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平成28年度地域国際化ステップアップセミナー in 富山 開催報告

多文化共生の新しい視点、「ダイバーシティ」は地方創生への第一歩!

〜 多様性を活かしたまちづくりが、地域に新たな力を生む 〜

 

開催日:20161125日(金)13001710

会場:サンシップとやま 701号室

参加者数:44名(自治体、地域国際化協会、NGONPO、企業等、関係者)

 

はじめに
 

日本における在住外国人の数が増える昨今、多文化共生社会における外国人支援の幅も多岐にわたり複雑化する傾向が見受けられる。

一方で、ライフスタイルや社会のニーズも多様化し、「多様な背景を持つメンバーで構成される組織はしなやかで強い」という考え方に立ち、地域や組織の構成員が多様になるよう、積極的な戦略を持つことに注目が集まっている。

ダイバーシティとは「多様性」という意味の英語で、人種、性別、年齢、信仰などにこだわらず多様な人材を生かし、最大限の能力を発揮させよう、という考え方である。

一人ひとりの違いや異なる個性が尊重され、多様な人たちが対等に関わり合いながらより良い社会を目指すということは、国連が掲げる「持続可能な開発目標SDGs」の基盤である「誰も取り残さない(Leaving No One Behind)」という考えに通じるものである。

従来の多文化共生施策では、多文化共生を外国人支援という単一的な視点だけでとらえていたが、これからは「多様性を活かしたまちづくり」という包摂的な新しい視点へのシフトが求められている。

外国人に限らず、地域にいる多様な一人ひとりが共に社会づくりに参画することで、誰もが住みやすい町として地域活性化が促進され、ひいては地域のブランド化にもつながることが期待されている。

本セミナーでは「ダイバーシティ」の土壌作りとして、多様な人々との共生に取組む事により新たに発揮される力や可能性について学び、そして地域コミュニティの活性化を促し「地域創生」には何が必要か、を参加者と共に考えることを目的とする。

 

◆基調講演:「ダイバーシティとは(概論)」

講師:一般財団法人ダイバーシティ研究所 代表理事 田村 太郎 氏

 

2007年にダイバーシティ研究所を設立したが、ダイバーシティ研究所の活動内容を振り返ると活動の半分は災害時支援、復興支援に注力しているというのが実態である。これは何故かと言えば、ダイバーシティのない状態のリスクが、一番起こりやすいのが災害時だからである。

なぜ、災害時にリスクが露呈するかと言えば、災害時支援には迅速に対応することが最優先される。その結果、スピード、ボリューム、効率性ばかりが求められ、細かなニーズはないがしろにされてしまう。また「みんなで頑張っているのだから、ちょっとしたことは我慢しなければ」という無言の圧力がかかり、困りごとを言い出しにくい環境が形成されてしまう。

 

多様性が配慮されないことのリスクは災害時に分かりやすく露呈するわけだが、本当は日常も同じことが起きている。例えば職場において、みんな一緒に頑張っているという雰囲気が強いと、自分が困っていることを言い出しにくい。こうした状況は「職場のリスク」であり、事故やミスに繋がりやすい。働きやすい職場や住みやすい地域とは「自分がこういうことで困っている」ということが言いやすい環境であると言える。


ダイバーシティの意味は「多様性」であるが、「多様性」という言葉だけではなかなか伝わりにくい。「様々な「ちがい」を受け入れ、互いに対等な関係を築こうとしながら、全体として調和が取れている状態」をもってはじめてダイバーシティといえる。「ダイバーシティ&インクルージョン」という言い方をすることもあるが、インクルージョンとは排除しない、包摂するという意味であり、ダイバーシティをこのように定義したのであれば排除もない。全体として調和があるというところまで踏み込んだところがダイバーシティである。

また「ちがい」と言えば属性にばかり着目し、表面から見えない部分にはなかなか意識が及ばない。表面からは見えにくい価値観や性的嗜好、識字力、経済的状況(貧困など)に着目し、配慮する必要がある。

 

そして、今なぜダイバーシティに取り組まなければならないのかというと、それは私たちの社会が「気候変動」と「人口変動」という2つのビッグイシューに直面しているからに他ならない。とくに日本においては「人口変動」の方が「気候変動」よりも早く危機が到来し、社会的インパクトは遥かに大きいものである。

世界の人口推移とその予測を見ていくと、日本は世界最速で人口減少を迎える社会である。大量の高齢者を抱えた時代がやってくるので、必然的に高齢者になっても働ける社会や、女性も働きやすい社会づくり、また一定の若い世代に日本以外の国から来てもらうということも必要である。これらを全て試みても、日本社会が保たれるかどうかの瀬戸際であるということを認識して欲しい。

 

