多文化共生の担い手連携促進研修会を開催しました

その他

2021.03.29

多文化共生の担い手連携促進研修会を開催しました
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          多文化共生の担い手連携促進研修会 「外国人の子育て支援」 報告書 

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質疑応答  :Q&Aはこちら ※当日時間の制約で回答しきれなかった質問の回答も追加でアップしております。

登壇者資料 :事例紹介「西尾市の 多文化共生教育体制について ~多文化ルーム KIBOU の取組~ 」


主 催:一般財団法人自治体国際化協会 市民国際プラザ

日 時:令和2年1217日(木)午前 10001200

形 式:ZOOMウェビナー

参加者:約270名(自治体、地域国際化協会、NGONPO、保育士・保育関係者、企業、大学教員、学生、メディア等) 

申込者:331

(自治体、地域国際化協会、NGONPOJICA、大学教員、学生、企業、医療関係者等) 

<プログラム>

10:00-10:05


挨拶  一般財団法人 自治体国際化協会 理事 鳥田 浩平

10:05-10:15

趣旨説明 特定非営利活動法人多文化共生マネージャー全国協議会 代表理事 土井 佳彦氏

10:15-11:25

基調講演  外国にルーツのある子どもの乳幼児期に必要な支援とは
公益社団法人 全国幼児教育研究協会 顧問 岡上 直子 氏

11:25-12:00

事例紹介 「西尾市の 多文化共生教育体制について
~多文化ルーム KIBOU の取組~ 」      
                     
西尾市教育委員会事務局 学校教育課  主幹  鈴木 貴之氏
 
多文化ルーム
KIBOU 社会福祉法人せんねん村 
多文化共生教育コーディネーター 川上 貴美恵氏

※同日午後に第二部としてワークショップを開催

 

報告書全編

主旨説明

特定非営利活動法人多文化共生マネージャー全国協議会 代表理事 土井 佳彦氏

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 本日コーディネーターを務めます土井です。自治体国際化協会(以下クレア)では、2017年より多文化共生の担い手の連携促進を従来以上に強化するため、全国6ブロックに分かれて活動している地域国際化協会の北海道と東北、九州と沖縄、東海と北陸それぞれを分けて合計9のブロックから、多文化共生に取り組んでいる方を検討会の委員に任命することとなりました。検討会において、地域国際化協会に限らず、多文化共生に取り組む担い手の方々との連携を強化するための話し合いを開始。議論の結果、2018年度から2019年度は「全国の担い手との連携強化の取り組み」、「災害時の取り組み」という2つをテーマとし、本日のような「担い手連携促進研修会」および「災害時研修」が開始されました。2020年度、2021年度のテーマは「外国人の子育て」と「日本語教育」となり、検討会において子育てをテーマにしたセミナー開催が決定され、本日の研修開催の運びとなっています。

基調講演
「外国にルーツのある子どもの乳幼児期に必要な支援とは」

公益社団法人 全国幼児教育研究協会 顧問 岡上 直子氏

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 私からは外国人の子育てにおける乳幼児期に必要な支援についてお話いたします。

外国籍の幼児の現状

 文部科学省の調査では、日本語指導が必要な児童生徒はこの10年で1.4倍と増加傾向にあることが分かります。外国籍の幼児数については「幼稚園」「保育園」「認定こども園」、家庭保育等に分かれており、包括的な統計数値が取れないので児童生徒数の推移から推測しています。都道府県別の在席状況では、愛知県、神奈川県、東京都、大阪府とそれ以外の数に大きく開きがあり「外国籍の子ども」と言った場合も、一律に議論できないことも認識ください。平成28年度に、全国幼児教育研究協会が文部科学省の委託研究として行った「幼児期における国際理解の基盤を培う教育の在り方に関する調査研究」を紹介します。集住地域、都市型分散地域、少数地域として8都府県に絞って調査を行いました。

