市民国際プラザ20周年記念 令和元年度 地域国際化ステップアップセミナーin札幌 開催報告

市民国際プラザ20周年記念 令和元年度 地域国際化ステップアップセミナーin札幌 開催報告

主 催:一般財団法人自治体国際化協会 市民国際プラザ

運営協力:一般財団法人北海道国際交流センター

日 時:2019年118日(金) 14001730

場 所:札幌エルプラザ 4階大研修室(札幌市北区北8条西3丁目)

参加者:53名(自治体、地域国際化協会、NGONPOJICA、企業、研究者、学生等、関係者) 

※セミナー報告書 全文はこちらからダウンロードください(PDF:640KB)

【プログラム】

 進行:一般財団法人北海道国際交流センター 吉村美悠氏

【開会挨拶】

一般財団法人自治体国際化協会 交流支援部 経済交流課 課長 加藤周幸

14:00-14:30

【話題提供】

「フェアトレード:生産者へのインパクトと市民運動としての広がり」
認定NPO法人シャプラニール=市民による海外協力の会 事務局長 小松豊明氏

14:30-15:00

【事例紹介1

「SDGsをきっかけにどのように"フェアトレードタウンさっぽろ"が誕生したのか」
札幌市環境局 環境都市推進部 環境計画課推進係長 佐竹輝洋氏

15:05-15:35

【事例紹介2

「エシカル消費と地域への広がり~ビジネスと地域活性化の観点から」
株式会社マックスドナ (エシカル・タイム運営) 村上彩子氏

15:35-16:05

【事例紹介3

「参加を後押しする地域の取り組みの『見える化』」
一般財団法人CSOネットワーク 事務局長代理・理事 長谷川雅子氏

16:05-16:15

質疑応答

16:25-17:15 【パネルディスカッション】

「他地域がフェアトレードタウンさっぽろに続くには北海道の事例を通して考える」
ファシリテーター:一般財団法人北海道国際交流センター専務理事 池田誠氏
パネリスト:小松豊明氏、佐竹輝洋氏、村上彩子氏、長谷川雅子氏

17:15-17:20 モデル事業紹介
  一般財団法人自治体国際化協会 交流支援部 経済交流課 佐藤弘子

◆はじめに

開発途上国の生産者との間で「公平・公正な貿易」を行うことを目指してはじまったフェアトレード。市民の力によって日本国内でも大きな広がりをみせ、途上国における持続可能な社会の実現だけでなく、国内の地域づくりにおいても大きな可能性を秘めている。この可能性をさらに活かしていくためにフェアトレードをどう広げていくべきか、自治体や企業、様々なアクターと共にパートナーシップで推進していく方法を模索する。また、全国で5番目のフェアトレードタウンとなった札幌市の事例、ビジネスの観点やどう「見える化」していくかという視点から事例を紹介し、参加者と共に持続可能な未来を考える機会とする。

◆話題提供
「フェアトレード:生産者へのインパクトと市民運動としての広がり」
認定NPO法人シャプラニール=市民による海外協力の会
事務局長 小松豊明氏

小松豊明氏

設立間もない頃から、おそらく日本の中では1番早くフェアトレードに取り組んできた。当時はフェアトレードという言葉もなく、あくまでも海外協力(経済的、社会的に厳しい状況にある人々が作ったものを輸入販売することで、生産者の生活向上を目指す)の一環としてこの活動が始まり、生産者へのインパクトを大切にしてきた。その後日本の中では市民運動として徐々に広がってきたように感じる。シャプラニールはバングラデシュやネパールで活動しており、女性たちが手工芸品作りによって現金収入を得、経済的に生活向上を図るという意義に加え、女性が家庭や地域社会の中で自信や尊厳をとりもどす社会的な変化が重要だと考えている。

セックスワーカーとして働いていた女性が収入を得る手段としてはじめた石鹸づくりで、多くの女性がセックスワーカーの仕事から抜け出すことができた。また、ネパールコーヒーに関しては認証をとっていないが、出稼ぎに頼らざるを得ない地域で新たな生計手段をつくることによるまちおこしの取り組みとなっている。

クラフトリンクの3つの指針
1) 生産者の生活向上
2) パートナー団体と共に活動(バングラデシュ・ネパールで10団体)
3) 共生できる社会の実現=市民参加(学園祭等での委託販売、ボランティアの参加)
クラフトを通じて人々がつながり(リンク)、みんなが笑顔で暮らせる社会を作る。一番身近な海外協力