  “多様性がない社会は滅びる”という仮説を立て、いろいろ調べてみたがその通りになる現実が差し迫ってきている。世界に目を転じてみると少子高齢化を迎えているのは日本だけではなく、特に東アジアは人の受け入れに積極的になっている。日本も受け入れが必要だとの認識はあるものの、例えばEPAによる介護人材の受け入れなどでは条件が厳し過ぎる為に、日本へ行くよりも北米や中東などへ行った方がいいという状況が発生してしまっている。先程言った通り、日本は世界最速で人口減少を迎える為、最も真剣に人口変動に対応をしなくてはならない。 

ダイバーシティへの取り組みがされない場合のリスクは、災害時の被害や避難所での生活に如実に表れる。東日本大震災では、高齢者や障がい者が圧倒的に高い割合で命を失っている。災害の多い日本では、長年様々な対処方法が検討され整備されてきたが、人口変動に直面している現在の日本社会に適合していない。災害が起きたら消防団など、若くて力のある男性が助けに来てくれると思われているが、平日の日中に災害が起きると、どの地域でも若いマンパワーは地元に戻るまでに相当の時間がかかる。都心部では若者も多くいると安心している自治体もあるが、地方の自治体の方がこの事態の深刻さに気付いていることが多く、女性や高齢者や外国人を取り込んで、持続的な地域社会を構築していこうという動きは活発である。

また、阪神・淡路大震災では「災害関連死」が日本で初めて認められた。「災害関連死」が認められるには詳細な報告をしなければならないため状況が細かく記録されているが、長期に避難所で避難生活を送ることを全く想定されていないことによって健康を害し、ストレスが高じて死に至った様子がよくわかる。

仮設住宅に生活の場が移ると、中高年の男性のリスクが非常に高くなることもわかっている。仮設住宅の集会場の集まりには高齢の女性は参加するが、年配の男性はあまり参加しない為、周囲の目から漏れ孤独死するケースが数多く報告されている。

 

 東日本大震災では復旧や復興に時間がかかっている印象があるが、それは日本の建設業従事者が1997年をピークに減少の一途を辿っており、工事を担う労働者の不足と高齢化が進んでいることが背景にある。そこで、女性の建設業従業者を増やそうと現場の工夫を行う施工会社も出てきている。

このような事態は日本が初めて直面するわけではない。1970年代にヨーロッパでも人口減少や高齢化が予測されたが、主に北部ヨーロッパ諸国では社会を変革することで人口変動による影響を緩和することに成果を上げている。介護や子育てを地域で行うことによって女性の就業率を上げ、一人当たりの所得を上げて出生数を回復させることで、人口の減少を緩やかにし、誰もが安心して生活できる社会を作りつつある。

世界的に見ると、男女格差の少ない国と、人口が増加している国には一定の相関関係がみられ、男女格差が大きい国では人口減少が著しいという現象がみられる。男女格差指数で低い国のイタリア、ギリシャ、スロバキア、ハンガリーなどはEU諸国の中でも「破綻懸念」国家であり、日本も残念ながら同じ位置にある。男女格差が大きいという事は、社会そのものの持続可能性に極めて大きな影響があるということである。

 

世界的な潮流の1つとしてまずISOによるSRの国際標準化がある。7つの原則と7つの中核主題をみていくと、これらのほとんどがダイバーシティに関連するものだと言える。もう1つは「SDGs(持続可能な開発目標)」で2015年9月に国連総会で採択された17の目標と169のターゲットで構成されている。こちらもダイバーシティ関連のものが多く、例えば目標10「格差の是正」はダイバーシティそのものである。

 「国際標準だから、うちのような中小企業は関係ないのではないか」という感想を持つ人もいるかもしれないが、例えばヨーロッパで事業を行う際にはこのようなことにきちんと取組んでいることを証明しなければならない。また、皆さんの取引先の企業がヨーロッパで事業をしているのであればそれらに対応することを求められることになるだろう。
 ISO26000SDGsも「マルチステークホルダーエンゲージメント」という手法で課題解決をしていくことをうたっている。企業だけでいろいろな課題を解決することはできないし、自治体が単独で行うのも無理がある。様々なステークホルダー(利害関係者)で解決にあたり責任を分かち合うという考え方である



    

まとめとして、これまで「ダイバーシティを推進しないことのリスク」をいくつか話してきたが、このままでは地域も職場も崩壊してしまうことは間違いない。人口が減少していくなか、社会の持続可能性について真剣に考えていかなければならない状況にある。誰もが排除されない社会を作るということは、排除が生み出す損失を回避するということでもある。持続可能なまちづくりという視点で、ダイバーシティを捉え直して頂きたい。



◆基調講演:「ダイバーシティがもたらすメリット」

講師:富山県氷見市 総務部参事(ヒューマン・リソース・マネージャー) 内片 素子 氏

 