外国にルーツのある乳幼児を取り巻く環境の現状と、乳幼児期からの言語発達支援の重要性

 外国にルーツのある乳幼児を取り巻く環境を考えると、子どもは家族を介して家族の母語やコミュニティと、日本の園を通じて日本語や日本の園文化、小学校、地域コミュニティに触れるなど、様々な文化、コミュニティに関わりながら暮らします。外国にルーツのある子どもは複数言語の中で生活しますが、言語の習得と思考力の発達は関連しており、言語発達の著しい乳幼児期の言語環境の整備が重要です。家庭の中で、父母の母語が違う場合もあり、園に入れば日本語に触れながら生活するので、この時期の過ごし方しだいでバイリンガル、トリリンガル、又はダブルリミテッドになってしまう可能性もあります。カナダの言語学者カミンズによると、二つの言語を習得する場合も共通の部分があり、第一言語をしっかり学んでいれば、次の言語に活用できるとされています。つまり。第一言語が豊かに育てるための支援が重要であることを理解してください。また、幼児期は、生活言語を習得し、児童期にかけては論理的思考、抽象概念の理解など学習言語を習得していきます。乳幼児期の適切な言語発達の環境整備がとても重要です。

 子どもの母語発達は保護者の考え方が影響します。就学前の外国籍の乳幼児をもつ家庭が抱える課題として、就園しない場合には孤立化の傾向があり、地域社会の支えが必要です。日本語中心の園生活で保護者が困惑するケースもあるので、受入れる園や保育者の多文化共生社会に対する意識の醸成、言語環境の整備の必要性、継承語教育・バイリンガル教育についての正しい知識・情報の獲得が必要です。保護者の母語保持への意識も異なるため、家庭で使う言語の把握と共有も大事です。 

 乳幼児の言語環境の整備における配慮事項としては以下が挙げられます―家庭での母語使用の状況、母国への帰国予定の有無、滞日期間の見通し、体験的な入園なのか、長期的な日本滞在か、子どものアイデンティティをどう育てていくのか、母語、継承語、園生活における日本語使用、園と家庭との連携・協力、地域に母語を話す隣人・子どもや親せき等の有無、同民族コミュニティの接触度、言語によるかかわりと文化体験の両面の支援とそのバランス等です。

 発達の特性を踏まえた乳幼児期の教育の基本についてここで触れておきたいと思います。乳幼児期にふさわしい生活の展開、遊びを通しての総合的な指導、一人一人の発達の特性に応じた指導が大原則です。乳幼児期の特性として、身体諸機能に著しい発達が見られ、具体的な操作、発達しつつある機能を使うことで諸機能が発達、洗練化されます。遊びを通して興味をもったことに、意欲的に繰り返しの中で習得します。また、発達の最近接領域と言いますが、子どもの現在の発達水準と、大人が少し援助すれば子どもが自分でできる水準との間の領域があります。現在の水準とかけ離れた高い水準を目指すのではなく、ちょっと手助けをすれば子どもが自分でできるようになる領域に働きかけることが大切だということです。

外国にルーツのある子どもの就園の状況と課題

 さて、前掲の文部科学省の調査研究で保育者アンケートから捉えられた入園当初の外国籍の幼児の様子としては、ことばの理解度、応答の課題、集団行動・態度への課題、文化社会的違いから来る園生活への課題、食生活の違いから来る課題などが抽出されました。外国人幼児への指導上実際に配慮している事項としては、約9割の園が、日本語をゆっくり、はっきり話す、近くに座る、手をつなぐ等の個別の働き掛け、園全体で当該幼児に配慮する体制づくりなどを行っています。外国人幼児の困り感の解消に関しては、入園当初気になった姿は徐々に見られなくなり、約半数が入園から半年くらいすると見られなくなっており、外国人幼児が学級の中で安定してくるのは、概ね入園から半年後くらいと言えます。

 保護者の気になる行動としては、園からの連絡事項に関する個別対応の必要性、外国人保護者の思いや個別性、保護者同士の関わりが挙げられました。保護者に対する配慮事項については、幼児の様子を個別に伝える、日本語をゆっくり、はっきり話す等が、9割を超えており、担任だけに任せず、園全体で保護者にかかわり、園全体でかかわる配慮も9割に近いという結果でした。

 学級の他の幼児の育ち、多文化共生の園生活の成果としては、外国人幼児と関わる他の幼児の姿を見ると、言葉が分からなくても遊びの中で自然に交わっていたり、外国人幼児が困っていると助けようとする姿が見られる割合がいずれも9割を超えています。言葉は通じなくても、一緒に遊ぶ中で互いに思いを通じ合わせ、援助性が発揮されているといえました。

