(一財)港区国際交流協会(東京都港区)(多文化共生 / 生活相談・外国人コミュニティ支援)

「地域に飛び出す市民国際プラザ」 団体活動インタビュー

(一財)港区国際交流協会(東京都港区/2020720ZOOMオンライン)

 東京都・港区において活動する(一財)港区国際交流協会。外国人相談事業や国際交流の推進などを担っています。本日は、平野智子さんから、港区における外国人住民の状況や相談事業の運営体制、また今後の見通しなどについて、お話を伺いました

※コーヒーモーニングの一幕。
 港区で生活する外国人の皆様を支援します。

1. 港区の外国人住民の状況・特徴と協会の事業概要について

 東京都・港区。麻布、赤坂、青山など、東京のなかでも、なにか特別な雰囲気を感じてしまうのは私だけでしょうか。地方から上京し、その場所を初めて訪れた際、若かりし心に、なにかしらの感慨深さを得たことを、今でも思い出します。

 その港区で生活を営む外国住民の方は約19,900人。港区の在住人口が約261,000人とのことですから、割合としては外国籍の方が約7.6%を占めます(20207月時点)。続けて平野さんは「実際にはもっと多くの方が港区に居住する」と述べます。同区には約80の各国在外公館があり、そこで勤務する方々はビザの関係で、この数値には含まれないからです。居住だけでなく、往来する方々の数を含めれば、多くの外国籍の方々がいらっしゃる、そんな国際的な場所というイメージ。おそらく間違いではないでしょう。

 在留資格という観点からみると、一番割合として多いのが「永住権」資格の方々。約4分の1を占めるとのこと。そして、その次が「家族滞在」と「技人国」の資格で滞在される方々。一方で国籍という観点からみると、一番多いのが中国の方で約4,200人。次に多いのが韓国の方で約3,400人。その後は米国及びフィリピンの方々が続くそうです。平野さんは港区にお住いの外国人の方々について「これまでは欧米系出身の方が多かったが、最近はアジア系出身の方が多い。また期間も、短期滞在から中長期滞在へと変化している」と時代の変化を感じています。

 そのようななかで活動する(一財)港区国際交流協会は1992年に設置された団体。日本人と外国人の方々の交流イベント、日本語や英語・中国語の語学講座、通訳派遣や外国人相談事業などのサポート活動に携わります。以下、平野さんから、外国人相談事業と新型コロナの影響に対する平野さんの思いについて、お話を伺いました。

【ご参考】
・(一財)港区国際交流協会ウェブサイトは コチラ から。

2. 外国人相談事業について

 平野さんを始め、港区国際交流協会の皆様が、担当する相談事業は大枠としては次の2つ。1つ目は毎月第4土曜日の朝に開催される「コーヒーモーニング」という取り組み。平野さん曰く「サロンのようなもの」で、国籍に関係なく、どなたでも参加できます。ゴミ問題、隣人との関係、話し相手が欲しいなど「日常のちょっとした悩みごと」を相談する会だそうです。主に相談を受けるのは港区国際交流協会の会員メンバー(当協会の会員数は約400名で、1割から2割程が外国籍の方。他に交流会などのイベント企画や運営にも携わります)。「サロンでは職員は専門的な対応を特にしていないですね」と謙遜する平野さん。目指すものは「地域の仲間たち」が「それぞれの知識や経験」をもとに、相談者からの質問に「気軽に」答えられる環境を構築すること。

 2つ目は外国人相談での対応。ここに訪れる人々の相談内容は本当に様々。軽いものから、重たいものまで、様々な方々の人生の縮図が、そこには現れます。このことは、全国各地の相談窓口でも一緒。港区国際交流協会とて、例外ではありません。