自身のバックボーンとして、P&Gで働いている際に発生した阪神淡路大震災が大きく影響している。

当時は化粧品のマーケティングの担当をしており、「女性が美しくなることは良いこと」とは思いながら震災に直面し、いったいこの仕事にどういう意味があるのかと疑問を持ち続けた。その後、出産、子育てや転職を経験する中、東日本大震災が起き、自分の心の中で神戸の地震はまだ終わっていないとあらためて認識し、それきっかけにNPOへ転職した。そしてNPOで働きながら社会的価値も、経済的価値もどちらも追求したいと思っていたところ縁あって、自治体での仕事の誘いがあった際に、自治体こそそれぞれの価値を同時追求するものだと感じ、現在の氷見市での自治体業務に邁進している。

 

一般に企業において、ダイバーシティとは女性の管理職の登用や、子育てに配慮した働きやすさに取り組むものなど福利厚生的な側面が強調されるが、ダイバーシティとはそのようなものではない。

ダイバーシティとは多様な人材を活かして企業が勝ち抜いていく戦略に他ならない。企業のダイバーシティとは「ちがい」に価値を置き、何ができる人なのかを評価し、「ちがい」に関わらず全社員が組織に平等に参画し、能力を最大限に発揮できるようにすることである。

P&Gに入社した当時の印象的な出来事として、販売促進会議に出席し意見を求められたことがある。「君は入社したばかりで何もわからないかもしれない。しかし何も知らない君は消費者に最も近い目線を持っていて、それこそが君の持っている価値である」と言われたことがあった。「入社したばかりの私にしか為し得ない価値がある」という気付きが、私のダイバーシティの原点の1つである。
 そして、もう1つはトレーニングの中で、「人は何故コミュニケーションを行うのかというと、それは一人ひとりが違うからであり、違うからこそコミュニケーションが必要になる。そして違うからこそ衝突するが、そのときこそ原点に戻ることが大切で、原点とは目的のことである。同じ目的を持っていれば、そこへ到達するためのビジネスの手段はいくらでもあり、そのベストを探す為にいくらでもディスカッションをすれば良い」と、徹底的にトレーニングを受けたことである。こうして私はダイバーシティのコアエッセンスをP&Gで学んできたと言える。

                

 さて、今、なぜダイバーシティが求められているかだが、人口減少と年齢構成の変動が大きな要因であることは間違いない。これからは多様な人材を採用していくことが重要になってくる。何故かと言えば、社会はどんどん変化していき、消費者も多様な価値観を持っているからである。また労働力も少ない為、多様な人達が色々な力を出し合うことが、企業が生き抜くには重要なこととなる。

 

企業での取組みとして、P&Gでは「戦略とビジョン」として「社員一人ひとりの「違い」を、組織の中で活かしていく、つまり個々の違いを尊重して、それが活かされる組織、そして一人ひとりが、その持つ能力を最大限発揮できる組織を目指す」とはっきり言っており、ダイバーシティは組織構築に関わる施策の1つであると言える。またこれらの施策の全てが相乗効果をもたらして初めて、社員一人ひとりが力を発揮できる組織となることを目指している。また仕組みとしてのダイバーシティは、時短やフレックス制度などは他の企業でもあるが、P&Gではダイバーシティトレーニングに取り組んでいるところが大きい。

導入されている具体的な取り組みの1つとして、一人ひとりが一番力を発揮できる働き方を常に考える「柔軟な働き方」がある。一例を紹介すると、ある社員の配偶者が転勤となり別居婚になったが、その上司の提案で結果的に子育てがしやすい国へ転勤となり、その後もその時の状況に応じて働き続けることが出来ている。女性だからということではなく、どの様な勤務体系がその社員が最も力を発揮できる働き方か、どの様なサポートをすればその社員が結果を」だせるのかを考えるということである。その結果P&Gでは、女性管理職が3割以上を占めるようになった。

 また、男性社員も交え、「子育てとは何か」を社員同士が話し合う意見交換の場で「ダイバーシティフォーラム」がある。話し合うことによって、「今日は子供が熱を出したから帰ります」など、言い出しにくい困りごとを気軽に話ができる風土ができてくる。仕組みだけではなくその様な風土ということが大切である。また、「ワーク・アンド・デベロップメント・プラン」制度は、自分のキャリアの中でどの様な制度をとりたいのかを上司と話し合い、キャリアプランをたてられるようになっている。

 

IBMでの取組みだが、経営戦略の1つとして「市場競争におけるIBMの強みの源泉は、思想、文化、人種、性別や出身地などさまざまな違いを持つ人材の多様性(ワークフォース・ダイバーシティー)であり、これこそがIBM自身とお客様とに多様な発想をもたらす基盤となっている」と言っている。