生産者へのインパクト
生産者の生活向上+尊厳や自身を取り戻す社会の変化をおこす

生産者へのモニタリング
定点観測(5年間)を実施、実際にどれくらい生産者の役にたっているのか生活状況の変化をモニタリングする。

モニタリングから見えてきたこと 
・手工芸品生産による収入への影響は、それだけで世帯の生計を賄っているケースはほとんどない
・生活の変化は若干の向上、または維持されている状況だが、仕事がなくなれば生活に対する影響の少ない教育費や医療費が削られる。(子どもたちの教育への影響)
・対象生産者の3分の2がフェアトレード団体で貯金やローンを借りていることから、強力なセーフティネットになっている。

クラフトリンクの議論と判断
過去数年間、赤字(在庫過多)が続いたことにより、活動の継続について議論と判断を求められた。 検討タスクフォースを立ち上げ、理事会、会員へのアンケートや関係者への聞き取りの結果、これまでの規模での販売活動は終了することを決定したが、商品を絞り込んで継続することとした。  活動の目的は①生産者のエンパワメント②市民参加の手段、開発教育、また札幌の学校に聞き取りをした時にフェアトレードを普及する際にシャプラニールのジュートバックから始めたという意見を聞いて、フェアトレード普及のために継続していく意義を感じた。

フェアトレードの可能性
市民運動としてのフェアトレード、ひとりひとりの「買い物」という行動=何を選ぶか。その選択が社会を変える「投票」と同じ意味を持つこと。そして自分たちの暮らしを見直すきっかけとなること。

フェアトレードタウン運動  
市場志向の動きが強まる一方でフェアトレードを「まちぐるみ」で広めようという草の根のフェアトレードタウン運動が2000年からはじまった。日本のフェアトレードタウンは熊本市、名古屋市、逗子市、浜松市、札幌市の5つの都市がある。世界では2,000を超えている。また、SDGs達成への貢献度も高いことから企業の取り組みも広がっている。

フェアトレードタウン基準
基準1:推進組織の設立と支持層の拡大
基準2:運動の展開と市民の啓発
基準3:地域社会への浸透
基準4:地域活性化への貢献
基準5:地域の店(商業施設)によるフェアトレード産品の幅広い提供
基準6:自治体によるフェアトレードの支持と普及

◆事例発表1
「SDGsをきっかけにどうのようにフェアトレードタウンさっぽろが誕生したか」
札幌市環境局 環境都市推進部 環境計画課 推進係長 佐竹輝洋氏

佐竹輝洋氏

フェアトレードタウンとしての札幌
行政関係者でもあり、フェアトレードタウンさっぽろ戦略会議のメンバーとしての推進者の立場でもあるため両方の立場から話をしたい。まず、札幌市は環境局が策定した第2次札幌市環境基本計画や、2018年に札幌市が「SDGs未来都市」に選定されたこともあり、これまで諸問題に対し個別に対応してきた「環境対策」から、環境・経済・社会に対する波及効果を同時に達成し、環境施策の推進をSDGs達成につなげていくことを目指すこととした。SDGs未来都市として札幌市が目指す将来像「次世代の子どもたちが笑顔で暮らせる持続可能な都市~環境都市・SAPPRO」を掲げ、①低炭素社会、②循環型社会、③自然共生社会の実現に向け、フェアトレードタウンの認定、エシカル消費の定着、道内資源の持続可能な消費を通じた経済循環の取り組みを目標とした。

フェアトレードタウンさっぽろの認定の歴史
フェアトレードタウンさっぽろの認定の歴史としては、市民の活動が先行した。市民の呼びかけで自治体が動き出した経緯がある。札幌では1990年代から市内にフェアトレード専門店が開店し、2000年代にはフェアトレードフェスタが開催されている。2011年には北星学園大学が経済学部の実習活動としてフェアトレード店舗数調査を開始し、2017年にフェアトレードタウンさっぽろ戦略会議が発足した。2018年に市議会で「フェアトレードの理念支持及び普及啓発に関する決議」が採択され、同年、札幌市長が「フェアトレード支持」を表明、2019年に札幌市のフェアトレードタウン認定に至った。

