第21回自治体とNGO/NPOの連携推進セミナー報告書をUPしました!
お知らせ
2018.09.01
多文化共生
外国人の多様性を活かし、活躍できる地域社会を目指して
~外国人集住都市・地域の成果や課題から学ぶ~
SDGs目標10:人や国の不平等をなくす 目標11:住み続けられるまちづくり
開催日:平成30年8月3日(金) 13:00~17:20
会場:(一財)自治体国際化協会 大会議室
(東京都千代田区麹町1-7相互半蔵門ビル1階)
参加者数:53名(自治体、地域国際化協会、NGO/NPO、企業、研究者、学生等、関係者)
※クレア職員・当日運営スタッフ含65名
はじめに
(一財)自治体国際化協会 市民国際プラザでは、自治体等とNGO/NPOの連携・協働の促進を図ることで、より多くの連携事業が生まれ、国内外の課題解決に繋がることを期待し、自治体NGO/NPOの連携推進セミナーを継続的に開催しています。
第21回自治体とNGO/NPOの連携推進セミナーでは、日本が多様な国や地域の様々なバックグラウンドを持つ人が生活者として、就労者として、地域社会の一員として暮らすようになり、住民の50人に1人が外国人になりつつある中、全国各地で日本人住民と外国人住民との共生を図り、安全で快適な地域社会を築く取り組みが始まっていることに着目し、多文化共生取組の先達となる外国人集住都市会議会員都市の成果や、各地での多様な担い手による取り組みを知る機会としました。
基調講演 外国人集住都市会議設立からその成果と課題について
本日は、外国人集住都市会議の概要、浜松市における多文化共生の取り組みについてご説明します。外国人集住都市会議設立の背景としては、日本では1980年後半から所謂バブル景気による深刻な労働力不足、ブラジルでは政情不安と雇用環境悪化による日本国籍を持つ人々が日本に出稼ぎに来られ主に工場の生産ラインで働くようになりました。その後、1990年施行の出入国管理及び難民認定法の改正により日系3世とその家族の入国が容易になり、「デカセギ」のはずがやがて外国人市民として長期滞在するようになりました。輸送用機器等の製造業集積地を中心に南米日系人が急増する中、労働、社会保障、教育、外国人登録など様々な問題が生じ、定住化が進む一方、法律や制度が追い付かない状態となりました。言語、コミュニケーションの問題、ゴミ出し、夜中に大音量で音楽を聴くなどの騒音、駐車場など文化習慣の違いからくる地域のトラブル、教育に関しては不登校・不就学の問題、健康保険や社会保険など社会保障の問題、不安定な雇用形態、外国人登録など根本的な法制度の問題があり、浜松市でも一地方自治体の取組では限界となり、国による根本的な法律や制度の整備が必要となったという背景から2001年に外国人集住都市会議が設立されました。
2000年の準備会の後、2001年5月7日に浜松市、磐田市、湖西市、豊橋市、豊田市、四日市市、鈴鹿市、大垣市、可児市、美濃加茂市、太田市、大泉町、飯田市の13市町で外国人集住都市会議が設立されました。第4回会議として10月19日には、東京で関係省庁の関係者に直接出席していただき公開の首長会議を開催し、宣言・提言を行いました。
設立趣旨は、地域に顕在化する様々な諸課題は広範かつ多岐にわたるとともに、就労、教育、医療、社会保障など、法律や制度に起因するものも多いことから、必要に応じて首長会議を開催し、国・県及び関係機関への提言や連携した取り組みを検討していく、こうした諸活動を通じて新しい都市間連携を構築し、今後の我が国の諸都市における国際化に必要不可欠な外国人住民との地域共生の確立を目指していくことです。
2001年に外国人集住都市会議が採択した「地域共生についての浜松宣言」です。
ニューカマーと呼ばれる南米日系人を中心とする外国人住民が多数居住している私たち13都市は、日本人住民と外国人住民との地域共生を強く願うとともに、地域で顕在化しつつある様々な課題の解決に積極的に取り組むことを目的として、この外国人集住都市会議を設立した。
グローバリゼーションや少子高齢化が進展するなかで、今後我が国の多くの都市においても、私たちの都市と同様に、地域共生が重要な課題になろうと認識している。
定住化が進む外国人住民は、同じ地域で共に生活し、地域経済を支える大きな力となっているとともに、多様な文化の共存がもたらす新しい地域文化やまちづくりの重要なパートナーであるとの認識に立ち、すべての住民の総意と協力の基に、安全で快適な地域社会を築く地域共生のためのルールやシステムを確立していかなければならない。