ダイバーシティには、「デモグラフィ型」のダイバーシティと「タスク型」のダイバーシティがあるが、IBMは「デモグラフィ型」をとっている。この「デモグラフィ型」は、軸の間に「組織の断層」と呼ばれる対立を生みやすくなる。例えば「女性」という軸をとると女性差別ではないか、女性優遇ではないかとの議論が出る為、「デモグラフィ型」のダイバーシティは戦略的には失敗してしまうことが多い。

IBMでは、「女性」、「障がい者」、「LGBT」、「マルチカルチャー」、「ワークライフバランス」など、多様な軸を入れたダイバーシティに取り組んでいるが、このように軸を入れるときにはなるべく多くの軸を入れることがポイントとなる。

一方で、「タスク型」というのは、「この様なタスクをして欲しいから、この様な人を増やしたい」という、結果を出すために様々な能力を求めていく手法である。手段としての多様な能力、個々人の中にあるダイバーシティを求める手法であり、戦略としては成功しやすいということがわかってきている。

 

最後に、P&Gが実施したダイバーシティに関する意識調査から見えてきたことを紹介したい。

自身が勤務している会社にダイバーシティの制度があるかないかを調査したところ、全体の2/3ほどで制度や施策があると答えている。しかしながら、勤務先において、ダイバーシティへの理解や取組みが進んでいるかと聞いたところ、制度があるかないかに関わらず、理解や取組みが「進んでいない」という回答が半数を占める結果となった。すなわち制度があるないに関わらずダイバーシティが進んでいない実態が明らかになった。
 これは、企業文化や風土にまだまだダイバーシティが浸透しておらず、意識形成が進んでいないという結果に他ならない。では、企業文化や企業風土を育てていくにはどうしたらいいのかと言えば、組織として制度や仕組みを整えていくことはもちろん、管理職自身の中にダイバーシティを落とし込み、ダイバーシティ・マネジメントを実践していくことがあげられる。そして、全社員が一人ひとりの「ちがい」を明らかにし、相手を尊重し、ダイバーシティを尊重するという方向性を企業全体に適合させていくことである。人はどうしても「男だから」とか「あなたは長女だから」と無意識の先入観を持ってしまっている。こうした先入観を排し、一人ひとりが「ちがい」を自覚し、相手の「ちがい」を受け入れる人間になることが、これからの社会に必要なことである

   

 

  

ここまでは企業の話であったが、まちづくりや行政において、ダイバーシティがどの様にに使えるかだが、実は行政というのはダイバーシティそのものであると思っている。行政は基本的に全体の奉仕者で「あなただけできません」とは言えず、周りにいる様々な人に対して施策を行っていく必要がある。海外と比較すると日本は行政サービスがカバーしている範囲が広い。しかしこれからは民間やNPOと協働しながら、いままで提供してきたサービスをどこまで多様な人たちに提供していけるかが課題であり、自分はその点で行政にダイバーシティが必要ではないかと思う。



◆パネルディスカッション 「多様性(ダイバーシティ)を生かしたまちづくりと地方創生とは」

◇パネリストの活動紹介@ 

三重県四日市市笹川地区協議会 教育文化部長 関島 博 氏

 

三重県四日市市の笹川地区は、南米系にルーツを持つ外国人住民が多く居住している集住都市で、ピーク時は人口の23.6%が外国人であった。その後減少していき、現在15%程度、人口1万人程度の小さな町である。こうした地域の笹川地区協議会にて、自分は教育文化部でまちづくり協議会の仕事を中心に活動している。

前述の通り、ピーク時には4人に1人が外国人という状況であったが、外国人居住者がまちづくりになかなか関わってくれない状況があった。長く日本に住んでいるにも関わらずひと言も日本語を話すことができない外国人も多く、日本人と外国人の交流はなかった。しかし地域活動の担い手が高齢化してきて、後継者が不足しているということは地域の住民も理解していたが、地域のルールを崩してまで外国人を新しい力として受け入れるには至らないでいた。

そこで外国人への地域活動への参加を促す為にポルトガル語のチラシを作り、祭りへの参加を呼びかけたところ、祭りに出店したいというブラジル人の声が上がった。当初は日本人住民の批判もあり、最初から何もかも上手くはいかなかったが、徐々にルールが守られるようになり、5年経った今ではブラジル人の出店の方が多いくらいである。特に若い人が多く、準備や後片付けに関してはこちらは指示をするだけで済んでおり、大変助かっている。

 祭りの参加から始まったが、現在では防災やまちづくりの活動にも大いに関わってくれるようになっている、というのが今の笹川地区の現状である

 


◇パネリストの活動紹介A

特定非営利活動法人大学コンソーシアムおおいた 事務局長代理 太神(おおが) みどり 氏

 