フェアトレードタウン認定後の動き
環境局、国際部、消費生活関係の部署で話しあい、国際部が担当部署となった。各自治体によって担当部署は様々であるが札幌は国際協力というスタンスで行うこととなった。その後、フェアトレードフェスタ、環境広場さっぽろ2019でのブース設置、全国消費者教育学会全国大会フォーラムへの参加など、様々なイベントを通してフェアトレードの普及を図っている。

札幌のSDGsの動き
若い人たちがSDGsに関心をもち活動をし始めている。北海道テレビや吉本興業などとコラボするイベントの開催、SDGs映像コンテストの「クリエイティブアワード」(半分近くの応募がユース)、札幌市内で高校生が運営するこども食堂「なまら食堂」を実施、高校でのフェアトレード商品の販売、高校生によるSDGsゲームの開発など、若い層で関心を集めはじめている。フェアトレードはSDGsの取組みのひとつとしても活動している。

自治体がSDGSに取り組むことのメリット
1.行政目的の明確化...行政が目指す「持続可能な姿」を17のゴールを使って明確化できる
2.世界へ向けた発信の強化...わかりやすく世界に伝えることができる
3.分野を超えた様々なステークホルダーとの連携強化
...分野を超えた新たな連携のきっかけとすることができる
4.市内企業の見本となることで市民のQOLの向上につながる
...SDGsに取り組む企業が増え、その企業が安定した市場でビジネスが可能となる

◆事例発表2
「エシカル消費と地域への広がり~ビジネスと地域活性化の観点から」
株式会社マックスドナ(エシカル・タイム運営)村上 彩子氏

村上 彩子氏

香港で高校、大学、社会人10年を過ごし、その後2年をパリで暮らす。香港でアパレル企業に勤めていた時に沢山の中国の工場に行き、安い賃金で働いている人たちをみた。当時の最低賃金が月に20,000円程度。そのお給料で大丈夫なのかと工場長に問いかけたところ、田舎では1万円以下の給料なので家族にも仕送りもできるし、彼らにとっては嬉しいことと話していた事や、彼らの食事や寮などの生活環境の印象が心に残り、ファッションのきらびやかな世界とその裏側の生産現場の過酷な状況を知った。その後、世界30カ国を訪問し、フェアトレードに興味をもち、もっと消費者に発信をできる事で自分にできる事はないかと考え、エシカル・タイムをオープンした。

株式会社 マックスドナについて
エシカル・スイーツの商品開発...放牧の牛乳、平飼いのたまご、北海道産のてんさい糖を使用したプリンなどのスイーツや規格外商品の活用など社会課題へのメッセージを込めた商品を開発している。今年フェアトレード商品、エコ雑貨、自然食品を扱う店舗「エシカル・タイム」をオープンした。

エシカル・タイムの紹介
「エシカル」とは直訳すると「倫理的な」「道徳的な」という意味だが、欧米などでは「地球環境や人、社会、自然、地産地消、地域などに配慮した」という意味で使われている。サステナブルな毎日を提案するコンセプトショップとしている。
① 自然をまとう心地よさ(フェアトレード、オーガニック、再生可能素材、アップサイクル、リサイクル)
② 地球と体に優しい食生活(エシカルスイーツ、フェアトレード食品、自然食品、オーガニック&北海道産食品)
③ 環境に配慮した暮らし(プラスティックフリー、植物由来の洗剤、間伐材を使用した雑貨)

フェアトレードとは生産者の持続的な生活向上を支える仕組みで身近な国際協力。デザインの良いものを手に取ってみたらそれがフェアトレードだったというようになることを目標に商品をセレクトしている。メッセージを伝える時も、オーガニックや添加物、乳化剤不使用などフェアトレードのチョコレートの美味しさを先に伝え、消費者の方に児童労働のこどもたちの話を補足しながら買い物を楽しんでもらっている。店頭では他にもサステナブルマークを中心に商品を置き、ファッションではオーガニックコットンを大事にしている。何故ならインドのコットン農家では年間24万人が農薬、除草剤の健康被害や借金が原因で自殺をしている。コットンは体に良い素材という消費者のイメージが強いが、とても毒性の高い作物であることを、着用している私たちはほとんど知らない。社会や環境に配慮した洋服を作り、それを私たちが選んで買うことで持続可能な経済社会となる。ファッションと環境問題はとても身近なもので20年以上、アパレル業界にいた自分としては多くの方に知ってもらいたい事実がある。選択するのは自分であるということを忘れずに消費活動をして欲しい。また、ファッション業界から出る大量のごみは、一人当たり年間175kgで、洋服のリサイクル率は30%程で残りは捨てられている。安いものを沢山買う事は悪い事ではないが、シーズン性の高いものや、1年で着れなくなりそうなデザインなどはなるべく控え、ものを大事にする大切さを伝えていきたい。楽しく、かわいく、テンションがあがるものをセレクトとし、それがエシカル商品であればとてもうれしい。そのような商品の買うことができるお店が増えることを目指していきたい。

