平成27年度地域国際化ステップアップセミナー(北海道地域)開催報告

「地域のブランド力を高める国際協力」

開催日:2015年9月4日(金) 14:00~17:15
会場:札幌市教育文化会館 研修室301
参加者数:49名(自治体、地域国際化協会、NGO/NPO、企業等、関係者

はじめに

今回のセミナーでは、日本国内の「地域のブランド力」を高めた国際協力活動の事例などを参考に、国際協力活動が国内外にもたらす地域活性化や国際化の効果を知る機会を提供することを目的に開催しました。
前半は、国連開発計画(UNDP)駐日代表 近藤哲生氏より「国際社会から日本の自治体が求められていること」について話題提供をいただいたあと、滝川市国際課長 山内康裕氏、株式会社ちば南房総取締役 加藤文男氏、フェアトレードシティくまもと推進委員会代表理事 明石祥子氏より事例発表いただきました。
後半は、一般財団法人北海道国際交流センター事務局長 池田誠氏の進行のもと、「地域のブランドと国際協力をつなげる」をテーマに、グループディスカッションを行いました。

◆話題提供 「国際社会から日本の自治体が求められていること」
 講演者:国連開発計画(UNDP)駐日代表 近藤哲生氏




国連開発計画(UNDP)の2014年度の全世界での活動を紹介する動画上映いただいた後、「私たちが望む未来に向けて-MDGSから(※1)SDGS(※2)へ-」と題して、ミレニアム開発目標(MDGS)8の目標の進捗状況から、それを受けての17の目標が掲げられている持続可能な開発目標(SDGS)の内容についてお話しいただきました。
地方の企業がアジアやアフリカ地域とつながって事業を進めている事例を取り上げながら、期待される成果として、現地住民の所得向上や女性のエンパワーメントなどMDGS、SDGSの目標に掲げられている項目を紹介いただきました。
日本の国民性が持っている勤勉さや防災の知見は、途上国の参考になるものであり、特に日本の地域が持っている素晴らしい技術を、国際協力のために役立てていくことができれば、素晴らしい世界になっていくのではないかというご提案をいただきました。

※1 MDGS...2000年から2015年の開発分野における国際社会共通目標。 2000年9月にニューヨークで開催された国連ミレニアム・サミットで採択された国連ミレニアム宣言を基にまとめられている。
※2 SDGS...MDGSの後継にあたる2016年から2030年の国際社会の共通目標。

事例発表 「助成金と人材研修を上手に活用!国際協力によるTAKIKAWA CITYのブランド強化」
 発表者: 滝川市 国際課 課長 山内康裕氏



滝川市は、人口41,653人、姉妹都市はアメリカ・マサチューセッツ州スプリングフィールド市と結んでいるそうです。菜の花の栽培面積全国一位、アジア一位のグライダー滑空場を持っていて、国際協力の資源として活用されているとのことでした。

国際協力に取り組んだ理由の1つとして、滝川市には日本でも有数の農業研究機関があるのに地域の方は全く知らないという現状であったため、国際協力を使って市民の方に地元のよさを知ってもらいたいという思いがあったそうです。
2011年にはクレアの自治体職員協力交流事業(※3)を活用し、モンゴルから研修員を受け入れて農業技術研修を行い、その後もクレアの助成金であるモデル事業(※4)を活用し、モンゴルに専門家を派遣しています。
国際協力等の事業のインパクトとして、平成12年度と平成25年度を比較すると、外国人の滝川市での滞在日数は約5倍になっているとのこと。そのため、ホテル宿泊に伴う直接的な経済効果も上がっているとのことでした。また、数字に表しきれないことですが、地元の方々が外国の方に対する壁が低くなり、平和貢献への意識が高まったり、研修員に技術を伝えることによる地元の方の自らの技術研鑽へとつながっていたりすることがあげられていました。

※3 自治体職員協力交流事業...クレアが実施している海外の地方自治体等の職員を日本の地方自治体に受け入れる際に、財政面や受入実務面での支援を行う事業。
※4 モデル事業...自治体、地域国際化協会が行う国際協力事業の中でも先駆的な役割を果たし、今後自治体が国際協力事業を行う上で、そのノウハウが参考になり得る事業を「モデル事業」として認定し、経費の助成、広報の支援を行っています。

