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「国際協力活動ステップアップ・ワークショップ」開催のご報告

本ワークショップは、日頃接点の少ない自治体・地域国際化協会・国際協力NGOの関係者等が一堂に集い、事例紹介やグループ討議を通じて、相互理解を深め、より効果的な国際協力活動やそのための連携のあり方を模索するもので、毎年度、東京で開催しているものです。今年度は、2009年2月19日と20日の2日間、ホテル・ルポール麹町を会場に開催し、のべ70名のご参加をいただきました。

近年、日本国内において、国際協力に対する一般市民の理解と参加を促す取り組みの重要性が増しており、その一つとして、開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することを通じ、立場の弱い途上国の生産者や労働者の生活改善と自立をめざす「フェアトレード」という取り組みが注目を集めています。これは、誰もが商品購入という形で気軽に参加できる国際協力の新たな形態であり、世界の多様な文化を実感すると同時に、貧富の格差や環境破壊など地球規模のさまざまな問題が起きている現状を知る機会となり、国際協力の必要性や重要性を理解することに繋がります。

そこで、今年度のワークショップは「多文化理解や市民参加を広げる国際協力とは」をテーマに、自治体や地域国際化協会、NGO等が連携してフェアトレードを推進していくための課題や手法について議論するという内容で実施しました。特に、それぞれのアクターが組織形態や理念の違いを乗り越えて、具体的にどのようなフェアトレードに関連した事業を連携・協働して行うことができるのか、参加者自らがアイデアを出し合い、議論を深める場となりました。

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<1日目>

導入ワークショップ「多文化理解や市民参加を促すフェアトレードの必要性を考える」

初めに、参加者が世界の不公正な貿易構造や貧富の格差の現状について理解を深め、フェアトレードの必要性や課題について考えるきっかけとして、かながわ開発教育センター事務局長の木下理仁氏のファシリテートのもと、「貿易ゲーム」が行なわれました。このゲームは、世界の不公正な貿易構造を理解するために、英国のNGOによって作られたもので、開発教育の教材として世界中で使われています。今回のワークショップでは初体験の方が多く、思うように商品が売れないグループや、逆に多額の売上を記録するグループなどがあって、普段はなかなか分からない貿易構造の一端を垣間見る模擬体験となりました。後半には、途上国で貧困に喘ぐ人たちの現状を伝える映像や貧富の格差を表すデータが紹介され、参加者はゲームで体験した内容が世界のさまざまな地域で現実に起きていることを実感したようです。

基調講演「フェアトレードを通じた自治体・NGO等との連携の可能性を探る」

拓殖大学国際学部教授の長坂寿久氏より、世界のフェアトレードの現状や日本でフェアトレードの取り組みが広がっていく可能性や課題に関する基調講演がありました。長坂氏は、フェアトレードを推進することが地球規模の課題や消費者運動等にどのような影響を及ぼすのかを明らかにした上で、急速な広がりを見せる欧州のフェアトレードで主導的な役割を担っているのが自治体であり、自治体が積極的にフェアトレード商品を扱い、地域社会に普及させていくことを宣言する「フェアトレードタウン」が、英国だけでも400都市を超えている現状を紹介されました。さらに、日本でもフェアトレードを普及させていく上で自治体の果たす役割が重要であると指摘し、日本でフェアトレードタウンが生まれるためには、市役所内での取り扱いや常設のフェアトレード推進委員会の設置、議会での決議、フェアトレード推進事業の予算化など、いくつものハードルを乗り越えなければならないことを強調されました。また、今後は日本でも先進国の自治体として、開発途上国の自治体の開発に関わる“自治体の地球的責任”の理念・意識を高めていく必要があると述べられました。

グループ討議(アクティビティ)

フェアトレードについてさらに理解を深めることを目的に、各グループで「フェアトレードの魅力」と「日本でフェアトレードを普及させる上での課題(なぜ普及しないのか)」を考え、その内容を発表するアクティビティが行われました。特に、各グループで出されたフェアトレードの課題としては、信頼性・品質・認知度・イメージ・買う場所(アクセス)・ネットワークがないこと、などが挙がりました。このグループ討議を通して、フェアトレードを様々な視点から捉えられるようになり、フェアトレードの可能性や克服すべき課題について、多くの参加者が認識を共有したものと思われます。