私たち13都市は、今後とも連携を密にして、日本人住民と外国人住民が、互いの文化や価値観に対する理解と尊重を深めるなかで、健全な都市生活に欠かせない権利の尊重と義務の遂行を基本とした真の共生社会の形成を、すべての住民の参加と協働により進めていく。
以上、13都市の総意に基づきここに宣言する。
外国人集住都市会議の歩みについての詳細は、外国人集住都市会議のウェブサイトをご覧ください。一部ご紹介しますと2002年14都市共同アピールを採択、その後会員都市数も最大で29都市となり、同様の課題を抱える自治体が多数あったことの表れであり、外国人との共存に向けた全国的な取組と言えると思います。2015年に浜松市が二巡目の座長都市となり、改めて中央官庁に総合的な外国人住民に係る調整組織の必要性を提言しました。当初座長都市は2年交代でしたが、シンポジウムや会議開催の負担を軽減するため2015年からは1年交代に見直すなど運営面でも改善をしています。現在の会員都市数は15となっています。
主な提言内容と国の対応の例としては「日本語教育の充実」→日本語教育事業、「子どもの教育の支援」→外国人児童生徒のための教員加配措置、「社会保障制度整備」→日伯社会保障協定の締結、「外国人登録制度の改善」→住民基本台帳制度への移行、「防災」→多言語情報提供、「外国人庁の設置の要望」→内閣府定住外国人施策推進室の設置などが挙げられます。そして、外国人集住都市会議として、「課題解決や外国人の支援」という視点のみならず、「外国人の持つ多様性を生かしたまちづくり」という考え方に着目し、2015年に規約に追加しました。
本会議も18年が経過し、一定の成果を得たとの認識を持つ都市もいます。一方で、国の骨太の方針により更なる外国人の受入れ方針が展開される中、引き続き国と連携を取りながら現場である基礎自治体として多文化共生を進めていく必要性があると感じています。
スライド後半の浜松市の取組は参考資料としたいと思います。浜松市は依然としてブラジル人住民数が全国最多の都市であり、定住化が進んでおり、今年外国人の子どもの数が過去最高となっています。日本生まれの外国人の子供の割合も7割を超えています。市では外国人の子どもの教育にも力を入れており「不就学ゼロ作戦事業」という浜松モデルを展開しています。また、2017年にはアジアの都市として初めてインターカルチュラル・シティ・ネットワークに加盟しました。今年はSDGs未来都市に選定されました。今後SDGs未来都市として、3か年の事業計画を立てて推進して行く予定です。
<質疑応答>
1.日本語ボランティアの育成について浜松市はどのような取り組みをしていますか。
回答:外国人学習支援センターという拠点施設において、日本語ボランティア養成講座を行っています。日本語教師のサポーターとしてのスキルを学びます。受講後は、同センターの日本語教室におけるサポートや教育委員会と連携し学校現場に入っていただいたりしています。
2.外国人集住都市会議において外国人の方の声はどのように反映されていたのか、反映されていないのか教えてください。
回答:外国人集住都市会議にはブロックが3つあり担当者レベルの会議を多くて月1~2回行っています。それぞれの自治体が外国人の声、現場を踏まえて施策、国に対しても提言を行っています。浜松市では外国人市民共生審議会という場を設け在住外国人の方に2年の任期で参加してもらい市長に提言書を渡しています。また、浜松国際交流協会の相談窓口でニーズを把握し、当会議の提言などに反映しています。
事例紹介1 グローバル人財サポート浜松の目指す、未来を担う多様な人材の育成。
少子高齢化と言われますが、どのくらい労働力が足りないのでしょうか? グローバルな社会になり、移動や物流が容易で職業選択にも自由があります。日本の企業の7割が労働力不足と認識し、例えば浜松市のIT企業では日本人の採用ではなく優秀な外国人を求めている実態もあります。日本全体で見ても圧倒的に外国人労働者が増えています。