◆事例発表3
 「参加を後押しする地域の取り組みの『見える化』」
(一財)CSOネットワーク 事務局長代理・理事 長谷川雅子氏  

長谷川雅子氏

(一財)CSOネットワークとは
国内のCSO(Civil Society Organization=市民社会組織)や多様なステークホルダー間の連携を通して、調査研究、情報発信、セミナーやイベント開催、研修等を行っている。ミッションは、『公正で持続可能な社会に向けた価値ある取り組みを見出し、マルチステークホルダーの参画による社会課題解決を促す』。今日は、地域づくりについて、そして地域づくりとフェアトレードのつながりについて話をしたい。

地域との出会いから地域づくりのサポートへ
東日本大震災の後、福島の有機農家の支援をはじめる。福島が抱えている問題には、全国に通じるものがあることに気づき、「持続可能な地域社会とは」をテーマに3年間、国内外13の地域に訪問調査を行なった。
その後、全国にある持続可能な地域づくりの事例を踏まえ、6つの分野、66の指標、主観的満足度などから成る「地域の力診断ツール」を開発した。それを地域ワークショップで使用しチャートで表し可視化。診断ツールの目的は、地域を持続性の観点から整理・把握し取り組みへとつなげること。診断ツールを活用したワークショップを行うことにより、地域住民の気づきにつながり、地域の強みと課題を立場の違う人々と共有することによって新たなアイディアや取り組みへとつながった。 ワークショップの経験から、地域づくりに必要なのは地域の住民の方たちの「参加」、そして参加から生まれる「コミュニティの力」と感じている。

地域コミュニティは地域づくりの基盤
上越市のNPO法人「かみえちご山里ファン倶楽部」の考え方によると、地域には様々な地域づくりの団子(現象)があり(地域再生学校、カフェ・レストラン営業、学童教育、棚田維持、森林公園運営受託など)、その団子(現象)を載せる皿(基盤組織)=地域コミュニティこそが重要である。また、コミュニティはその地域の民俗・文化・歴史に基づくことが大切で、地域性とかけ離れた活動だと一時的なもの、短期的なものになってしまう。地域のビジョンを共有し地域性に根ざした活動をしていくことが大切である。

取り組みの見える化
現在、データの可視化により住民の参加を促す黒部市の取り組みをサポートしている。データの可視化が進んでいるアメリカでのCommunity Indicators Consortium:指標を活用して地域づくりを行っている行政、NPO、研究者達のゆるやかなネットワークを参考にしている。指標ごとの進捗状況や団体の活動・連携をサイトで確認でき、直接関わっていない市民にも状況をわかりやすく伝えることで、参加のきっかけを提供するプログラムなどを参考に、黒部でも取り組みを可視化するウェブサイトを構築中。

フェアトレードと地域づくり
フェアトレードタウンの基準4(コミュニティ活動基準)「地域内の人・組織の連携」は、日本独自のもので、21世紀の世界のフェアトレード運動への日本からのメッセージと言われているが、地域づくりで最も重要なコミュニティの醸成を意味している。地域内の協働の具体例としては、フェアトレードコーヒー「逗子珈琲」の市民主体でによる開発や(逗子市)、様々な業種、団体との協働によるイベントの開催(札幌市等)、また、生産者と消費者の顔の見える関係づくりとして地産地消の推進(垂井)などを挙げることができる。コミュニティづくりは地域性に基づくことが大切であるという点においては、平和運動という歴史の中にフェアトレードを位置付け推進している逗子のフェアトレード宣言が参考になるのではないか。