外国にルーツのある子どもが就園する園での支援状況

 外国人幼児が在籍している幼稚園への支援として多いのは、母語を話せる通訳等による支援で、支援の提供者は、通訳等は保護者の割合が高く、言語などを学ぶ場や機会の提供は行政の割合が高くなりました。幼稚園等が必要と考える支援の優先順位を見ると、園行事(健康診断、保護者会等)や必要な時に応じた通訳の派遣、外国人幼児等の指導に関わる補助者の優先順位が高いという結果でした。

 市区町村教育委員会対象の質問紙調査の回答数は、397市区町村教育委員会のうち217教育委員会(回収率54.7%)、外国人幼児の在園状況について、幼稚園では、集住地域は都市型分散地域より把握率が高く、幼稚園、保育所、認定こども園の把握率を比べると、保育所の把握率が高いという結果でした。

 外国人幼児や家庭への支援の実施率としては、子育てに関する情報(広報誌、HP等)を多言語で紹介しているが都市型分散地域、集住地域の順、就園や子育てについて外国人専用の相談窓口を設置している、就園に関する情報案内(園の概要、入園手続きの資料等)を多言語で作成している、通訳や翻訳等の手助けをするNPO法人等の支援団体を紹介している、がいずれも集住地域で高いという結果でした。

 外国人幼児が在籍する幼稚園等への支援の実施率としては、「幼稚園、保育園、認定こども園教員を対象に、外国の文化、習慣等を学ぶ研修を実施している」が都市型分散地域の幼稚園で集住地域を上回った以外は、「外国人幼児等に対する指導の参考になる資料(指導資料、外国語会話集等)を作成している」「園や保育所の要請に応じて外国人幼児等に対応するための教員等の加配を実施している」「園や保育所の要請に応じてボランティア等を派遣している」「園や保育所の配布物を要請に 応じて多言語に翻訳している」いずれも、集住地域、都市型分散地域、少数地域の順となりました。

今後の課題

 今後の課題としては、外国籍の乳幼児期の教育の充実と小学校への就学への流れの円滑化へ向けて、①就学前のことばの学習・就学に向けての相談窓口の拡充、②外国籍の幼児、保護者自身の持つ文化的アイデンティティ・言語・価値の尊重、その国の文化や風習に関心を寄せていく必要性、③母語教育の支援も忘れずないこと―継承言語・文化・生活様式の尊重、④外国人幼児一人一人の困り感に的確に対応するコミュニケーションツールの開発、⑤保護者とのコミュニケーションに関する支援の充実と適切な活用、⑥外国の言葉や文化等を学ぶ研修の機会の充実園生活の仕方を知ったり教師とのコミュニケーションをとれるようにする、⑦保護者同士の支え合いを促していく。ただし、個人情報に関わることなど、子どものことについて話す際には、伝え方に気を付けていくことが必要です。⑧多言語のガイドブックを活用する、等が挙げられます。

 私からは以上となります。ありがとうございました。

<質疑応答>

Q:幼稚園が必要とする支援が、自治体や国際交流協会に届いていないと感じます。一方、自治体や国際交流協会も、園の困りごとを把握できていないと思います。現場と支援者の関係、連携をどう図ればよいですか?
A:支援の場があることを自分たちが知ること、探すことが大切だと思います。誰かが教えてくれることを待っていても支援は来ません。私は公立の幼稚園に勤務していたので、困ったことは教育委員会に問合せましたが、教育委員会も知らないこともあるので探してもらうなど、積極的なアクションが必要だと思います。

Q:最後のスライドの多言語のガイドブックについて教えてください。
・愛知教育大の資料があります
http://www.resource-room.aichi-edu.ac.jp/kyozai_sonota_gaidobook.html

・文部科学省の「かすたねっと」にも、様々な情報が掲載されているので検索してみてください。
https://casta-net.mext.go.jp/

・「外国人幼児等の受入れにおける配慮について」も作成しました。
https://www.mext.go.jp/content/20200306-mext_youji-000005738_01.pdf


Q:園児がイスラム教徒でハラール食以外食べられない場合はお弁当持参でよいですか? ラマダーンの時期はどうすればよいです
A:お弁当を持参してもらうのがよいと思います。ラマダーンについてはできること、できないことをお互い話し合いながら回答することが大切だと思います。