ここで日本における外国人施策の変遷を振り返ってみましょう。1980年代までは特別永住者や中国残留邦人等への対応が中心でした。1980年代からは経済大国として国際交流の推進、姉妹都市や市民レベルでの交流が推進されました。1990年代に入ると入管法が改正され「デカセギ」と呼ばれる南米系外国人の増加に伴う課題への対応が求められました。並行して経済大国として国際的な役割を果たすため開発途上国への支援が推進されました。2000年代からは外国人集住都市会議の設置等、外国人住民施策の体系化が始まり、2006年には総務省による「地域における多文化共生推進プラン」が策定されました。
外国人の受け入れには製造業の発展も関与しており、浜松市でもそのステージが変わるたびに外国人労働者が増加しています。例えば1994年にプレイステーションや携帯電話が発売、2008年にはiPhoneの発売が始まるため更に労働力が必要となりました。2009年リーマンショックでは帰国支援金制度が設けられ、外国人労働者の数は減少したものの技能実習制度を活用して外国人労働者は増えました。2010年には外国人の看護や介護分野の受け入れが開始し、2017年には技能実習制度に介護の職種が追加されます。今年、日系4世の受入れ制度が発表され2019年には「骨太の方針」として新制度が創設される予定です。そこには外国人留学生も含まれます。これまで長期的なスパンでの受入れでは無く、一時的な労働力不足を補うための受入れだったことにより問題が生じているとも言えます。留学生も増えていますが、純粋に日本語学習を目的としているというよりは、アルバイト労働者として来日しているケースも少なくありません。そして日本政府は2025年までには50万人の外国人を受け入れる計画だと言います。大変な数です。
いずれにしても、外国人財は労働力の調整弁であるべきではありません。本日ご参加の皆様には賛同いただけると思いますが、そのことを是非周囲の方々に伝えてください。そして、私たちグローバル人財サポート浜松のような存在を活用してください。
私たちは「人は地域の財産」を基本理念に活動しています。2011年の法人設立当時、既に介護の必要な外国人が浜松に70人いらっしゃいました。外国人の生産人口年齢は減少していても外国人の高齢化が進んでいることがわかりました。労働者として来日したのに認知症等で日本語も理解できず帰国できなくなっている外国人高齢者の方々を母国語で支援する介護人財が必要。その人材を育成する組織が必要であるという強い思いから設立に至りました。そのため本団体は「人々が有する国籍や言葉、宗教、文化などのあらゆる違いを乗り越えて、誰もが安らかに生命の営みができ、活躍できる社会の実現」に取り組んでいます。日本に暮らす外国人の高齢化も進んでいることから、外国人介護人材の育成を行ったり、外国人労働者を対象とした企業内日本語教室を行ったりして、外国人自身が日本でも自己実現を果たすことのできる支援を行なっています。
具体的な事業としては、自動車部品工場での企業内日本語教室、技能実習生の日本語能力試験対策講座、留学生を対象にした日本語講座(就職前支援)、技能実習生・留学生による異文化講座や、在住外国人の就労支援として外国人介護職員初任者研修、大学生による多文化共生推進活動として就学前学校体験教室「ぴよぴよクラス」として、日本生まれでお幼稚園や保育園等の集団生活経験の無い保護者と子どもを対象に、就学時の文化の壁を軽減する取り組みとして、登下校、持ち物、和式トイレ、給食など日本独自の学校生活について事前に学習してもらう機会を提供します。
フィリピンの学校支援、国際交流イベントの企画運営なども行っています。20代前半の外国人労働者と日本の学生の交流イベントとして、インドネシアで再放送されている昔の日本のバラエティ番組の企画を再現し川で遊ぶ企画なども行いました。留学生を支援する学生団体とコラボし、地元のバス会社や高齢者が運営するNPOなどの協力を得て、1週間前の告知にも関わらず120名を集めるという大盛況に終わりました。様々なセクターが集まったことで実現した企画です。私たちはあくまでも裏方であり、機会を創出し後方支援に回ることで「プレイヤー」を育てることが重要だと考えています。あらゆる人々が関わることで、コミュニケーションが生まれ、コミュニケーション能力が育まれます。良好なコミュニケーションは良好な人間関係を築くことにつながると思っています。お互いの顔が見え、対話し、相互に理解することが必要です。
企業の採用担当者に、コミュニケーション能力と日本語能力どちらを重視するか伺うと、大抵コミュニケーション能力と仰います。日本語教育が必要と声高に言われますが本当に日本語教育が必要なのでしょうか? むしろ受入れ側の意識が問題で、それを変えていく必要があると感じています。