大分県の取り組みとして「留学生県大分」をキャッチフレーズに、留学生が持つパワーを地域活動に活かそうというという取組みをしている。地域が力をつけるために留学生の力を借りて、イノベーションの起こる地域になることを目指している。

大学コンソーシアムおおいたは留学生支援に特化した組織となっており、きっかけは立命館アジア太平洋大学の誘致である。留学生の利益だけでなく留学生がいることによって地域も利益を得る為に、当初から産学官が連携していることも特徴の1つである。その事業内容は入口から出口まで幅広くサポートしており、特に留学生の地域活動への参加や、地域住民との交流を大事にしている。いざ就職をするといった際に、この様な経験が留学生の力になり、地域住民への理解促進や、地域とのつながりが進んでいく。また地域の国際化に関するプログラムも行っている。いかに色々な国の人と交流することがコミュニケーション能力の育成に役立つかを実感しており、積極的に地域に留学生を送り込んでいる。

 大分市の地域性や、サポートが手厚いこともあり、大分市に残りたいと考える留学生も増えてきている。しかし大分市は中小企業が多く、就職先が少ない為、ビジネスを起こすにもやり方がわからないといったことがあった。そこで、この秋に「大分留学生ビジネスセンター」を設立した。「留学生」をキーワードとして積極的にビジネスをしてもらいたい為、留学生の起業支援や、留学生と連携したビジネスの支援、出会いの場の提供をしている。これから留学生がイノベーションを起こして活躍し、ビジネスの上で地域に還元してくれるようになることを期待している。


 



◇パネリストの活動紹介B

NPO法人東九条まちづくりサポートセンター(まめもやし) 事務局長/

京都外国人高齢者障害者生活支援ネットワーク・モア事務局 村木 美都子(みとこ)  氏

 

1989年から、在日コリアン多住地域である京都市の東九条地域に関わる。

「まめもやし」では、現在6割がコリアン、5割が独居の市営住宅で開放的なコミュニティづくりを行ってきた。団地の自治会と一緒にコミュニティ支援活動として、住民なら誰でも参加できる会食会も開催している。また、京都外国人高齢者障害者生活支援ネットワーク・モアでは、コリアンだけでなく、外国にルーツを持つ高齢者や障がい者に対して、簡単な日本語や母国語による生活支援を行っている。京都の住民は非常に保守的だが、コリアンなど、生活や文化、考え方の違いを日本人向けに伝える活動も行っており、市民に対して寸劇で在日コリアンの歴史的背景や生活の「ちがい」を紹介する活動を行っている。

この様な活動の中で、ハンメ(ばあちゃん)オモニ(お母さん)たちから、地域コミュニティづくりには、「隠さない」オープンな関係性が大切だと気付かされた。団地の取り組みでは、障がいや認知症など、外からは見えにくい違いをみんなが知り、隠さずにオープンにしていくことで、付き合い方や、必要な支援も見えてくる。

また住民ネットワークの力を借りることも大切である。例えば、ある精神障がいを持つ男性が、共用部のコンセントを使って炊飯していたという話を住民から聞いた。そこで調べてみると金銭管理ができていないことが判明し、この男性には生活の支援が必要なことが判った。この様に事情が判れば支援の手も入りやすい。また反対に、コリアンのハンメ(ばあちゃん)が子育て世代のお母さんの手助けをしてくれるような住民ネットワークも出来上がっている。


自己主張が強いことがコリアンの特徴の1つとして挙げられる。例えば、施設には入りたくないなど、自分のやりたくないことは嫌だとはっきり言える人たちがいる。その様なコリアンをありのままに受け止め、支援をするために、地域住民の力を借りながら行っている。また、お互いを知るために母国語で思いを聞きながら、お互いに徹底的に話し合うことが必要で、そうすることによって何が違うのか、どこに問題があるのかが見えてくる。そして、何よりも言葉が通じなくても分かり合おうとする気持ちがあれば、思いが通じ合えるということを教わった。





◇パネルディスカッション 「多様性(ダイバーシティ)を生かしたまちづくりと地方創生とは」

【ファシリテーター】 NGOダイバーシティとやま 副代表理事 柴垣 禎 氏

【パネリスト】

一般財団法人ダイバーシティ研究所 代表理事 田村 太郎 氏

富山県氷見市 総務部参事(ヒューマン・リソース・マネージャー) 内片 素子氏

三重県四日市市笹川地区協議会 教育文化部長 関島 博 氏

特定非営利活動法人大学コンソーシアムおおいた 事務局長代理 太神(おおが) みどり 氏

NPO法人東九条まちづくりサポートセンター(まめもやし) 事務局長/

京都外国人高齢者障害者生活支援ネットワーク・モア事務局 村木 美都子(みとこ)  氏

 