◆質疑応答

Q:CSOネットワークでは、国際交流基金日米センターから助成基金をもらっているようですが、どんな内容で受けているのでしょうか。今までもそのようなかたちの助成金があったのでしょうか。
A:長谷川(CSOネットワーク)... 国際交流基金日米センター(CGP)から助成金を受けており、その助成金を使って黒部の伴走支援、取り組みの可視化による参加促進を目指したウェブ制作及び米国CIC関係者2名を来年呼んでセミナーを開催する予定。日米センターは日米の交流を主たる目的としており、米国の活動を日本に紹介しその学びによる日本の取り組みを米国にフィードバックするべく事業を進めています。

Q:クラフトリンクを中止すると仕事が変わると思いますが、今まで作ってきた人たちはどうなるのでしょうか。
A:小松(シャプラニール)... 生産者がどうなるか懸念がありましたが、今までも発注額は各パートナー団体にとって受注額全体の4%ほどであり、シャプラニールの発注がなくなっても経営が成り立たなくなるという状況ではない。一方でシャプラニールがテコ入れをしてきたプロジェクト、特に石鹸づくりを行っている生産者グループにおいては、シャプラニールの受注がなくなると生産者の女性たちがセックスワーカーの仕事に戻るしかないという状況がある。こうした商品については発注を続けていく考え。フェアトレードの活動が始まったころは、女性たちが仕事をして収入を得る機会は非常に限定されていたが、現在は女性の社会進出も進み、就業の機会、職業選択の幅が広がっている。

Q:世界には2,000程のフェアトレードタウンがあると言っていましたが、フェアトレードの世界での先進国はどこなのでしょうか。
A: 佐竹(札幌市)...ヨーロッパ、特にドイツが進んでいるようです。イギリスのガースタウンズがフェアトレードタウンの発祥の地ですのでイギリスも先進国といえます。

小松(シャプラニール)...イギリスは売っている食品がすべてフェアトレードのスーパーもあります。企業が取り扱うフェアトレード商品は増えていて市民運動のひとつだと思います。地域のつながりが大切で企業だけではなく市民主導で行く必要があるのではないかと思います。

村上(エシカルタウン)...これはフェアトレード商品、これはそうではないといったようなカテゴリー化しない段階にまでなったらいいなと思います。ヨーロッパのスーパーにはたくさんフェアトレード商品があり、消費者もそれをあまり意識せず自然に購入しているのがいいです。

長谷川(CSOネットワーク)...海外では持続可能な調達を目指して、スウェットショップ(人権や労働環境等に配慮せず衣料品を製造しているメーカー)からは購入しないという行政のネットワークがあります(Sweatfree Purchasing Consortium)。オーガニックコットンによる制服を採用している学校や、フェアトレード商品を積極的に調達している自治体などもあります。

佐竹(札幌市)...先ほどの質問ですが、調べたところドイツには600、イギリスは400のフェアトレードタウンがあるようです。消費者が声をあげていくことが大切で、札幌の戦略会議のメンバーの中には、いつも行くお店でフェアトレード商品はないのですか?と聞き続けていたらフェアトレード商品をその店でお店がおくようになったという例もありますので、消費者の声は重要だと思います。

◆パネルディスカッション
「他地域がフェアトレードタウンさっぽろに続くには北海道の事例を通して考える
 進行:池田 誠(一財)北海道国際交流センター

フェアトレードタウン基準のおさらいの後、参加者のみなさんから悩み相談を受け、4人の"クリニック"の先生(小松氏、佐竹氏、村上氏、長谷川氏)が回答。

相談者① 池田(北海道国際交流センター)
函館は札幌からJRで3時間半、夜景がきれいで教会、五稜郭など文化遺産があり観光地として有名だが、幸福度ランキングでは45市中42位と幸福度が低い街でもある。原因としては一人当たりの所得が低く、過疎地指定にもなっている。フェアトレードで町を活性化したい。25万都市で大小300くらいのフェアトレード食品を置いた店があり、SDGsのイベントやセミナーも少しずつ興味を持つ人が増えてきた。北海道国際交流センターの吉村さんだけが、函館市をフェアトレードタウンにしたいと言っているが、今後どうしていったらいいでしょうか。

回答①長谷川:函館に行きたくなりました。吉村さんがフェアトレードタウンをやりたいというのを軸に、若い人の参加を広げること。若い人が動くと周りの大人も動くようになると思う。若い人がそれぞれのグループをつなぐ役割を担ってほしい