外国人労働者を受け入れ活躍してもらうために、ステークホルダーは様々ですが、その真ん中をつなぐ役割、それぞれのセクターをよい塩梅でつなぐ役割が少ないと感じています。日本語教室も人材育成としての日本語教室でなくてはいけないと思います。私たちグローバル人財サポート浜松は、様々な課題に対してノウハウや実績をもとに、受け入れる社会と外国人人財をつないでいます。是非活用していただきたいと思っています。社会総働的に動くことでグローバル人材の育成ができると考えています。
事例紹介2 愛知県豊橋市の多文化共生施策について
本日は豊橋市の定住外国人等就労支援事業の取組をご紹介させていただきますが、まずは本市の概要から簡単にご説明いたします。豊橋市は日本のほぼ真ん中にある城下町、東海道五十三次の宿場町として栄えました。愛知県といえばイメージされるのは名古屋市か、豊田市かと思います。豊橋市で有名なのは路面電車や手筒花などがあります。手筒花火発祥の地と言われており、お祭りに欠かせないものです。三河港は自動車輸出港となっており、国内外の自動車メーカーが集積しています。某海外自動車メーカーの日本本社もあります。豊橋技術科学大学の留学生や造船所をはじめとする様々な事業所で働く外国人も多く暮らしています。県内の住みたい街ランクでも5位です。前出のメーカーの方からは東京にも大阪にも移動しやすく、都会でもなく田舎過ぎずこのままでいて欲しいとのコメントをいただきました。
総人口は377,071人、外国人は16,354人で4.3%、国籍数は71か国。上位はブラジル、フィリピン、中国、韓国・朝鮮の順となっています。外国人人口推移については平成2年入管法改正以降増加し、ピーク時は2万人、平成20年リーマンショック後の帰国支援事業や東日本大震災で年々減少しましたが、平成28年からまた少しずつ増え、最近は技能実習生が増加しています。今後も技能実習生の増加が予想されますし、豊橋技術科学大学はスーパーグローバル大学支援事業に採択されており、留学生3~4倍増を目標としており留学生の増加も予想されます。
次に豊橋市の多文化共生推進計画についてご説明いたします。H21年3月に策定しH25年までの5年間を終え、次のH26年~30年度に入っています。「互いの国籍や文化を認め合い、誰もが安心して元気に暮らせるまちづくり」を基本理念に、4つの基本目標があり、二つの施策方針、目標指標を設定し54事業を実施しています。これからご説明する定住外国人等就労支援事業はH28年度から実施しており、計画の中では就業環境の改善・就業支援施策に含まれ、基本目標は夢を持てる社会づくりです。
豊橋市の外国人意識調査を見ますと定住したいという方が年々増加しており、半数近くが永住希望という結果が出ています。日系ブラジル人の全国一位は浜松市ですが、日系ブラジル人の永住資格取得者はなぜか豊橋市が一位となっています。国籍は多様化しておりブラジル人のみ増加しているのではなくフィリピン、ベトナムなど東南アジアからも増えています。日本は危機的な高齢化社会となっていますが、多くの外国人住民が暮らす中、彼らを地域の一員として捉え、その多様性を地域の財産とし、市の活性化、高齢化社会の打開につなげることが全国的な課題だと思います。
本市の就労支援についてご説明いたします。外国人住民は日本語の読み書きができないことでそもそも広く就労先を見つけるための情報収集が困難です。文化的背景の違いから日本の就労環境がわからないというケースもあります。就業先の選択には賃金の高さが第一条件かもしれませんが、派遣など見た目の単価が高い就労先を選ぶ傾向があります。生涯賃金が派遣よりも高い正職員の方が安定した生活につながるなどの情報を知らない可能性があります。安定した雇用は生活の基盤であり家族の生活の安定や子どもの教育にも影響します。生活に余裕がなければ地域の活動にも参加できないと思われます。つまり、安定した生活基盤を確保し、地域で活躍できる環境を広げていこうという取り組みです。