【ファシリテーター】さっそく、今回のセミナーのキーワード、「ダイバーシティ」と「地方創生」をそれぞれの地域で実践している皆さんに、これからの日本社会、地域、地区でどう考えていけばいいのかをまず伺いたい。

 

【関島氏】地域は高齢化を迎えていて人口が減っており、かろうじて外国人が地域の人口を支えてくれているという状況であるので、私の提案としては第一に学校の生徒を使うことである

田村氏の話にもあったが、災害が昼間に発生すると高齢者と中学生しかおらず、まさに「ダイバーシティをやらないことのリスク」がある状態である。そこで2年前から授業で「地域活動」という視点と「多文化防災」という視点で各学年で授業を行っている。今ではサークル活動に発展し、地域の防災訓練に積極的に関わり、中学生が支援者として地域で活躍している。また最近では小学6年生も予備軍として参加してくれている。学校が避難所に設営されることが多いので、子どもたちが一番避難所のことを分かっており、避難所の掃除などを担ってくれている。またそういった訓練のなかでの指導を通じて、上手く学校と地域の連携が出来ている状態にある。

その多文化共生サークルが今年は更に発展し、企画・運営などの事業進行に関っている。その結果、自分がやることがなくなった。これからは若い人たちがまちづくりに関わってくれることを期待して活動している。

 

【ファシリテーター】「自分がやることがなくなった」ということがポイントで、支援者がなんとかしなくてはという思いで関わり続けても、その人がいなくなってしまったらどうなるか。地域の人たちが自分達で考えて、主体性を持って活動に取り組み始めると、その地域の中で回っていくものである。その仕組みを関島氏は作って、働きかけた事例だった。「やることがなくなった」という状態が我々の目指す1つの方向性であると思う。

 

【太神氏】「地方創生」という言葉について、大分市は地方都市なので中学校から大学まで一緒で、従業員の大半ガが半径数キロ以内に住んでいる中小企業が多く、何か新しい商品を開発するときにその様な環境だと新しい発想が生まれないことが多い。だからこそ留学生が持つ新しい考えや、若者が勉強してきた新しい知識をどんどん取り入れていくことで、地域に新しいイノベーションが起きるということを期待しており、地域の活力になればと思っている。

 「ダイバーシティ」については、留学生が生きやすい、活躍しやすい、また留学生が「大分が良い」といってくれることこそ、誰もが住みやすい地域づくりとなり、それが「ダイバーシティ」に繋がっていると思っている。

【ファシリテーター】同じ様な人間ばかりで新しいことを考えても、なかなか突破力がない。やはり新しい人、新しい視点、新しい考え方を持っている人が入ってこないと、地域に発展性がない。「地方創生」に必要な大きな視点を持つ人にどうやって地域に関わってもらうかは重要で、大学生・留学生をうまく活用した地域のあり方を目指すこともやり方の1つである。

 

【村木氏】私の地域で一番問題なのは、住んでいる日本人が非常に保守的な考えであることだ。コリアンだけでなく、みんなが集える祭をコリアンが中心になって1992年から毎年1回行っているが、自治連合会会長には23年間参加してもらえなかった。毎年粘り強く訴え続けた結果やっと参加してくれるようになった。実際はその様な地道な活動の積み重ねで、汗水流すことが必要ではないかと思っている。地道にやっていけば必ず成果は出るし、乗り越えたときに大きな力となる。その結果、今はコリアンや支援者と自治体が繋がり始めている。

 コリアンの持つ色々なものを受け入れられるオープン性や、はっきりと物を言う所などは日本人にはない。これからは色々な人が地域に共生するだろう。病気の人、認知症の人なども増える中で、オープンな考え方や、ありのままで良いという気持ちの持ちようが役に立つと思うし、日本人が学ぶべきことだと思っている。


【ファシリテーター】保守的になってしまっている地域に風穴を開けるには、オープンな関係性ができている、コリアンのコミュニティがあるということは大きな力である。誰か一人がオープンな関係性を築こうとしても簡単にできるものではない。既にオープンな関係性ができているコミュニティを見て、日本人もこの様なやり方もあるということに気付くことができる。何より大事なことは地道なことで、長く継続していくことはすごく大事なことである。「ダイバーシティ」というサーチライトのように道を照らしてくれる理念的なものは必要だが、その一方で地に足をつけて地道に一歩一歩進む努力がないと、なかなか地域は変わっていけないものである。

 

【田村氏】ダイバーシティを進めていく上で重要なポイントに 「働き方の多様性」がある。今までのような大学生を正社員で一括採用し、長時間労働の職場に色々な人を当てはめていくことが良い社会である、という考え方では「ダイバーシティ」は進まない。それは地域でも一緒であり、誰もが住みやすいまちづくりのためには、暮らし方そのものを多様にしていかなければいけない。これまでの働き方や暮らし方を「良いもの」として固定化し、そこに多様な人を当てはめていくという考え方を改める必要がある。