Q:データに出てきた「外国人」は「外国籍者」ですか?
A:はい、文部科学省の調査は外国籍です。

Q:保護者が日本の学校や園に入れたくない場合は強く勧めない方がよいですか?
A:義務ではないため理由にもよりますが、一番の課題は就学時です。突然小学校に入っても言葉が分からず躓くのを避けるため、日本の文化や言語を把握していることは重要だと思います。

Q:園で母語教育しているところはありますか? 母語教育は家庭の役割でしょうか?
A:インターナショナルスクールなど、外国人を受け入れる園で母語教育をしていることは考えられますが、公立の園では聞いたことがありません。

Q:外国にルーツのある保育士の就業状況の調査はされていますか?
A:事例はあると思いますが、調査については把握していません。

★時間の制約で、当日回答できなかった質問への回答は以下の通りです。

Q:自治体で外国人子育てサークルを作り支援を考えましたが、それぞれの子育て文化の違い、集まる人々の言語がすべて違うこと、時間通りに集まれない、参加が自由で参加しなくなるなど支援の難しさに悩んでいます。多言語HPや子育てガイドを作成していますが、その他の自治体の支援として何をすべきか悩んでいます。
A:自治体がいろいろ支援を考えてくださっていることは、とてもありがたいと思います。

 ご質問の自治体は多言語HPや子育てガイドを作成しているとのこと。そこまでできているならば、自治体の中に、居住されている外国人親子が「どのような困難を感じているか」に関する情報をもっている部署があるのではないでしょうか? その状況が全く分かりませんので、私は一般的なことしか言えませんが、外国人の子育て親子の文化や言語、生活リズムに合わせた取組を考えてください。

①子育て中の親子は、子どもの生活リズムで動いています。就学前の親子が時間通りに行動することは、難しいと考えた方がよいと思います。

 例えば、親子でサークルに参加しようと思ってドアに鍵を掛けたとたんに、子どもが「おしっこ~」と言い、鍵を開けて慌ててトイレを済ませて出かけるのが遅れることはよくあることです。「なんで早く言わないの!」などと、叱られている間におもらししてしまえばさらに遅くなります。会場までのバス等に乗り遅れることもあるでしょう。時間通りに行きたくても、時間通りには動けないことも多いのです。こういう親子の状況を受け止めて支援策を考えていく必要があるのではないでしょうか。「時間通りに行動することを求められれば」、きっと外国人親子は来なくなる(来られなくなる)と思います。どのような時間帯なら来やすいか考えたり、途中からでも参加OKとしたりするなど、ゆとりのある支援の取組を考えていただけるとよいと思います。

②集まる人の言語が全て違えば、サークルに参加して親子はコミュニケーションができずに困ってしまいそうですが、それに対してどのような支援をしているのでしょうか。

 外国人親子は、集まる場所があれば安心し喜ぶわけではないと思います。そこに行けば「困ったことが解決できる」「話を聞いてもらえる」「楽しかった」「また、行って〇〇をしたい」と思うような体験ができれば繰り返し参加するようになると思います。

 多様な文化・言語の外国人に対してまとめていっぺんに支援するというより、それぞれの外国人親子の困りごとに寄り添い、困りごとに応じる方策を考えていただけるとよいと思います。自治体の中で、外国人の生活状況について具体的な情報をもっている人、団体、NPO等を探して、どのようなことに困っているのか具体的に把握して取組を考えてみてください。


Q:外国人と交流したい地域の人は多いと思いますが、多文化共生の意識を持つ人は少ないと思います。多文化共生の意識を日本人の保護者や児童、地域の人に向けていただくにはどのようなアプローチが必要でしょうか?
A:質問者が幼稚園・保育所等の方であれば、日本人であろうと外国人であろうと、遊びもけんかも含めて、「人が好き」「言葉や思いが相手に伝わると嬉しい、楽しい」と感じる体験や、思いが伝わる喜び、伝え合う喜びをたっぷりと味わわせることを大切にと答えます。多文化共生って、互いの存在を認め合うことだと思うからです。

保護者や児童、地域の人々は、理屈(言葉)では知っている方も多いと思います。しかし、多文化共生の意識をもっていただくためには、言葉(理屈)で「互いを認め合おう」とか「認めなければいけない」からという「理解」だけではなく、一人一人が実感する場面が必要だと思います。交流の中で、そういう場面があったら見逃さずに問いかけたり気付きにつなげたりする働き掛けが大切です。「認め合うって、こういうことなんだ」と実感できる場面につなげられるように、支援者自身が気付き働きかけることが重要だと思います。