具体的には、定住外国人等就労支援事業として日本語研修等を提供し、市内企業とマッチングを行っています。2か月程度日本語教育と日本社会でのビジネスマナー研修、履歴書の書き方、日本の習慣の習得、その後、研修修了者と市内企業で面接会を実施し、2~3か月程度有期雇用契約を締結し就労します。その後、労働者の適正を見てもらい正規雇用や無期雇用につなげます。有期雇用契約終了後は市内企業に対して雇用に関わる経費に対し補助金を支払います。本事業は国の地方創生事業として実施しています。相互のミスマッチを防ぎ、安定終了につなげることが目的です。研修期間が短いため、既に一定の日本語力を持っている方が対象となりやすいという反省点もあります。
本事業はブラジル人の自助組織であるNPO法人ABT豊橋ブラジル協会に委託を行っています。本市のブラジル人コミュニティの中心的な役割を果たしており、ブラジル住民のみならず多くの外国人コミュニティとの広範なネットワーク、豊橋のみならず日本中に広がるようなネットワークを持っています。こうしたネットワークや外国の文化的背景を熟知しているNPO法人に参画してもらい、知識や経験を活用することで、参加者の応募から研修、そして雇用開始後も労働者側、企業側者側の取組に対してのきめ細かいケアをお願いできる点が強みです。
H29年の事業実績と成果としては、日本語研修参加者22名、マッチング会参加者21名、参加企業11社、マッチング成立4社7名、成立後正規雇用に至った方は3名3社でした。中小企業では人手不足感が強いのですが、業務の遂行にあたり通訳の配置等の対応が難しいため、日本語がまったく話せない方の採用は難しい状況です。就労に結び付けるためには継続した日本語教育の提供が必要と感じています。また、冒頭でお伝えしたように、見た目の待遇が低いのでそもそも正社員に魅力を感じていない人も多いことが分かりました。
今後の課題としては、日本語研修受講者の日本語能力の一定水準の確保が大事だと思います。次に、マッチング精度の向上です。研修受講者と雇用主の求める働き方に差があると、就労体験を行っても次につながりません。両者の希望をしっかり把握する必要があります。また、選択の幅をより広げるためにも、募集する事業者はできる限り多くの職種から参加してもらう必要もあります。外国人の就労意識は文化的背景が異なることから、例えば土曜日は礼拝があるので製造業の仕事だとシフトで入らなければならないといったマッチングの不具合もありました。日本的就労意識、就労体系も理解していただかないと就労の選択肢の幅も広がりませんし、受け入れ側にも外国人の就労意識を理解いただくことが必要です。
今後の展望としては、NPO法人ABT豊橋ブラジル協会の自主事業として継続できないかと考えています。市内の事業者は雇用需要が大きいことも分かっており、外国人でも一定の日本語能力があれば採用につながりやすいと感じます。継続した日本語教育やライフプランのセミナーを開催しながら就労を希望する外国人の日本語能力の向上に努め、職業紹介を行っていきたいと考えています。そのためには、財源の確保が必要です。事業者からは人手不足を解消するために資金は提供するとのご意見もいただいているので、事業者が求める就労者をNPO法人と協力しながら紹介できればと思っています。具体化するため経済団体、事業者、NPOの連携を強化していきたいと思います。
事例紹介3 将来を見据えた栃木県鹿沼市の多文化共生施策について
これまで登壇された方々は国際課のご所属ですが、私は市民部地位活動支援課に所属し、市民活動推進、協働のまちづくり等の中間支援、自治会活動支援、多文化共生のまちづくり推進、国際交流、そして鹿沼ヒーロー計画というボランティア団体で研究開発本部に所属し絢爛郷土カヌマンというヒーローに「変身する市民」のサポートを行ったり、マラソン大会に参加したり、変身する方がいないときは自分が変身しています。
鹿沼市は宇都宮市の西側県央部に属しており、東京から100キロ圏内です。今日も東京まで1時間40分程度で到着しました。平成28年には鹿沼市がいちご市宣言をしましたが栃木県全体でいちごをPRしています。彫刻屋台の「鹿沼秋祭り」はユネスコ無形文化遺産にも指定されています。鹿沼市の花は五月、新しい名物料理としてそばとニラを合わせた「ニラ蕎麦」があります。
