第17回自治体とNGO/NPOの連携推進セミナー 開催報告 「効果的な連携/協働とは何か?」 ~選ばれるパートナーとなるために必要なこと~

「効果的な連携/協働とは何か?」
~選ばれるパートナーとなるために必要なこと~

開催日:2015年7月14日(火) 14:30~17:40
会場:(一財)自治体国際化協会 大会議室
参加者数:33名(自治体、地域国際化協会、NGO/NPO、企業等、関係者)

はじめに

今回のセミナーでは、国内外の課題解決に効果をもたらした自治体とNGO/NPOの国際協力分野における成功連携事例から、「連携相手として選ばれるための秘訣とは?」について学ぶことと、参加者同士の交流の場を設け、お互いの理解を深める機会とすることを目的に開催しました。

前半は、NPO組織基盤強化コンサルタントoffice musubime 河合将生氏より「連携/協働の多様なカタチと押さえておきたいポイント」について基調講演いただいたあと、岡山県新庄村産業建設課主幹山田幸紀氏、認定特定非営利活動法人アムダフードプログラム技官 浅田歩氏より、事例発表いただきました。

後半は、河合将生氏の進行のもと、「あなたのお悩みをみんなで解決!」と題して、参加者から事前に募集した参加者同士で話し合いたいことをテーマに、意見交換を行いました。

◆基調講演 「連携/協働の多様なカタチと押さえておきたいポイント」

河合氏

講演者: NPO組織基盤強化コンサルタント
office musubime 河合将生氏


office musubimeでは、NPOの組織づくりや基盤強化の後押しをする活動をしており、そのひとつに団体同士、他セクター間の連携のプラットフォームづくりもされています。

連携・協働とは、共通の課題解決を目的としてお互いの足りない部分を補い合ったり、それぞれの強みを活かして相乗効果が得られたりするようにして始められるわけですが、連携・協働を進める中で、それ自体が目的になってしまいやすいことが課題としてあげられました。そうならないためにも、お互いの課題の明確化と、連携・協働は手段であることを意識する必要があるということ。また、何でも連携・協働しなければならないというわけではないとも話していました。

NGO/NPO、自治体、企業の活動の領域について大まかに整理すると、サービスを提供して対価が発生することに取り組むのが企業であり、既存の市場では対価が発生することは難しいが、社会生活を担保するためにやらなければならないことに取り組むのが自治体であるということ、そして、事業モデルや社会の課題自体がまだ見えていない状態でも、目の前にある解決しなければいけない社会課題にいち早く取り組んでいるのがNGO/NPOの特徴であるとのことです。

連携・協働といっても様々な形があり、相互の情報交換を行うというものから、NGO/NPOが取り組むことに対し自治体が後援名義を出して広報協力をするもの、NGO/NPOが主体的に取り組むものに対して自治体が助成金や場所の提供をするといった行政が協力する形の協働もあれば、NGO/NPOへの委託など、行政が主体的に取り組むものにNGO/NPOの協力を得ながら進めるもの、NGO/NPOと自治体が互いに主体性をもち共同で事業を運営するといった形もあります。

自治体とNGO/NPOが連携/協働するにあたり、それぞれがやるべきこととして、3つずつ挙げられました。

NGO/NPO側は、①信頼される組織であること(信頼される組織となるように努力すること)、②団体として責任の所在を明確にすること、③事業に公益性があることが必要。

対して自治体側は、①協働相手となるNGO/NPOと一緒に考える姿勢、②市民が具体的に提案でき行政が受け止める仕組みを構築すること、③情報公開を積極的に行うことが必要とのことです。そして、相互補完に留まらず、連携/協働を通して相互変革がお互いにあると効果的な連携となるとのことでした。


事例発表 「AMDAと協働する有機農業技術海外相互研修制度」

山田氏

岡山県新庄村 産業建設課 主幹 山田幸紀氏

浅田氏

認定特定非営利活動法人
アムダフードプログラム技官 浅田歩氏


新庄村は、市町村合併の動きである平成の大合併を見送った自治体で、規模として、人口960人、390世帯で、高齢化率40.87%です。
認定特定非営利活動法人アムダは、相互扶助の精神基づき、災害や紛争発生時、医療・保健衛生分野を中心に人道支援を展開しているNGO団体です。

