとのこと。青木さんたちは、自治体業務において、多言語支援を行える体制の構築に繋げていくことができるように、引き続き自治体に働きかけています。

 他にも医療通訳者の育成やその在り方についても検討するCHARM。新型コロナ禍においても、困っている人々を助けるために、努力し続けます。

◆その他

CHARM ウェブサイト: コチラ から
支援プログラムの一覧: コチラ から
機関紙『CharmingTimes』: コチラ から