第23回自治体とNGO/NPOの連携推進セミナー 開催報告(オンライン)

コロナ禍で考える 国際協力と地域活性化
~海外とのつながりと学び合いを活かして~

主 催: 一般財団法人自治体国際化協会(市民国際プラザ)
日 時: 20211118 () 14:0016:30
形 式: ZOOMウェビナー
参加者: 125名(自治体、地域国際化協会、NGO/NPO、JICA、企業、研究者、学生等、関係者) 
      講師・クレア職員・当日運営スタッフ

プログラム

1.基調講演 「コロナ禍における国際協力の新たな潮流」
 藤掛 洋子 氏  横浜国立大学都市科学部長・教授

2. 事例紹介1「国内外の自治体とNPOや大学の連携事業が地域にもたらすインパクト
 ~神奈川県湯河原町と野毛坂グローカルの事例~」
 内藤 喜文 氏  湯河原町役場 参事
 奥井 利幸 氏  野毛坂グローカル シニアコンサルト・代表

3. 事例紹介2「地域活性化への熊本県とJICAの挑戦
 ~熊本県、熊本県立大学、JICAによる三者連携事業~」
 田中 耕太郎 氏  熊本県立大学 国際教育交流センター 特任教授、熊本県 国際政策相談役

4. パネルディスカッションとQAセッション
 モデレーター:藤掛 洋子氏  
 パネリスト:内藤 喜文氏、奥井 利幸氏、田中 耕太郎 氏


昨年からの新型コロナの感染拡大によって海外との往来が難しくなる中、国際協力や海外とつながる取り組みもまた困難な状況に置かれています。今回のセミナーでは、コロナ禍で事業を進める2つの事例を通じて、自治体の国際協力、国際化への取り組みを通した地域活性化について、あらためて考える機会としました。

基調講演 「コロナ禍における国際協力の新たな潮流」

藤掛洋子氏

横浜国立大学都市科学部長・教授の藤掛 洋子氏より、研究者としてJICAや自治体と取り組んできたJICA草の根技術協力事業「パラグアイ農村女性生活改善プロジェクト」の経験をもとに、新型コロナウイルス感染症の拡大により同プロジェクト関係者の派遣が停止されたこと、そのためプロジェクトを取り巻く状況が大きく変化したことが話されました。

コロナ禍の中、日本側もパラグアイの農村女性たちも手探りの中、カウンターパート大学の協力も得て、E-learningを活用した遠隔研修を行ったこと、大学生も参加し、オンラインでプロジェクトのロゴコンペを実施したことなど、オンラインを通じたこれまでにない様々な活動や、現地の女性たちがコロナ禍で連帯を模索していった様子が紹介されました。また、これまでの国際協力は直接受益者と間接受益者を対象としたものであったが、オンラインを活用することによりさらなる直接/間接受益者が生まれていることを挙げ、「コロナは国際協力の実践に大きな変革を迫まり、その中で私たちは国際協力の第三の道を確立しつつあるという実感を持っている」と締めくくられました。

事例紹介「国内外の自治体とNPOや大学の連携事業が地域にもたらすインパクト~神奈川県湯河原町と野毛坂グローカルの事例~」

湯河原町役場の内藤喜文参事と、湯河原町と連携する野毛坂グローカルの奥井利幸代表が、屋外の万葉公園から開放的な雰囲気の中の講演となりました。

内藤氏と奥井氏

まず内藤氏より、プロジェクトの説明とこれまでの実績について町の立場から説明されました。この事業によるタイ側の期待は、高齢者デイケア設立やケアワーカーの育成、湯河原町側はインバウンドの増加や介護分野の人材不足解消、地域コミュニティへの参画だそうです。2年前にクレアのモデル事業採択後、コロナで進捗が遅れるものの、昨年4月にタイ人2名を職員として採用したことや、今年7月に同プロジェクトがアジア健康イノベーション賞を受賞したことを報告されました。自治体とNGOの連携について「NGOは行動が自由で、特にコロナ禍において動きの取れない自治体にとって必要な存在」だと述べられたことが印象的でした。

次に奥井氏からは同プロジェクトにおける野毛坂グローカルの役割が説明されました。現地の様々な団体、政府機関、自治体とネットワーキングできることが野毛坂グローカルの強みであり、日本と途上国の連携支援と調整をしながら、双方のまちづくりに寄与していることが示されました。今後も湯河原町とともにタイの自治体のネットワークを広げていくという計画であるという。オンラインで様々な活動を実施する中、Zoomで日本とタイから150名が参加して福祉の研修を開催し、政府省庁の幹部や大学教授、市長などと地域のボランティアなどがフラットに意見交換できる機会になったと、コロナの影響を前向きに受け取られていました。

事例紹介「地域活性化への熊本県とJICAの挑戦~熊本県、熊本県立大学、JICAによる三者連携事業~」

田中耕太郎氏

2019年に協定を結び今後本格的に実施されるこの事業について、田中 耕太郎氏がJICA職員の立場から説明されました。多文化共生、復興・地域おこし、グローバル・グローカル人材活用の3つの領域において、JICAが持つ国際協力の経験に基づくアプローチによって、調査や支援を実施していくという。新型コロナ禍で渡航できず国内待機中の青年海外協力隊の候補生が、昨年7月の豪雨後、渡航前のOJTを兼ねて被災地を中心に復興・地域おこしへの支援を行ったことが話されました。これが高く評価され、来年からはこの取り組みが正式な協力隊の訓練プログラムに採り入れられることになったそうです。また、地域の困りごとと県内外の民間企業のイノベーションをつなげていく「ひごラボ」事業の計画も生まれています。

途上国における豊かさや平和を追求してきたJICAの新たな領域と、熊本県に元々ある豊かさ、今後重要になっていく多文化共生や国際ビジネスなどの新領域の重なる部分で、連携し新たに学び合いをしていきたいという今後の展望で締めくくられました。

パネルディスカッションとQAセッション

藤掛 洋子氏をモデレーターに3人の登壇者が参加して行われました。

途中、内藤氏、奥井氏とともにいらっしゃった東京都市大学教授の沖浦文彦氏が飛び入り参加、発言される場面もあるなど、非常にゆったりとしたオープンな雰囲気の中、参加者からの質問に各パネリストが答える形で進められました。特にコロナ禍の中で自治体が国際協力に取り組む意義や自治体とNGOや大学との連携のコツなど、本セミナーのテーマにふさわしいテーマが多く出され、連携を模索する参加者にとっては重要な示唆を与えるディスカッションとなりました。

また、国際協力の原動力は?との質問に、各パネリストとも、未来の世代に少しでも良いものを残したい、若い人との学びあいや地域との関係構築の意義を挙げていたことが印象的でした。