 また、今までは社会を良くする責任は役所や企業にあるとして取り組みを求めてきたが、それには限界がある。これからは「担い手の多様性」、つまりマルチステークホルダーで実践していくことが必要である。

 

最初の2つの事例はサーチライトのようにその道を照らしてくれる話で、社会のフレームや考え方の整理を担当してくれた。3つ目の事例はまさに地域での地道な積み上げの話で、両方どちらも必要なことだが、私が20年活動をしてきて思うのは、この両方が地域で出会うことがあまりないことだ。

地元で地道に活動している人と、例えば政策を作っている人との接点が少ない。あるいは企業で働いている人はずっと企業で働いていて、NPOの人は一生NPOで活動している。この3つのセクターが隔絶されていることの不幸が、日本の地域社会にとっての不幸ではないかと思っている。

 私は今も復興庁に籍があるが、政策側との感覚の差はとても大きく、こんなに考え方が違うのかという思いをする。相互に交わらないと解らないことがあるので、行き来することが必要だと思う。役所を辞めてNPOへ転職、または終業後にNPOで働くという人はいるが、地域の活動をしている人がもっと行政に関わるということが増えないといけないのではないかと思っている。

 これから大事なことは、例えばLGBTに関して、自分はセクシャルマイノリティではないが理解は出来るという事と一緒で、ダイバーシティについても、社会全体で多様性を認めていく方向について理解して欲しいと思うし、また、その理解者を増やしていきたいと思っている。

 

【内片氏】私は企業からNPO、そして今は行政にいるが、どうやったらマルチセクターで協働できるのかをずっと考えてきた。例えば氷見市で婚活イベントを支援してきたが、イベントを行うことが成果ではなく、お付き合いや結婚まで発展すればそれが成果であって、氷見市が結果として目指していることは人口の増加であり、それがソーシャルインパクトである。
 企業、NPO、そして行政で働いてきて思うことはそれぞれが描くストーリーが違うから同じ夢が見られないのではないかということである。目的が同じであれば到達する道はいくらでもあるという話しをさせてもらったが、全てのセクターが今やっていることに対して同じソーシャルインパクトを描ければ社会を変えることごでき、地方創生という目的を達成できると思っている

 

 

【ファシリテーター】ダイバーシティとは多様性ということだが、属性で分けてしまうと対立が生まれてしまう。一人ひとりが色々な属性を持っているなかで、どう地方創生に結びつけるかだが、先程の内片氏の話にあった、同じ目標をもつことがすごく大事である。

タスク型思考という考えがあるが、目標を共有して結果を出す為に必要なのがコミュニケーションで、徹底的に話すことが必要になってくる。そして人と話をする為には保守的に引きこもっているのではなく、この様な場に出て、ぶつかるかもしれないけれど色々な人に出会って話すこと、そして結果として目標を共有して、どの様な課題を解決するのかが大事なことであり、今日のテーマの結論の1つである。

 

【田村氏】複数の属性で、複数のコミュニティに参画することが大事なのではないか。日本社会は1つの属性のなかで1年中過ごすことを前提に、またはそれが良いとして、周りにもそれを求めがちである。タスク型の組織が日本では少なすぎると思う。本来ネットワークとはタスクフォース型で集まるべきで、課題があるからその課題に対して集まって何かしようというものだが、集まること自体が目的化してしまっている。私達はひとつの組織に対する帰属意識、それだけに依存する生き方を改めなければいけないのではないかと思う。

今日の3つの事例は私も良く知っている地域だった。先日も別府で2日間、災害時の研修を行ったが、その地域では50年前から障がいのある方が地域で働ける試みを行っている。その様な素地があるからこそ、留学生が地域で受け入れられているということが良く分かった。やはり長く地道に続けることは必要で、それによってダイバーシティも深まっていく。また時間をかけて課題が深まり広がっていくことが、ダイバーシティの面白さでもある。

 以前、ある地域で日本語教室を行う場所を借りにいかなければならなかったが、初めは外国人が利用するということで会館の管理者が嫌がった。交渉の結果、なんとか1ヶ月だけ貸してもらうこととなった。1ヶ月後に再度お願いをしにいったときには、管理者の方の外国人に対する印象がすっかり変わり、快く継続して貸してもらえるようになった。その時に思ったことは、ただ「出会えていない」だけなのではないかということである。それは外国人だけでなく他の属性でも同じ事で、最初は上手くいかなくても続けていく、そして更にもう一歩踏み込むということが大切であると思う。

 