Q:受け入れる園(幼稚園、保育園、認定こども園等)の言語の環境整備とありますが、どのように整備していくのでしょうか。
A:いくつか例を挙げます。

① 在籍している外国人幼児のロッカーや靴箱などの名札は、平仮名とその国の文字を併記する(書けない場合は、保護者に書いてもらうとよいと思います)。

② 簡単な挨拶は、外国人幼児の母語で言ったり日本語で言ったりして、互いに覚えて使ってみようとする姿勢を示す。  通じたら喜ぶ気持ちを伝える。

③ 学級の遊びや活動の中で、外国人幼児の母語や文化について話題にしたり、その国の遊びを取り入れたりする。

④ 母語を大切にしている姿勢を、幼児や保護者に示す。

⑤ 日本語を使うようになって来たら、伝わる喜びを共有する。

⑥ 大事なことが伝わらない時には、通訳等の配置や配置がない場合には伝えられる人を確認しておく。

⑦ 保育室やホールなどの掲示板に、外国人幼児の国の言葉や文化を紹介する。日本の文化と一緒に紹介するなど、工夫する。

  など、相手の状況に応じて工夫することが大切です。



事例紹介
「西尾市の 多文化共生教育体制について ~多文化ルーム KIBOU の取組~ 」

西尾市教育委員会事務局 学校教育課 主幹 鈴木貴之氏

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 西尾市における事例を紹介します。私からは行政として多文化共生の取り組みのシステムについて、川上からは多文化ルームKIBOUで行われている西尾市の就学前指導についてお話します。

 西尾市は、日本で外国人児童生徒が最多の愛知県の西三河エリアにあり人口は約17万人、トヨタ自動車の関連企業が多く外国人が集住しています。外国人は人口の約6%1万人で、ブラジル、ベトナム、フィリピンがトップ3、県下で6番目です。文科省の調査では日本語指導が必要な児童生徒は534人、全体の3.6%ですが、実際にはもっと多いと思われます。外国籍園児数は400人を超え約8%です。

 西尾市で多文化共生教育事業を開始した経緯をお話します。2007年の市の人口は合併前で約10万人、外国人住民は約5%、園児の約3%が外国人でした。私は当時、教育委員会子ども課に在籍しており、日系ブラジル人が多かったため、主にポルトガル語通訳者による翻訳、通訳の対応をしていました。しかし、問題の根が深く、日本の園に通い日本の学校に就学しても適応が難しく、保護者の意識等の要因もあって中学校の段階でドロップアウトしたり、高校進学につながらないケースも多々も見られたことから、国籍にかかわらず将来のキャリア形成につながる環境整備の必要性を感じ、保育園・幼稚園を所管する子ども課で多文化子育て支援事業を企画しました。

 多文化子育て支援事業は、外国人の多い私保育園に外国人児童コーディネーターを配置し、外国人育児家庭に対するアンケートや育児相談・就学説明会・本語教室、就学前児童に対するプレスクール(初期指導教室)などを実施するもので2008年度スタートを目指しました。プレスクールの計画に際しては、外国人児童生徒数が全国一の愛知県が、2006年度から県下で実施支援していたプレスクールの取組実践を参考にしました。最大の難関はコーディネーター探しで、人材派遣会社の通訳者雇を模索しましたが、教育的支援ができる人材発掘ができず絶望的だった中、人伝でJICA隊員として2年間、ブラジルで日本語指導し帰国したばかりの性を奇跡的に採できました。それが川上先生です。

 2008年はリーマン・ショックによる世界⾦融危機に伴う国内の雇用悪化から外国人の生活困窮者が多数発生しました。そのため外国にルーツを持つ子どもの不就園・不就学の急増が非常に危惧されたことから、市の教育委員会では、岐阜県可児市のばら教室や知⽴市の早期適応教室の視察を踏まえて2009年度から2つの多文化共生教育支援事業を追加スタートしました。厚労省の就労支援関係の補助⾦を活用した外国にルーツを持つ子どもに対する就学支援事業(現在の多文化ルームKIBOU」)で、外国籍児童生徒に対する不就園・不就学調査を実施して就園就学のための学習支援を⾏う教室を市⺠団体(現在は社会福祉法人)に業務委託するものです。