最近では、ネパール地震の被災者に対する支援も行っているとのことです。医療分野で30年活動してきた団体ですが、食べ物は人の健康に関わっているということで、アムダフードプログラムを設立し、アジアの人々の栄養改善、健康増進と農作物による収入向上などを目的に活動しているとのことです。

2011年3月、新庄村にてアジア有機農業連携活動推進条例が制定され、同年4月、アムダがフードプログラムをスタートさせました。2013年に新庄村とアムダが連携協定を結びました。同年5月には、自治体国際化協会の助成金である「自治体国際協力促進事業(モデル事業)」(※)を活用し、海外からの研修生を招聘するなど、連携事業を継続しています。

アムダは、発信力、信頼性の高さ、活動の規模が広がることを期待して新庄村との連携を決めたそうです。新庄村は、アムダのフードプロジェクトが既に進んでいたため、アムダと連携することを選んだとのことでした。自治体は事務的なことを中心に対応し、アムダは海外からの研修生や活動を中心に対応することで役割分担をしたそうです。

連携事業をとおして気づかされたこととして、海外からの研修生を新庄村に受け入れた際、田舎の排他的なところがなく、すぐに受け入れられた村民性に驚いたそうです。また、村民の方が研修生に指導を行うことがあり、村民の方の指導者としての可能性を感じて驚いたとのことでした。

事業を通して感じた難しさには、新庄村からは研修生との言葉の問題という課題があがり、アムダからは村民(農家)の方との情報共有や、海外と日本との環境の違いから同じような農業ができないということがあげられました。課題を乗り越えるために、村民運動会や村のイベントに参加して、関係を構築したそうです。

連携事業を通して、関係者とのつながりがより深まったと振り返っていました。また、地元の子どもたちとの交流も積極的に進めており、国際的な視野を持って育って欲しいと期待しているそうです。また、地方創生のなかで人口増加が叫ばれていますが、村民の方から海外からの移住者を受け入れることに前向きな意見も聞かれており、研修生を受け入れたことの効果のひとつと感じているとのことでした。

◆意見交換 「あなたのお悩みをみんなで解決!」


ファシリテーター:NPO組織基盤強化コンサルタントoffice musubime 河合将生氏

テーマは下記2つから各グループ1つ取り上げました。
<テーマ>

  1. 2020年オリンピック、パラリンピックに向けた多文化共生、国際交流の取組みの企画と進め方
  2. 途上国の生産者と連携した事業の企画と進め方

ワーク1

ワーク2

<進め方>
 グループで、アイデア出しをし、自治体や地域国際化協会、NGO/NPO等の他セクター連携の進め方(キーパーソンの選定、自治体とNPOの役割分担、期待すること、必要な準備・組織など整備、プロセス)を考えて発表しました。

 日本文化やスポーツを取り入れた企画や、フェアトレードを取り込んだ企画を立てるなど、グループごとに特色のある意見が出されました。

 この意見交換を通して、自治体とNGO/NPOがどのように連携事業を進めていくか疑似体験の場となりました。連携するにあたり、共通の目的を作ることに時間が必要で、さらに、具体的にどのような企画にしていくのかを考えるのにも時間がかかります。ファシリテーターの河合氏より、現在のことだけを考えるのではなく、中長期的な視点に立ち、共に将来に投資するといった考えで取り組んでいくことも必要だというコメントがありました。


ワーク4

ワーク2

おわりに

今回は、アットホームな雰囲気で参加者同士の意見交換が進められたことが印象的でした。
市民国際プラザは、今後も地域の国際化に関する活動が推進されることを目的に、参加者の出会いの場や先進事例を紹介する場として、セミナーを開催していきます。
ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。

※「自治体国際協力促進事業(モデル事業)」...自治体国際化協会では、自治体、地域国際化協会が行う国際協力事業の中でも先駆的な役割を果たし、今後自治体が国際協力事業を行う上で、そのノウハウが参考になり得る事業を「モデル事業」として認定し、経費の助成、広報の支援を行っています。
自治体国際化協会の国際協力に関する助成事業はこちらからご覧ください。

https://www.clair.or.jp/j/cooperation/model/index.html