《質疑応答》

村木氏への質問:コリアンの多い地区に更に外国人が集まってきたということだが、何か背景があるのか。そこにはダイバーシティとして良いところはあるのか。


村木氏:土地も安く、下町だということもあるが、第一は住みやすいからである。色々な人が住んでいて、外国人だけでなく障がいのある方も地域に住むようになり、障がいのある方の支援活動も立ち上がってきた。特にその様な人達が家の中に閉じこもることなく、普通に家から外に出て、地域で過ごしていることが大事で、誰もが住みやすい雰囲気を醸し出しているのではないかと思う。

 

関島氏への質問:多様性、ダイバーシティを活かす中で、子どもはどのような立ち位置と考えているか。

 

関島氏:先程も話したが、主役であるべきだと思っている。子ども達がこれからどのように育っていくかだが、ダイバーシティという感覚を学ぶには笹川地区はとても良いところなので、それを活かさない手はないと思っている。

 

太神氏への質問:アジア立命館大学に通う私の子ども達はパキスタン人とのハーフだが、留学生扱いにはならず、大学生活に行き詰っているようである。何か活躍の場があればと思っているが良い手立てはないか。

 

太神氏:大学コンソーシアムおおいたでは、留学生でなくても受けられるサービスがある。先程紹介した「大分留学生ビジネスセンター」は誰でも来て良い場所で、ただ留学生と日本人学生が交流するだけでも可能である。「大分留学生ビジネスセンター」が学生達にとってどの様な場であって欲しいという意見を学生から出してもらう為の学生チームを作っているところであるので、ぜひそこに参加して欲しい。今までも話にあった通り行政が仕組みだけ作るのではなく、当事者の住民や学生からの声で運営していきたいと思っている。

 

田村氏への質問:外国人居住者の支援をする中で、日本社会が非常に強気で、特に外国人や多様性もつ人達に対して壁を作ってしまう日本人が多いと感じる。そのような人達の考え方を変えて、ダイバーシティを実現していくにはどのような地域での取組みが効果的か。


田村氏:出会う場を作るということにつきる。障がいのある方との共生もそうであるし、他のテーマでも同じで、出会えないから偏見が生まれ、排除したり差別することが起きる。大抵、差別的な発言をしている人は出会ってないと思われる。関島氏の話の通り、子どものうちから出会う機会を作っておくということが大事であるし、また、諦めずに続けるということも大事である。

日本人は排他的である、というが自分はそうは思っていない。遅れているのは政策や施策で、制度や法律が整っていない。地域で外国人がどう生活しているかと言えば、近所の人達に助けられていて、彼らは本当にいい地域だと口々に言っている。制度はなくても良い地域づくりができているところはたくさんある。

 

内片氏への質問:ダイバーシティの取り入れ方で、「デモグラフィ型」と「タスク型」があり、「タスク型」の方が良いというのは理解したが、具体的に職場の事例や授業における配慮の事例があれば教えて欲しい。

 

内片氏:「タスク型」というのはその人自身を見て、能力や経験に見合った職務を与えることで結果的に成果が出る。例えば、社員が結婚して配偶者の転勤についていくことになった際に、その当時はなかった在宅勤務の制度を作り、その社員は自分の仕事を続けることができた。その人の能力を活かしたいから仕組みを作る、これこそがダイバーシティである。

ダイバーシティにおいてもう1つ大切なことは「ちがう」ことは当然で、それは素晴らしいことであり、価値があるということの意識付けをすることが成功の鍵だと思っている。

 

グループワーク

「多様性を活かしたまちづくりを考える」

◇ファシリテーター NGOダイバーシティとやま 副代表理事 柴垣 禎 氏

 

グループワークでは各グループにおいて、下記の2点を議論してもらった。

 

◆それぞれの活動において、取り入れたいダイバーシティとは何か?【課題としてのインプット】

◆取り入れた結果、アウトプットとしての波及効果はどんなものであるか?【結果としてのアウトプット】

 

グループワークの時間としては、30分強という短時間ではあったものの、各グループそれぞれ熱心に議論が行われ、全体共有まで行うことができた。LGBTなどの個別のダイバーシティを取り込み、多様な人材を受け入れ、組織を活性化させるとしたグループや、組織の人員を多様化させることにより、多様な課題に対応していくとしたグループなど、今回のセミナーの基調講演からパネルディスカッションの内容を踏まえたものが多く、参加者の一人ひとりにダイバーシティが浸透したという手応えが感じられた。


まとめとして、ファシリテーターから、今回のセミナーを導入とし、ぜひ参加者の一人ひとりがダイバーシティへの取組みを継続し、「地方創生」というアウトプットを創造していって欲しいとの提言がなされた。

多様な登壇者、多様な参加者が融合した熱気に満ちたセミナーとなり、で富山における今後の多文化共生、ダイバーシティ、地方創生への動きに注目していきたい

 

 




 

 

 

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