 プレクラスの早期適応教室(現在の⽇本語初期指導教室カラフル」は、来日直後の児童生徒に3か月間、基礎的な⽇本語や生活習慣を指導する教室として小学校内に設置しました。指導者には県の語学(ポルトガル語)相談員をヘッドハンティングして開設にこぎつけました。2011年度に⻄尾市が3町と合併したときの機構改革により、子ども課は市⻑部局へ移管されましたが、3事業は教育委員会所管のままとして残されました。3事業はさまざまな紆余曲折はあったものの、2019年度まで、KIBOUの川上先生と、カラフルの菊池先生の頑張りで継続されてきました。2020年度からは更に体制を一新し、一番の変化は日本語初期指導教室カラフルへの組織替え、また、KIBOUでのベトナム語母語教室や、ZOOMによる学習支援の実施です。また、多文化共生教育アドバイザー、学校現場への対話側アセスメントツールのDLAの導入、多言語翻訳通訳の業務の見直し、離島でのマルチカルチャーキャンプの企画も行いました。

 また、西尾市の外国人児童生徒教育の取組みを令和2年広報にしお12月号で特集しました。是非、お読みください。

https://www.catapoke.com/viewer/?open=bf510&lang=ja


多文化ルームKIBOU 社会福祉法人せんねん村 
多文化共生教育コーディネーター 川上 貴美恵氏

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 ここからは、多文化ルームKIBOUの取り組みということで、乳幼児期に関わる取り組みを実践報告します。KIBOU5才から18才までの日本語の学習、不就園、不就学の子どもの支援を行っています。西尾市教育委員会では2008年度から、保育園・幼稚園に在園または不就園の外国にルーツを持つ就学前児童に対して、小学校に円滑に就学できるように言語面を中心に指導を行うプレスクールを、多文化子育て支援事業として社会福祉法人に業務委託して実施してきました。また、2009年度から、外国にルーツを持つ子どものうち不就学・不就園状態である子どもに対して、就学・登校・学習支援などの多文化共生教育の取り組みを、外国にルーツを持つ子どもの就学支援事業として、社会福祉法人(2013年度までは市民団体)に業務委託し、「多文化ルームKIBOU」で実施してきました。2020年度からプレスクール(多文化子育て支援事業)を外国にルーツを持つ子どもの就学支援事業と一体化して、外国にルーツを持つ子ども(5才~18)に対する教育支援につながる様々な取り組みを、社会福祉法人に業務委託して多文化ルームKIBOUで実施しています。「アクティにしお」という公共施設の3階が拠点です。

 6才の子どものいる親は就学にあたり漠然とした不安があります。保護者が日本語が分からないケース、子どもの日本語習得度、学費、学校の開始時期、必要な準備物、登校の方法、親の仕事の継続可否等々。こうした漠然とした無数の不安解消のため、プレスクールと就学説明会(学校見学と児童クラブ案内同日開催)を実施します。⻄尾市教育委員会のプレスクールは就学前の外国につながる子どもに日本語指導を中心とした初期指導をおこなうプログラムです。2020年度はコロナ禍にあり、3つのプレスクールを行っています。1つめは、「在園年長児のプレスクール」です。場所は子どもの所属園(平日の昼間、週1回、保育時間内)で、指導員が子どもの園を巡回訪問します。2つめは、就園していない5才児のプレスクール。場所は、多文化ルームKIBOU(火曜~木曜、午前9時半~12時)で、保護者が送迎します。3つめは、週末のおやこプレスクールです。これは、オンラインクラスでZoomアプリを使って自宅から参加してもらいます。週1回、1時間。202010月開始で、月1KIBOUにて教材の受け渡しと面談をするという流れです。

就園していない5才児のプレスクールについて

 転居が多い、下の子の出産を控えている、親に持病がある、経済的に難しい、親戚が母国からきており園に行く必要が無い等の理由で未就園の子どもがいます。彼らが活動の流れを体験し、日本語を使う練習をします。(身支度、あいさつ、今日やることの確認、カレンダー、天気、体操、絵本などを使って文字や数の学習、おやつ体験、工作や外遊び、片付け、おわりの挨拶)自宅にいる子どもは、生活のリズムが乱れ、運動不足になりがちで、遊びの体験が不十分、和風の味付けに馴染みが無い等の課題がある場合が多いので、子どもらしく元気に過ごしながら、日本語表現やひらがなでの名前書きなどの練習をします。