◆事例発表 「日本ブランド"道の駅"を海外に!農業の6次産業化による地域振興」
 発表者:株式会社ちば南房総 取締役 加藤文男氏




加藤氏は元南房総市役所職員で、道の駅に関わっていたそうです。道の駅はローテクの塊で、開発途上国の所得向上に合うと確信されているとのことでした。

ベトナムの道の駅は売店、会議室にもなるレストラン、ガソリンスタンド、自動車の整備工場が備わっているなど、日本よりも大規模だそうです。日本よりもインフラが整っていないベトナムにとって、道の駅は地域で活用される資源となっているそうで、現地のテレビ番組でも重要な施設として取り上げられたそうです。
事業を開始したところ、対象者がいなくなってしまうというトラブルに見舞われたり、道の駅で販売する野菜を安全安心なものとして認定する過程や販売における課題があったりしたそうです。道の駅以外での野菜販売所を設けたり、地元の伝統工業の販売所を道の駅に設けたりと、地域の資源と道の駅をつなげて課題解決を図っているとのことでした。現在、このプロジェクトは4期目を迎えているとのことです。
ベトナムで事業を実施するにあたって、心のバリアを低くして、現地の人と目線を合わせ、現場に通うことを心がけたそうです。草の根技術協力事業(※5)で協力してくれているJICAの担当者が柔軟に対応してくれたことも幸運だったと話されていました。行政が得たものとして、他国の社会制度の中で言葉もわからない中、事業を計画していくことで、職員はかなり鍛えられたそうです。国際化は、「よその人」と目線を合わせ、地元自治体の職員をタフにする機会だと感じているということでした。

※5草の根技術協力事業...日本のNGO、大学、地方自治体及び公益法人の団体等がこれまでに培ってきた経験や技術を活かして企画した、途上国への協力活動をJICAが支援し、共同で実施する事業。

◆事例発表「国際会議の誘致も成功!日本初!フェアトレードシティくまもと」
発表者:フェアトレードシティくまもと推進委員会 代表理事 明石祥子氏




フェアトレードは、人と地球にやさしい貿易の仕組みのことで、フェアトレードシティとは、フェアトレードを応援する自治体のことです。24カ国に1,700のフェアトレードタウンがあります。6つの基準を満たすことが必要で、2011年熊本市はアジア初、世界で1,000番目のフェアトレードシティとして認定されています。  

活動のはじまりは、自宅でフェアトレード製品を扱ったお店を始めたことだったそうです。そこから通算100回を越えるフェアトレードの洋服を活用したファッションショーをしたり、議員を巻き込んで自治体への理解促進を図ったりと活動されていたそうです。
それらの活動がみのり、2011年に熊本市がフェアトレードタウンとして認定されました。しかし、認定後もフェアトレードの認知度は低かったそうです。それを課題と思い、熊本市でフェアトレードタウン国際会議を開催することにしたそうです。地道な取り組みの結果、スポンサーがつき1,000万円近くの資金が集まり、世界中から300人以上が参加され、メディアにも大きく取り上げられました。国際会議開催後、フェアトレード産品を取り上げる店舗が市内に増え、フェアトレードシティになること宣言した海外都市との交流にも繋がっていったそうです。フェアトレードの認知度も開催前の32%から39.8%へと上がったとのことでした。
今後は市内にフェアトレードストリートを作ること、欧米諸国では一般的となっているフェアトレード産品の公共調達を熊本市にも求めていきたいとのことでした。

◆まとめ・提案
講演者:国連開発計画(UNDP)駐日代表 近藤哲生氏

3つの事例に共通していることは、サスティナビリティ(持続可能性)ではないかと思うと話されていました。今後開発の質が問われていく中で、目覚ましい経済成長を遂げた日本の地域産業、地域の力に鍵があるのではないか。皆さんが住んでいる地域からクレアやJICAのツールを使って世界に何を発信していけるのか、が問いかけられたセミナーになったのではないか、とお話いただきました。


◆グループディスカッション テーマ:地域のブランドと国際協力をつなげる
ファシリテーター:一般財団法人北海道国際交流センター事務局長 池田誠氏





グループごとに、参加者が住んでいる地域のブランドを活用した国際協力事業が話し合われ、「きゅっきゅ雪」や「アスパラ羊」など北海道地域ならではのアイデアが出て、会場全体が盛り上がりました。

◆おわりに

今回は、グローバルな話からローカルな話まで、様々な立場の方にお話いただくことができ、国際協力に対する視野を広げ、地域と国際協力のつながりを知る機会になったのではないかと感じました。 市民国際プラザは、今後も地域の国際化に関する活動が推進されることを目的に、参加者の出会いの場や先進事例を紹介する場として、セミナーを開催していきます。  ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。