<2日目>

事例発表

(1) 横須賀市のフェアトレードへの取り組み

横須賀市企画調整部国際交流課課長の松本義弘氏から、横須賀市が2008年から取り組んでいるフェアトレード事業について事例発表がありました。2008年1月の「かながわ自治体の国際政策研究会」(テーマはフェアトレード)に松本氏が参加したことが契機となって、横須賀市は年4回主催する国際式典でフェアトレードのコーヒーを扱いはじめ、市の国際交流協会を通じて、フェアトレードコーヒーの販売と普及を支援しています。このほか、市は、市民向けの平和啓発や環境保護のイベントとリンクさせて、フェアトレードを普及・啓発する活動にも力を入れています。松本氏は、自治体がこうした新たな試みを行なっていく際には、@他部課・他組織の理解が得られなくてもできること、A自分の理解の範囲でできること、B予算や人員がなくても年度途中からでもできること、の3つの切り口から実施してみることが重要であると強調されました。

(2) フェアトレード関連イベントを通じた地域国際化協会とNGOの連携

(財)かながわ国際交流財団の菅沼彰宏氏からは、「あーすぷらざ」((財)かながわ国際交流財団が指定管理者)とフェアトレード団体のネパリ・バザーロが共同で実施している「ネパール・デイ」を通じて、地域国際化協会とNGOがどのような形で連携しているのかを事例発表いただきました。「あーすぷらざ」は、子どもの豊かな感性の育成や地球市民意識の醸成、国際活動の支援を目的として1998年に開設され、当初よりネパリ・バザーロの直営店が入居するなど、フェアトレードの普及・啓発に貢献してきました。このほか、「あーすぷらざ」を通じて、県立神奈川総合高校が行うチャリティコンサート事業に、ネパリ・バザーロが募金先の選定やフェアトレードの勉強会に協力するなど、数多くの連携事例が生まれていることも紹介されました。地域国際化協会とNGOの連携のあり方については課題が山積していますが、この成功例は多くの示唆を与えるものとして参加者の関心を集めたようです。

(3) 札幌で動き出すフェアトレードを通じた地球市民教育〜北星フェアトレードの活動」

北星フェアトレードは、札幌市にある北星学園大学の教員と学生で組織するNGOで、毎年60人余りの学生が活動に参加しています。フェアトレードは経済学科の実習の選択科目の一つにもなっており、同団体の活動は、学生が商品の発注、検品、在庫管理、販売企画等を学ぶとともに、貧困や格差など、地球規模の課題の解決に向けて日々の生活の中で考え、身近なところから行動する「地球市民」に育ってほしいという願いが込められています。事例発表いただいた同団体代表の萱野智篤氏(北星学園大学経済学部教授)からは、直接提携しているバングラデシュとインドネシアの生産団体の現状とともに、フェアトレードを消費者運動として拡大・浸透させていくために、札幌市への働きかけや市民団体との連携・ネットワーク作りを推し進めるなど、「フェアトレードのフロンティア」を追及する活動に力を入れていることが紹介されました。

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グループ討議(アクティビティ)

3名の事例発表者が1名ずつ入った3グループに加え、参加者の中で先進的なフェアトレードの取り組みを行っている熊本の関係者を含めたグループ、自治体とNGOの連携に焦点を絞って話し合うグループ、の計5グループによる討議が行われました。議論については、「○○について、どうすれば○○できるか?」という問いを立てて、出てきた意見をまとめて発表するという形式が取られました。各グループのテーマは、「どうすれば地域にフェアトレードが根付くか」、「横須賀市の事例を参考に、どうしたら自治体を活用してフェアトレードを普及させることができるか?」、「どうすれば北星フェアトレードが市民に根付くか」、「地域でフェアトレード商品をどうやって購入するか」、「どうすれば行政とNGO・NPOと協働することができるか」。この中で、自治体の広報紙でフェアトレードを取り上げる、自治体とNGOの協働によるフェアトレードショップやイベント開催、学生によるフェアトレードマップ作り、企業を巻き込んだ商品の開発やPR戦略、など、実現の可能性がありそうなアイデアが次々と出されました。各グループとも真剣な議論が行なわれ、改めてフェアトレードを地域に広めていきたいという熱意や自治体とNGOの連携のあり方に対する関心の高さが感じられました。

参加者からは「横須賀市のフェアトレードへの取り組み方がよく分かり、行政からのアプローチについて参考になった」、「行政や国際交流協会、NGOなど様々な立場の参加者と意見交換できてネットワークが広がった」、「学生をフェアトレードに巻き込んでいくアイデアについて、北星フェアトレードで試験的に実施される見通しとなり、実践的なワークショップとなった」など、今後の活動の参考になったという意見が多数寄せられました。

市民国際プラザとしては、今後もこうしたワークショップを通じて自治体とNGO等の連携や事業の協働運営等に関する必要な情報やノウハウを提供していきたいと考えています。

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