鹿沼市で多文化共生が推進された背景をご説明します。現在外国人住民数は1,097名、率としては1.1%、ベトナム人が最も多く次が中国人です。鹿沼市は外国人比率が低いのになぜ多文化共生なのかと思われるかもしれません。平成23年当時1%の外国人のために対策は不要との意見が多数派でしたが、少ないから問題が表面化しづらいだけで、見えない問題を解決するために政策を取る必要があると訴えた職員の熱意で政策が進められたと聞いています。その後、中国人が3割の状態からわずか5年にベトナム人が逆転するなど外国人の構成が大きく変わるという状況もありました。そのためにも、国籍を問わず対応できるようになる必要があります。また、人事異動で担当者が通常2~3年で変わるため担当セクションだけが担うと担当者が異動すると対応できなくなってしまうので、それを防ぐ意味合いもあります。そして、外国籍市民の問題は日本人でも直面する問題であるというとの考えでプラン策定に至りました。一時的滞在ではなく定住化永住化傾向となり、外国人住民を地域活性化のキーパーソンと捉え、また、外国人が住みやすいまちは誰もが住みやすいまちであるとの考えが背景にあります。
プラン策定にあたっては、行政のみならず外国人の意見も取り入れる必要があることから、まず平成22年に1年かけて外国人市民の意識調査を行いました。そして多文化共生推進計画策定委員会を立ち上げ、ボランティア団体、学識経験者、外国籍市民、議員、公募市民、関連団体をメンバーに全市民一丸となって平成23年に策定に至りました。
多文化共生プランの基本目標は4つ①コミュニケーション(お互いを理解しあうまちづくり」)②生活(安心して暮らせるまちづくり)③多文化共生の地域づくり(ちがいを生かし 学びあうまちづくり)④多文化共生の推進体制整備(「よりそう心を大切にするまちづくり)で、それぞれの達成のための事業の実施主体は関連する団体も参画しており、市役所だけの計画ではない点、そして策定委員会が継続して進行管理を行っている点が特徴です。
平成29年には第2期かぬま多文化共生プランを策定しました。第1期策定から第2期までの間に外国人人口は大きく変わっていませんが、国籍別の構成比、在留資格別の構成比は大きく変わっています。在留資格も永住者が多かったところから技能実習が増えているため、第2期プランは人口構成の変化に合わせて事業を変えています。役目を終えた事業などは精査し、現在は49事業となっています。
基本目標①コミュニケーション:学校や保育園からの文書や、税金に関する行政文書の多言語化を国際交流協会と協力して翻訳を行っています。毎月広報誌を要約し多言語版を5言語で発行しています。10年ボランティア団体と外国人住民が行っています。ごみの捨て方も多言語資料を作成しています。日本語学習支援は、昼と夜に行い、運営は2つのボランティア団体にお願いしており、市としては日本語ボランティア養成講座を行っています。国際交流協会自体が日本語教室を開催もしている他、コミュニティセンターで日本語教育を行っているところもあります。その他に、外国人住民の方に料理教室などの講師をしていただく場も設けています。
基本目標②生活:国際交流協会が生活相談支援のための外国人相談業務を多文化共生コミュニティセンター「コミニーテ」で行っています。当初は市役所の3階の奥深くにありましたが、平成24年に国際交流協会の移転に伴い「まちなか交流プラザ」という誰もが気軽に立ち寄れるパブリックスペースとなったため相談件数が倍増し、相談員一人で年間500件以上受けている状況です。色々な人が訪れる場所なので外国人と日本人市民が触れ合う機会が増えたと思います。
平成28年には「かぬまくらしのガイド多言語版」の動画(6か国語:英語、中国語、ポルトガル語、ベトナム語、スペイン語、日本語)を製作しました。ホームページに掲載し、誰でも観れるようになっています。
多文化共生推進プラン策定委員会が企画運営し、外国人市民への理解を促進するための様々なイベントも実施しています。平成23年から職員対象に多文化共生研修を行っています。1週間連続の講座を5年目の職員を対象に行うものです。その他に、外国籍市民のための施設見学会として給食体験や、市長と語る「かぬま夢談議」などの場の提供も行っています。
今後の課題としては、外国籍市民とかかわる市民が限定的になっているので、どのように広げられるか、直接関わる人々のニーズの把握、例えば消防、医療関係者等、そして、日本語教室がまだまだ少ないので、地域における日本語教室の拡大が必要と考えています。今後は、各地域の自治会の皆さんが日本語教室と外国人住民の母国語を教えてもらうなど相互交流を図ることができると理想的だと思います。そして、より多くの市民に'多文化'に関わってもらいたいと考えています。