 平野さんは、この業務を円滑に進めるためには「相談者の方々への情報提供と橋渡し」が重要だと考えます。そして平野さんは、相談窓口対応者としてのポイントを、教えてくれました。1つ目は「聞くこと」。当たり前かも知れませんが、聞く姿勢がなければ、誰も相談対応の職員の方に、自分の話をするはずがありません。相談者の言葉が不得手であっても、対応者の姿勢は、伝わります。平野さんの考える2つ目は「受け止めること」。相談者の方の話を聞き、きちんと理解することが大切です。これも、当然かもしれません。ただ、誰かの話を聞けば、そこに対する自分の解釈や意見を自然と持つものです。それはそれで重要なこと。そしてそのご経験を伝授することも。でも、それはまた別の話。話をしたいといらっしゃるのは相談者の方。まずは相談者の方が「自分の話が相手に届いた」と思ってくれる、そんな段階も、対応者には求められます。

 そして3つ目は「寄り添う」こと。相談者の方の問題は、その方が抱える問題を解決するだけで良いとは限りません。例えば「行政からの通知文の中身が分からない」という相談が寄せられた場合、技術的には言語の問題を解決すれば良いのかも知れません。しかし「何が書いてあるのか分からない」、「もしかしたら重要な問題を見落としているのかしれない」という不安とも、相談者の方は戦っています。こうした気持ちに「寄り添う」姿勢もまた、相談対応者には求められると、平野さんは言います。最後の4つ目は「交通整理」。切羽詰まった状況だからこそ、自分で解決できないから、人に話をするわけです。その過程のなかで、頭のなかが十分に整理できず、ぐちゃぐちゃになってしまうのは、誰にだってあることです。相談対応者の方が、相談者の方のお話を、時には順序だてて、11つ丁寧に整理していくことが、結果として相談者の方々の問題の解決に繋がることもあります。急げば回れ。直線の最短距離だけが、最適解とは限らず、また見落としていることも、もしかしたらあるかも知れません。

 平野さんが述べてくれたことは、多文化共生のマインドや考え方への眼差しだけに留まりません。コミュニケーションの問題でもあります。平野さんは、相談業務を通じて、外国住民の方々とコミュニケーションを取る際には「外国文化や慣習に関する知識も必要だが、他者を理解しようとする姿勢や想像力が何よりも重要」だと指摘します。相談者の「話を聞く」、相手の立場を「受け止める」、相手の不安に「寄り添う」、そして「交通整理をする」。平野さんから伺ったお話は、いずれも大切なことのように思えました。

3. 新型コロナの感染拡大と今後の展望について

 最後に平野さんから伺ったお話は「個人的な所感」。新型コロナの感染拡大と、港区国際交流協会の対応ぶりについての説明を受けたあと、ぶしつけながら「今後の課題」についての平野さんのお考えを伺ってみました。

 平野さんにとっての国際交流協会の存在意義とは「人が集まり、人が出会う」場所。港区国際交流協会が設立された1992年当初、インターネットはもちろんのこと、携帯すら普及していませんでした。そのなかでの相互交流システム。平野さんは「画期的で、本当に存在意義があったと思う」と述べます。しかし、今はSNSなどを通じて外国人と日本人などの人々が、自力で出会って交流することができる時代。この流れは今後も加速していきます。そのなかで、「協会として」どのような意義を模索していけば良いのか。平野さんは「まだ答えは分からない」と述べたあと、少し間をあけてから「じっくり掘り下げていきたいと考える。次の時代に繋がる協会の在り方について、諸先輩方や仲間とともに模索していきたい」と答えてくれました。

 もう1つの平野さんの個人的な所感は、これまでの「支援者=日本人」、「受益者=外国人」という枠組みについても再考すること。平野さんは「対面的な関係ではなく『ともに地域を作る』横並び的な関係の構築を目指したい」と力を込めます。そのために平野さんは「港区役所、当協会、地域住民などで協働し、地域のあるべき姿を構想する。そのための事業を育てていきたい」と考えています。

※協会の事務所がある港区国際交流スペース。
 青山一丁目駅から徒歩5分の場所です。