回答②村上:子供たちと一緒にやったらどうでしょう。家族で話し合うことは大切。一番小さいコミュニティで話し合い、こどもたちが主体的にフェアトレードとは何かと知ってもらうしくみを大人が作ることが大切だと思います。フェアトレードの絵本など子供むけのものもあります。

回答③佐竹:やる気のある人が集まり、それに名前をつけるといいかと思います。札幌も有志が集まって会を作り積極的な活動になった。別にフェアトレードにかかわる人だけで作らなくてもいいのでいろんな人がかかわることで広がりができると思います。また自治体によるフェアトレードの支持と普及が大切で自治体職員の協力を得ること、議会を通すことのハードルが高いと思いますが頑張ってください。

回答④小松:仲間を増やすこと、いくら情熱があっても一人ではできません。市民運動であり行政を巻き込むことが大切で、地域づくりの運動でもあるので、例えば有機栽培の推進、障害者の運動などをしている人などを巻き込むと意識しなくてもつながっていくと思います。


相談者② 滝川国際交流協会
滝川は松尾ジンギスカンで有名。人口4万人くらいでフェアトレードショップは1店舗あります。市民の人はフェアトレードをあまり認識しておらず、一般的な人はフェアトレードを敷居が高く感じているのではないかと思っているのですが、どうしたら市民に浸透するでしょうか。

回答①小松:フェアトレードと強調する必要はないと思います。おいしいね、かわいいねと思って買ったものがフェアトレードだった。というようなことを目指すのがいいと思います。

回答②村上:フェアトレード商品を買うために来る意識の高い約2割のお客さん以外の8割の方にいかにリピートにしてもらうようにするか。かわいいパッケージにしたりして値段もそんなに高くない、正当な価値の提供をできたらいいなと思います。

回答③佐竹:どこに何があるかわからないという人が多いのでフェアトレード商品の試食会などのイベントを行って、手っ取り早く食べてもらう。イオン、生協などはどうでしょうか。

回答④長谷川:商品の背景を知ることは意識を変えるきっかけになると思います。ファストファッションの背景を描いた「トゥルーコスト」という映画を大学の授業で紹介したところ大きな反響がありました。まず知ることから広げていくことかと思います。


相談者③ 教育関係者
フェアトレードの店を以前立ち上げたことがあります。大阪のフェアトレードの状況は10年前にトレンドになっていましたが、昨今はあまりフェアトレードの名前が使われることは少なくなったと思いますがどうでしょうか。

回答①長谷川:フェアトレードから始まり、エシカル消費やサプライチェーンマネジメントというより広い概念から、社会的責任や持続可能性を捉えるようになってきていると思います。フェアトレードを入り口に、グローバル企業が現地で作ったものを先進国で売っている現状などをもっと知ってもらうことができると思います。

回答②村上:フェアトレードだから買おうとういうことではなく、フェアトレードだと意識せずに買ってもらうようになるのが理想だと思います。

回答③佐竹:フェアトレードという概念は広がっていると思います。SDGsという言葉がでてきて、持続可能性という観点からフェアトレードが注目され、今は地理の教科書にも載っています。札幌だとマスコミなどに取り上げられています。

回答④小松:おっしゃる通り一時期フェアトレードが顕著に盛り上がりを見せた時期がありました。一方でそれによって排除されたものもあります。例えば、シャプラニールが扱っているコーヒーはフェアトレード認証を受けているわけではありませんが、エシカル商品と呼ぶことはできるでしょう。今は、「フェアトレード」だけではなく様々な類似概念がひろがっていると思います。

進行:最後に、フェアトレードタウンになるためのキーワードを教えて下さい。

回答①長谷川:新たな形の「参加」による草の根からの地域づくり。地域の過疎化が進んでいる中、従来のコミュニティとは違った新たなコミュニティづくりの形を模索していってほしいと思います。

回答②村上:「パートナーシップで目標を達成する」みんなでそれぞれの立場を尊重して話し合って進めていくことで達成できることがあると思います。

回答③佐竹:「まず、フェアトレードタウンになるぞ」と声に出して言うこと。そして仲間を作ること。

回答④小松:ITに強い人を仲間にすること。ITの力は強いと思います。また議員でフェアトレードをやろうという人を仲間にするとよいかと思います。