在園年⻑児のプレスクール

給食後の自由遊びの時間に対象児に対して実施します。

 9月に対象候補者をリストアップし、園長会で説明、11月語彙調査(巡回訪問)、12月から プレスクール(巡回訪問)、2月は小学校教諭見学月間として直接見学いただき情報交換などを実施、3月プレスクール終了、アンケート実施。在園児は、給食や外遊びなどの経験があり、毎日の生活リズムも整っていることが多いのが特徴です。今年度は就園期間の短い子ども限定で開催しています。在園児へは、絵本や楽しい活動を通して、ひらがなや数量に親しめるようにしています。独自に作成したワークブックを宿題として持ち帰り、保護者と共に取り組めるようにしています。

週末のおやこプレスクール

 9月、外国にルーツをもつ子どもの家庭へ、おやこプレスクールを案内・申込受付し、封筒に1か月分の教材を入れて渡しています。教材受取、子どもとの面談はKIBOUにて、毎月1回開催しています。10月開始、11月現在38組参加、3クラス開催3月終了予定です。

 プレスクールの効果としては、子どもの日本語学習がすすみ、名前が書けるようになり、ひらがなを覚え、できることが増え自信がつき、積極的に学習活動に参加できるようになります。また、保護者を力づけることができます。小学校についての情報提供、プレスクールを通じた自宅学習の促進、また、就学先へ情報提供に繋がります。その他の成果としては、子どものプレスクール参加態度、家庭の状況、協力的かどうかなどの姿勢が見え、家庭内の使用言語や連絡方法などが把握できます。

 多⾔語による就学説明会・小学校⾒学・児童クラブ案内を行い、児童クラブがどのようなところが写真付きで案内し、学用品を机に並べて、自由に触ってもらい、名前や値段の情報提供を行っていますが、今年度はコロナ禍で開催できず、就学案内の動画をYouTube配信しました。(動画は「多文化ルームKIBOU」のチャンネルで視聴可能です)

 最後に、大切にしている視点としては、幼少期は問題が表面化しにくいですが、人生の基礎を培うとても大切な時期です。外国にルーツのある子どもたちは発達を促す経験が少なくなりがちで、多言語環境で言語発達を促す機会が不十分な場合があり、学習言語が習得できず低学歴、結果としてキャリア形成がしづらいという課題があります。初期のプレスクールに通っていた子どもたちが親になるとき、負のサイクルに陥らないようにと考えています。

 子どもの小学校に行くのが楽しみという当たり前を当たり前に実現するためにこれからも力を注いでいきたいと思っています。

<質疑応答>

Q:プレスクールは何名で運営していますか?
A:担当は川上1人ですが、状況に合わせて5~6人で活動しています。 

Q:KIBOU10人で運営していますか?
A:はい

Q:素晴らしい活動であるが予算規模はどのくらいですか?
A:市の年間6,000万円程度です。

Q:プレスクールの参加費用かかりますか?
A:参加費は無料です。

Q:子どもの発達について不安に思う場合の相談専門機関はありますか? 学校から、ことばの問題で対応ができないという相談はありますか?
A:教育委員会には専門家である特別支援教育アドバイザー(2人)が配置されています。小中学校の発達の問題のある児童生徒と保護者の支援を行っています。外国人の家庭の場合は、日本語初期指導の多言語の支援員が児童相談所に同行して発達検査を行ったり、という対応を行っていると聞いています。また、日本語の問題なのか、発達の遅れなのか? 園でも悩む場合があるので、語彙調査の結果生活の様子をお伝えしています。

Q:語彙調査についての資料は見られますか? 
A:愛知県プレスクール実施マニュアルを参考にすると100問語彙テストが掲載されています。理想は日本語と母語両方の側面からのテストです。

Q:不就学の子どもの把握はどうしていますか
A:家庭訪問をして就学調査をしています。就学を迷っている家庭がかなりあるので、通訳者と共に何度も訪問しています。


Q
:西尾市が発行する「がっこうのことば」は他地域で使ってもよいですか?
A:使用して構わないですが、西尾市の独特の言葉が含まれていますのでご了承ください。

西尾市教育委員会ウェブサイト→

https://www.city.nishio.aichi.jp/index.cfm/8,70120,90,402,html

多文化ルームKIBOUブログ→

https://tabunkakibou.wordpress.com/resource/